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イジメ×イジメ  作者: クールホーク
9/11

番外編

押見蛾雷視点です。

(注)少し下ネタあり。


おばあちゃんもおじいちゃんも病気で死んだ。

ずっと一緒に仲良く遊んでたから、

二人が死んだ時は大泣きした。


けど知らなかった。


その後にお母さんもお父さんも、

お姉ちゃんさえも死ぬなんて、思ってなかったから。


**


「大変! お父さんが肺炎だって!

それもかなり進んでたんだって!

死ぬ確率80%! 」


お母さんが騒々しく騒ぐ。

肺炎? 80%?

何言ってんだ?


お姉ちゃんも涙目になってる。

え? どうしたの? どうしちゃったの?


あまり涙を流さないお父さんですら、

顔を下に向けて泣いてる。


そんなにやばいことが起こってるの?

三歳の私にはわからないよ……。


蛾雷は三人の顔をそれぞれ数秒間見つめる。

一番泣いてるのはお姉ちゃんだ。

その次にお母さん、ちょっと泣いてるのがお父さん。


「大丈夫? どうしたの? 」

お姉ちゃんに聞く。

お姉ちゃんは、無理やり作り笑顔を私に見せて、

「おじいちゃんがね、死んじゃいそうなの」

と、言った。


おじいちゃんが……?

死んじゃう……?


いくら三歳といえど、『死ぬ』

という言葉ぐらいは知っている。


そういうことか、みんなが泣いていた理由は。

途端に視界が歪んでくる。

床にポタ、ポタと涙が落ちる。


一番泣いてたのは、私だった。

お姉ちゃんたちは静かに涙だけ流して泣いてたのに、私は声まで出してた。


けど、その『肺炎』ってやつは、

どんなに泣き叫んでも治るものではない。


治療の技術があまり進歩していなかった当時は、肺炎ですらかなり危ないものだった。


ガン? ガンなんて、かかったらほぼ確実に死ぬものだったよ。



結果、おじいちゃんは死んだわけだけど、お葬式中にも私は泣いてしまった。


睨んでくる大人もいれば、

しょうがないよね、と、何も言わない人もいた。


二、三週間はあまり落ち着かなかった。けど、私が泣くとお姉ちゃんも泣いちゃうから、泣くのは我慢。



そして同じように、日も経たないうちにおばあちゃんまで……。


二度目だったから、前よりは泣かなかったけれど、それでも泣いた。


**


お母さんが、死んだ。

その時は、『泣く』というよりも、

叫んだ。


家が燃えていくのを、只々見つめることしかできなかった。

あの時なんで、火を消さなかったのだろう。なんで、六歳にもなってそんな初歩的なことがわからなかったのだろう。


なんか、最近は人がたくさん死ぬ。

私に関係してる人が死んでいく。

何かが危険だ。


次は……お父さん?


そんな予感は的中。

お父さんも、『私のせいで』死んだ。


私は合計で三人殺した。

それも、捕まるような殺し方じゃなくて、自然な感じで。


自分ですら相手を殺してしまうということに気づかず、最低な感じで。


お母さんと、お腹の中の赤ちゃんは、

私が火をつけっぱなしにしたせいで。

お父さんは、私の『お花見に行きたい』という願望を無理やり通そうとしたせいで。


私にはお姉ちゃんしかいない。

お姉ちゃんしか、私を守ってくれる人は。


**


な……んで?

なんでお姉ちゃん……まで?


も……う。い……や……!

死にたい。死にたい!


「ねぇ、あなた、大丈夫?

お先真っ暗、絶望的な顔をしてるけど」


突然話しかけてきた女の人。

その時、その人がいい人だなんて思わなければ、不自由な暮らしはしてなかったのかな……?


「ほら! 働きなさいよ!

誰があんたを飼ってやってると思ってんのよ! 」

バチンッ!


思い切り叩かれる。

こんなこと、もう慣れてるけど。

このクソババア、最低だ。


まだ幼い子供を働かせて、

自分の金は自分で払えって、学校の授業料も払ってくれなくて……。


こんなの、このクソババアがいない方がマシだよ……。

最低。最悪。家庭訪問の時はいい親演じて、だいたいこんなの親でもなんでもない、クソババアだよ。


こいつが親気取って、でも実は最低で、好きなだけ酒飲んで好きなだけギャンブルして。


そのお金は全部私が払う。

どうやってかって?


アルバイト。

すごいでしょう? こんな歳なのに。

私、どうしても雇ってくれる人が見つからなくて、まぁ、当たり前と言っちゃ当たり前だけど。


ポケットにカッター忍ばせて、

「雇ってくれないなら死にます」

って言ってそんなことを繰り返して、

今では掛け持ち7つ。


頑張って働いて、一日ごとに金もらって、その金の五分の四はあいつの酒だのギャンブルだのに使われる。


私のお金はたったの一万円。

まぁ、こんだけ持ってれば九歳の小学生として見れば半端ない金だけど。


その一万のうちのほとんどは学校に行く。

それが嫌だから、三日に一回の割合で学校に行って、そうすれば授業料の三分の一だけ払えばいいでしょって先生に行って、空いた二日間はアルバイト。


もうこの生活に慣れたから結構楽。


で、中学生になってから、すごいいいお金の稼ぎ方を見つけたの。


体を売るのよ。


私って身長高いじゃん?

大人っぽいじゃん?

だから、高校生として通せるわけ。


んで、もう何回も体売ってきた。


で、唯一私のこの秘密を知ってるのは

桃箭とうや(黒髮)、晴魅はるみ(赤髪)、美涼みすず(金髪)。(第三話参照)


あ、ちなみにみーちゃん(美涼)は

イケメン男顔の女の子ね。


この三人は、私が街でナンパ待ちしてたらナンパしてきたやつらなの。


そんでそいつらとっ捕まえて、

愚痴聞いてもらって、仲良くなった。


だから中学生になってからは家には滅多に帰らない。というか、あんなところ家でもなんでもないけどね。


みーちゃんと桃箭&ハル(晴魅)は、

家が隣同士だから、私はみーちゃん家に泊まって、桃箭達と話したりする。


で、最近お金が貯まってきて、全財産が2500万円ぐらいになったから、

そろそろ一人暮らしするかーってことで引っ越したら香奈霧の家の隣だったってわけ。


ま、ラッキーって感じ。

香奈霧はなんか私のことをやたら心配してるけど、マジで私あんなカスいイジメに比べれば、あいつに殴られたりした方がよっぽど辛かったし。


ま、大丈夫。


で、ニューヨーク旅行ではなんだかんだあったけど、楽しいかな。普通に。


イジメの程度もそんなでもないし。


けど、あれはヤバかった。

精神的にも、怒り度的にも。


エレベーターに閉じ込められた時、死ぬかと思った。

あのー、誰だっけ? 私をイジメてる主犯的な人。あの女、ケバい女。


ま、そいつの仕業だってことはすぐわかったけど、冷静になれなかった。

香奈霧は驚くぐらい冷静だったけど。


で、香奈霧がおかしくなって、

私は何かのスイッチが入って、で、

ケバい女を殺しそうな勢いになったところを、香奈霧に抱きしめられたら

なんかそんな勢いは無くなった。


なんかすごい。

香奈霧、すごい。


私は香奈霧とずっと一緒にいたい。


そんな願いは、あと少しで打ち砕かれることを、二人はまだ知らない。

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