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お嬢様 罠を仕掛ける 2

「ねぇねぇ。今度、新しいカフェが出来たからみんなで行かない?」


学園でいつものように、オーガスタ、クローム、アルト、ヒューデガルドが談話室で休憩をしていた。

談話室は共同スペースや個人の部屋などがあるが、オーガスタ達はいつも共同スペースを利用している。


「すまぬが俺は鍛練があるので無理だ。それに、そのよう場所には、ちょっと・・・。」

「クロームには聞いてないよ!絶対断るし!アルトとオーガスタは?」

「女の子がいれば行くよ。ヤローばかりってねぇ、殿下。」

「僕もこれから用があって・・・。」

「えー。じゃあ、またポールと行くのぉ・・・。」


ヒューデガルドは口を尖らせて「ブーブー」とオーガスタに向けて言った。


「うーん・・・やっぱいいや。ポールと行ってもつまんないし。ポール、予約キャンセルしてきてよ。今すぐね。」

「はい、ヒューデガルド様。」


ヒューデガルドの後ろについていたポールが、直ぐ様この場から離れていった。


「あーあ。なんか刺激があるものってないかなぁ。最近つまんなくて・・・。」


ヒューデガルドはそういいながら、テーブルに肘をつき、退屈そうな顔をしながら中央に置いてあった、お菓子をバリバリと食べ初める。


「たまにはブライトも鍛練したらどうだ?この前、注意されただろ。」

「僕はこのままでいいよ。いざとなったらポールに守ってもらうし」


クロームの言う注意とは、以前訓練の為で学園の敷地内にある森林で、走り込みをしている最中にヒューデガルドが消えてしまい、みんなで探したことがあった。

学園内にある森林は野生の獣など危険な動物はいないが、森が深いので新しく入った生徒達が見失うことが多々あるのだ。

あの時もヒューデガルドがいなくなったことで、みんなが慌てだし森林に入って探したのだが、長い時間探しても見つからず一旦戻って増員をしようと学園に戻った時に本人を見つけた。

しかも、当の本人は庭のテラスで他の令嬢達と一緒にお菓子を食べながら、おしゃべりをしていたらしい。

聞いたところによると、訓練が辛いという理由で走り込みをしている最中こっそりと抜け出し、そのまま見つかるまで楽しくお茶をしていた。

それを聞いた指導役の先生は激怒し、ヒューデガルドに反省文を書かせたと言うのだ。


「そういえば話変わるけど、オーガスタ達って今度、騎士団と一緒に討伐しに行くんだよね。」

「討伐と言っても、獣だけどな。」

「いいなぁ~。僕も行きたいよ。無理かな?ねぇオーガスタ。」

「危険だから厳しいと思うよ。」

「むー。どうしてだよー?」

(どうしてって・・・)


ヒューデガルドの言葉にオーガスタは正直どう言えばいいか迷った。

はっきりと「足手まといになる」言ってしまえばいいのだが、友人を傷つけるような言葉にを使いたくはない。

でも遠回しに伝えようとすると、最後には押しきられそうになる。


(どうしたらいいのか・・・。)

「どうして僕だけ行けないのさ。たまには外に行きたいよー。だってピクニックみたいで楽しそうだしさー。」

「ブライト、いい加減にしろ。」


クロームがそうヒューデガルドに言うと、静か立ち上り彼を睨み付けた。


「な・・・なんだよ。クローム・・・。」


これは怒っている。

オーガスタはそう感じた。

その証拠にヒューデガルドはクロームに言い返そうとするのだが、言葉が出てこないみたいだ。


「遊びではないのだ。その様な考えのやつがいても足手まといになるだけだ。」

「クローム、それは・・・。」


ガタッーーー


「ヒューデガルド??」


突然、立ち上がったヒューデガルドに、オーガスタは不安になった。

ヒューデガルドは顔を下に向けていてどのような顔になっているか分からない。

もしかしたら、怒ってクロームに言い返すかもしれない。

そうしたら2人を止めることが出来るのだろうか。


「あの・・・」

「あーあ、やーめた。やっぱ行かないよ。辛そうだし、じゃあねー。」


オーガスタがヒューデガルドに声をかけようとしたら、本人はさっきまでも態度がなかったかのように、颯爽とこの場を離れた。

クロームもヒューデガルドが談話室から退室をしたのを見届けると、ゆっくりと椅子に座り直す。


「殿下、良かったね。ヒューデガルドがあっさりと諦めてくれて」

「そうだね・・・。」


アルトはそう言うが、オーガスタは少し胸騒ぎを感じていた。

もっとヒューデガルドと話をすればよかったのではないか。

でもそれは気のせいだろうと思い、気にしないことにした。


その判断が後にこんなことを引き起こすことになるなんて、誰も思わなかった。


******


(くそっ・・くそっ・・くそっ・・)


ヒューデガルドは談話室から出た後、どこへ向かうのか目的のないまま歩き続けていた。


『遊びではないのだ。その様な考えのやつがいても足手まといになるだけだ。』


(あーもー!ムカつく!!)


談話室でクロームが言ったことに対して、苛立ちを感じた。

たかが獣を倒すだけじゃないか。

剣の腕とか関係ないし誰が行ったってどうせ同じだろ?

本当はそう言ってやろうかと思ったのに、言えなかった。

それにクロームの言葉に対してオーガスタやアルトも否定してくれない。

こんなこと今までなかったのに。


(僕が行った方が絶対、楽に出来ると思うのになんでたよ!)


「ヒューデガルド君、どうしたの?」

「はっ?誰、君?」


下を向いていたからスカートした見えなかったけど、見上げると派手ではない女生徒だった。


「あのね・・・」

「僕、忙しいんだけど。」


急に話かけられたけど、ヒューデガルドは冷たくあしらった。

正直言うと、まだイラついていて他の生徒と話たくはない。

しかもこの生徒なんて、おどおどしているしハッキリ言って、むしゃくしゃする。

もし、告白されようが何処かへお誘いでも断ってやろう。

そう思っていたのに、この女生徒は違った。


「いい案があって・・・ヒューデガルド君しか出来ないと思うんだけどね。」


目の前の女生徒=マリアから案を聞いた時、今まで苛立ちを感じていた気持ちがすっかりとなくなった。

もしかしたら、オーガスタから『凄い』って言ってもらえるかもしれない。

もしかしたら、アルトから『見直した』と言われるかもしれない。

もしかしたら、クロームから『今まですまなかった』と言うかもしれない。


「うん、やろう。」


(みんなをギャフンと言わせてやる)

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