私は魔法使い
「祝福の魔法をかけてあげる」
私は魔法使い。呪文を唱えると魔法をかけることができるの!すごいでしょう?
本当は魔法使いはいっぱいいるんだけど、みんな自分が魔法を使えることを忘れちゃってるみたい。それでも魔法使いには変わりないから、知らないうちに祝福や呪いをかけたりかけられたりしてる。
今私は、私の大好きなこの子に祝福の魔法をかけてるところなの。でもこの子は祝福の魔法にかかりにくい子みたい。困ったな。でも根気よく何度も呪文を唱えるの。だって私、この子のことが大好きなんだもの!それはもう聞いたって?いいの!何度だって言うんだから!
「瞳の色が素敵」
「指が細くて長くてきれい」
「くるくるの髪がかわいい」
「良く響く声をずっと聞いていたい」
「努力しているところ、かっこいい」
「何かに夢中になって輝く目がすき」
「ご飯をおいしそうに食べるのがすき」
「悲しい映画をみて泣いちゃう綺麗な心がすき」
「笑った顔がすき」
「すき」
「すき」
「私はあなたのことがだーーーいすき!」
今日、この子はシクシク泣きながら帰ってきた。誰かがこの子に呪いをかけたみたい。ひどい。許せない。私の大事なかわいいこの子に呪いをかけるなんて。早く呪いを解いて、祝福の魔法をかけてあげなくちゃ。
「泣かないで?どうしたの?」
「言われたの、髪のこと。」
「なんていわれたの?」
「ボサボサの髪がきたないって。」
「うん。」
「でも私言ったの。」
「なんていったの?」
「この髪はくるくるでかわいいんだって。」
そう言ってにっこり笑った。
よかった!祝福の魔法は成功したみたい!私は嬉しくなって、「そうだよ、あなたの髪は可愛いんだよ。」「ちゃんと話せてえらかったね。」「笑った顔がとってもかわいいよ。」って、祝福の呪文をたくさん唱える。
いつか、私とあなたがはなればなれになっても、この祝福が、恐ろしい呪いからあなたを守ってくれますように。
「あなたも魔法、使えるんだよ」