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元冒険者クリューの穏やかな一日  作者: 神山 りお


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19/22

18 恐れを知らない子供って、最強では?

こどもの日。

という事で、ミクリさんをどうぞ。(・∀・)





 朝食を終えたクリュー達は、依頼書の貼ってあるボードを見る事にした。

 王都にある冒険者なので依頼自体は豊富だが、高ランクや高額の依頼はほとんどなかった。

 王都だけあってランクの高い冒険者が多く、報酬の高い依頼からすぐになくなるからである。たまにあったとしても、特殊な依頼が多かった。

 例えば、幽霊捕獲みたいな案件だ。

 ランクがいくら高くても、出来ない事もあるからだった。



「パパ」

「うん?」

「パパ、しごと?」

「うん」

「なら、ミクリひまだから、ちょっとワイバーンたおしてこようか?」




 ーーぶふっ!




 依頼ボードに集まっていた冒険者達が、驚愕のあまりに咽せていた。

 幼い子供が、暇を持て余して魔物を倒しに行こうとしている。それも高ランクの魔物をである。

「「……」」

 買い物でも行く感覚でサラッと言ったミクリに、クリューとポールは顔が引き攣っていた。

 暇を持て余して倒せる相手ではないし、チョットで済む魔物でもない。

 どういう感覚なのだろうか? 色んな意味で怖い。

「魔物の怖さを知らないガキって怖いよなぁ」

「言えてる」

 ミクリの怖さを知らない冒険者が嘲笑していた。

 確かに、側から聞いているだけなら、子供の戯言だ。だが、この子はただの子供ではない。

 ギルドに通う冒険者達は、ミクリがただの子じゃないと知っているので、誰も賛同はしなかった。

 むしろ、彼女を怒らせる方が怖い。



「マモノがこわいの?」

 そんな事で怒らないミクリは、その冒険者に訊いた。

 恐ろしい事に、ミクリはまだ魔物を怖いと感じた事がないのである。

「はぁ? 俺達は別に怖くねぇよ。なぁ?」

「あぁ、ただ魔物も大して知らねぇクセに、ワイバーンを倒すなんて簡単に言うからよ」

「怖さを知らないガキは怖いなって話」

 とミクリを嘲笑う若い冒険者達。

 簡単にワイバーンを倒して来るなんて言うものだから、イラッとしたのだろう。

「え? ミクリだってコワイものしってるよ?」

「へぇ、何だよ?」

 冒険者達は馬鹿にした様子で笑った。

 子供が考える怖いモノなど、たかが知れていると。

 だが、ミクリの次の言葉で押し黙る事になる。




「ニンゲン」





「「「……」」」

「マモノもヒトもキズつけるニンゲンが、ママはいちばんコワイんだっていってた」

「「「……」」」

「だから、ヒトをへいきでキズをつけるおとなには、なっちゃダメだよって」

「「「……」」」

 ミクリを嘲笑っていた冒険者達も、この言葉にグッと詰まった。

 小さな子供に言われると、言葉の重みが全然違う。自分達は子供の戯言に、何故本気で苛ついてしまったのか。笑って流すのが人として、大人の対応ではなかったのかと反省していた。

 だが、クリューは苦笑いしか出ない。

「ちなみに、ミクリのお母さんは何をしに?」

 なんか、もの凄く高尚な事をミクリに教えているけど、母ミリーナは娘ミクリに何をしに行くと言って消えたんだっけ?

 クリューは思わず訊いてしまった。

「ナニかをころしに」

 教育に絶対、齟齬があるよね? ミリーナ。




「あ、パパ」

 ポールと話をしていれば、依頼ボードをジッと見ていたミクリが声を上げた。

「どした?」

「これ、カラーコブラ?」

「え、あぁ。カラーコブラの捕獲のお願いだってさ」




【カラーコブラ捕獲のお願い】


 10匹以上から、買い取り受付け。

 基本色問わず1匹につき、銅貨5枚。

 ただし稀少な金、銀などであれば銀貨1枚。


[依頼人]

 フイヴィトン店主






 蛇の皮で鞄や靴でも造るのだろう。主に革製品を扱うメーカーからの依頼のようだ。

 元から色が付いているのと、付けるのでは発色が違う。

 カラーコブラの鱗は多色だし、ラメっぽいキラキラとしている個体もいるから重宝するのだろう。

「コレ?」

「ミクリ? 危ないから出さないの」

 軽く説明すれば、以前捕獲して来たカラーコブラを、空間魔法から取り出して見せてきた。

 なんで、猛毒の蛇を素手で触れるかな?

 ミクリの小さな手の平で、数匹が団子になって畝っている。



「ヘクチッ!」

「「え??」」

 ミクリが小さくクシャミをした……と同時に手を離した。

 手を離すから、ミクリの手にのっていたカラーコブラが、ポトリと床に落ちた。

 床に蛇が落ちれば、蛇は有象無象に動き回る訳でーー。




「んぎゃーー!!」

 途端にポールが大絶叫しながら爆速し、冒険者ギルドの受け付けカウンターの上に乗っていた。

 ちなみにクリューは咄嗟にミクリを抱きかかえ、近くの窓枠に飛び乗ったけど。

 他の冒険者達は何が起きたのかと一瞬唖然とし、次に慌てた様子で逃げ回る姿があった。

「カラーコブラ!?」

「なんで、ガキがカラーコブラなんてもん持ってんだよ!?」

「ミクリ先輩をバカにするから、天罰なんじゃん?」

「どういう天罰なんだよ!? イイからテメェちょっと俺達も乗せろや!!」

「満員御礼で〜す」

「ふざけんーーぎゃあぁぁ〜!!」

 先にカウンターに乗っていたポールが、ミクリを揶揄った後続共を蹴落としていた。

 確かにカウンターは他の従業員や冒険者で満杯だけど、少し詰めればいいと思う。ポールも中々エゲツない。




「クリュー!! ギルドに蛇を撒き散らしてんじゃねぇぞ!?」

 あまりの騒ぎに様子を見に来たギルドマスターが、シャーシャーと威嚇の声を上げるカラーコブラに気付き、真っ先に叫んだ。

 撒き散らしたのはミクリであって、クリューではないのだが、とんだとばっちりである。

「すみませんねぇ」

「すみませんで済めば、警ら隊なんて必要ねぇんだよ!! 毎回毎回コレはどうするつもりだ」

「ミクリさんに訊いて」

 何故なら、出すのはミクリであってクリューではない。

 なんなら、片付けるのもいつもミクリである。だが、ミクリは蛇にはもう興味がないのか、話をまったく聞いてはいなかった。

「あ〜! アンナだ」

 窓の外を見ていたミクリは、窓越しに見えたアンナに手を振っていた。



「ミクリ。アンナはイイから、カラーコブラを片付けてくれるかな?」

 いくら鍛えているからとはいえ、いつまでも窓枠にしがみ付いている訳にはいかない。

 それに、現状を知らない冒険者が、いつ入って来て咬まれるかも分からない。

「メンドくさい」

「面倒くさいじゃないんだよ。遊んだ玩具は片付ける約束だろう?」

 蛇が玩具と言うには、かなり無理があるけど……ミクリには玩具だろう。

 散らかしたら片付けるのが、クリューとミクリの約束事であった。

「しかたがない。【こうちょく】!」

 ミクリの十八番ともいえる硬直魔法で、皆が固まった。

 窓枠にしがみ付いた状態で固まったクリューは、いつ落ちるか不安でしかない。実に不安定で何かの衝撃で落下しそうである。




「か、身体が動かねぇ!?」

「マジかよ。何、この魔法」

 ミクリを馬鹿にしていた冒険者達は、ミクリの魔法を初めて体験したらしく、驚愕していた。

 可愛らしい声がしたと思ったら、身体が全く動かないのだ。声からしてミクリだと判断したが、あの幼い子がこんな高度な魔法の使い手なんて微塵も思わなかった。

 自分達は、ものスゴいチートな娘に喧嘩を売っていたのだと、今更ながらに頬がヒリついた。こんな状態で何かされたら、無抵抗で命を落とすハメになる所だった。

 なんとか、口先と目が動かせるだけ救いである。



「アカとキイロはどっちがすき?」

「あ゛?」

「アカとキイロはどっちがすき?」

 人と同じく、硬直魔法が効いて動けなくなったカラーコブラを拾い集めていたミクリが、誰かに話しかけていた。

 先程、揶揄われた事はまったく気にならないのか、ミクリは揶揄われた冒険者達にそんな事を訊いていたのだ。

「「「……」」」

 冒険者達は、ミクリの手にしているカラーコブラを見て、嫌な汗を掻きつつ絶句していた。

 まさに、右手に赤と左手に黄色のカラーコブラを持っているのだ。

 どちらが好きとは一体何を示していて、どちらかを好きと答えたらどうなるのか想像も出来ない。




「どっちがすき?」

 答えがないので、ミクリはもう一度冒険者に訊いた。

 答えるべきか、答えざるべきか。冒険者達は悩んだ。

「き、黄色?」

「俺は赤?」

 答えなかったリスクを考え、答える事を選んだ冒険者達はおずおずと答えれば、ミクリは満足したのか満面の笑みを浮かべた。

「んじゃ。アカをあげる。そっちのひとにはキイロ」

 そう言って、色を答えた冒険者のポケットに、硬直で動かないカラーコブラをんしょんしょと詰め込み始めたのである。

「ギャーッ!! ストップストーーップ!!」

「毒蛇を詰め込まないでくれーー!!」

「ちょっ、さっきの事なら謝るから、蛇出してーーっ!!」

 先程の仕返しだと勘違いした冒険者達は、絶叫していた。

 ミクリはそんな姑息な仕返しはしない。ヤるなら即時決行だろう。だから、カラーコブラは純粋にあげたいだけな気がする。




「お、俺は赤も黄色も好きじゃ、ない!!」

 免れていた冒険者は、再び拾い上げたカラーコブラに慌て、ミクリに叫ぶように言った。

 好きな方を選ぶと、もれなくポケットに詰め込まれるのだ。ならば、その手にない色を答えるのが正解ではなかろうか。

「なにいろがすき?」

「え? えっと」

 そんな返しがあるとは思わず、冒険者は思わず詰まる。

 だが、答えない方が怖い気がした冒険者は、目線を下に落とし見れる範囲内でカラーコブラを見た。

 赤と黄色は勿論ダメ。青や緑も床に落ちている。この多色ならば、範囲内に見えないが、紫もありそうだ。白と黒は絶対いる気がする。

「き、金色?」

 これならどうだ……と冒険者は短い時間の中、答えを出した。

 ないなら、諦めるだろうと。

 だが、ミクリはその返答に瞳をキラキラとさせていた。

「キレイがよくわかっている。キンイロは1ばんキレイ。1ピキしかいないけど、トクベツにあげる」

「え??」

 ミクリは空間魔法から、ウネウネ動いている金色のカラーコブラを取り出すと、金色と答えたその冒険者のポケットに頭からグリグリと突っ込んでいた。

「いぎゃーーっ!? うご、動いてるしーー!?」

 空間魔法から出した金色のカラーコブラは、硬直魔法の時に外にいなかったので元気に蠢いていた。

 なので、咬む事もある。咬まれたら一貫の終わりである。

「違う違ーーう!! ごめんなさい、嘘吐きました。蛇は嫌いです。金色も嘘ですーーっ!! 嘘だからぁぁぁっ!!」

 冒険者は、書いて字の如くまさに男泣きである。

 動けない状態で、毒蛇がポケットに入れられれば、屈強だろうが何だろうが生き地獄だ。

 それを見ていたクリューは、ご愁傷様と苦笑いしていた。




 恐れを知らないミクリは、最強で最恐の子供だ。







今日もお読み頂きありがとうございました。

 (⌒▽⌒)シ

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