僕と京子の出会い
僕は京子に、深く惚れた。
一見大人しそうで、純白で、素朴な仮面に身を包んだ京子。たまに見せる愛らしさと、知的に満ちたその瞳に僕は碇を下ろした。ずっと君の傍で君に惚れ惚れとしていたい、化粧なんてしなくていい、君は君のままでいいと思ってた。
京子は結構偏差値の高い大学へ通っていた。
僕はそんな彼女とは10も離れた会社員だ。商社勤めなんて今じゃ大したことないけど、そこそこ給料はもらってるんで、女性に関して困ったことはなかった。しかし、そんな僕を京子は器用に落とした。
出会いはお昼休憩に喫茶店へ行った時のことだ。
厨房からいらっしゃいませと言いながら女性が出てきた。昭和風の白いワンピースにエプロンをかけて僕の前へとやってきた。美人じゃないけどなんだかその古風な姿に目をひかれた。
思わずしどろもどろになりそうだったが、彼女の前で醜態を晒しては行けないと思い冷静を装う。
「コーヒーとサンドイッチ」そう言うと、
「かしこまりました」といい、メモを片手に厨房へ戻った。
ネームプレートに書かれた京子という名前を、僕は心の中で何度も唱えた。
何歳も離れた子にこんなにときめきを覚えるなんて。
僕はそれからその喫茶店へ通うようになった。
「京子ちゃんはいつが休みなの?」
コーヒーとサンドイッチを頂きながら京子に尋ねた。
「来週の月曜日は祝日ですし一日暇です。お店も定休日ですから。」
僕はそれを聞いた瞬間、出すか出さないかの瀬戸際の勇気を振り絞った。
「じゃあさ、今度息抜きでもしない? 僕車持ってるから行きたいとこあれば連れて行けるし、それともなんか予定はいってる?」
京子は少し黙り込んだ。どうしよう失敗したかな。
「ごめん、おっさんと出掛けるのなんて嫌だよね」
そう言うと、
「いえ、そんなことは無いです。ただ、折角の休みなのに私なんかのおもりをさせてしまうのが申し訳なくて。私は可愛くもないですし魅力もないので気を使って貰ってるのかなって」
僕は京子の謙虚な心に胸を打たれた。
「そんなことは気にしなくていんだよ。京子ちゃんの事は可愛い妹だと思ってるんだから。それに京子ちゃんはとても魅力的だよ。バイトもいつも頑張ってるし、応援したいんだ。」
すると、申し訳なさそうな顔をしながら
「じゃあ、よろしくお願いします。」とゆっくりと丁寧に言ってきた。
僕はその返事に天にも登る気持ちを貰った。
京子は持っていたペンとメモで電話番号を書いて僕にわたしてくれた。
「では、10時に駅前で」京子ははにかみながら、
厨房へ戻った。
これで京子とデートができる。
でもその喜びも束の間だった。