第三話
あらすじです!
『聖神 姫奈』(めんどくさいから読み仮名付けません! )にイジメられている、
私、『香奈霧 カレン』の友達(仮)の『押見 蛾雷』さん。
やっとまともな話をしてくれたと思ったら、押見さんは親が死んでしまったという話を
始めてきました。(不覚にも涙しました)
しかしその後、聖神に脅されて、押見さんの秘密をばらしてしまいました!
押見さんが、来週のニューヨーク修学旅行で何かをされるらしい……。
もう私、生きてる価値とか、無いのかなぁ。
「もう私、自殺するしか……」
深刻な顔をしながら、少し泣きそうな表情を浮かべる。
どうしよう。
ゆっくりとタンスの中からカッターを取り出す。
コレで首を切れば、死◯かなぁ。なんか、痛そうだなぁ。
そんなことを考えながらそっとカッターを首に当てる。
かるく赤色の液体が垂れてくる。
ピンポーン……
ベルが鳴った。
急いでカッターをしまい、玄関のドアを開けに行く。
そういえば、隣の家にだれかが引っ越してくるんだっけ?
「はーい? 」
そう言いながらドアを開けた途端に、目を丸くした。
「はぁ。あなたとはつくづく縁があるようね」
「押見さん! 」
目の前には、髪の色を茶髪に染めた押見さんが立っていた。
なんで茶髪? つけまつげまでつけてる。
どうしたの?
「あ……の……。なんで……その……学校と雰囲気が……違う……んですか? 」
思わず敬語になってしまう。
押見さんは、自分の髪を見ながら、「あ〜。バイト」
と、ポツリと言った。
バイト? なんのバイトしてるの?
そんなことを、ちょっとした好奇心で聞いてみた。
「新聞配達からキャバクラまでやってるけど、今日はバイトってのはウソ。
あいつらと遊んでたの」
そう言いながら、押見さんは男の人たちに指をさした。
イケメン三人組だ。黒髪、赤髪、金髪の三人だ。
こんなかっこいい三人をオトした押見さんって一体……。
「で? 」
で? でって……なに?
カレンは不思議そうな表情を浮かべる。
「はぁ。わからないの?
『私のことを思って、自殺までしてくれなくてもいいから』ね」
「へ?」
思わず漫画とかで出てくるような声が出てしまう。
自分のしたこと、やったことを必死に思い出す。
なんで学校と雰囲気が違うのかって聞いただけだよね。
けどなんで自殺をしようとしたってわかったの?
「な、なんでわかったの!? 」
あまりにも不思議でならない。
もしや……押見さん、バイトやりすぎて、透視の能力を得たとか?
人の心が読めるとか? す、すごすぎるよぉ〜!
「やっぱりね。だって首から血が出てんだもん」
返ってきた答えは、あまりにも順当で、簡単なものだった。
「違うよ! コレはダンスの練習をしてたら、手が首に、こう、
ゴフッて当たっただけだよ! 」
あまりにも無理な言い訳をしながら、カレンはダンスのような、
謎の動きをしながらやって見せた。
「はぁ。あんたってほんとバカ?
今さっき、『な、なんでわかったの!? 』とかって言ってたじゃん」
カレンはハッとした表情を見せ、手で顔を隠した。
押見さんは、軽い手土産のようなものを置いて行って、自分の家に帰って行った。
連れの男の人たちも、軽く頭をペコっと下げて、押見さんの元へ行った。
このほんの数秒で、いろんなことが起きたような気がする。
突然、カレンはハッとした。
や、やばい! カレンさんに、ニューヨークで何かが起きるってこと、
伝えないと!
そしてカレンは、再びハッとした。
でも、聖神達が、『もしイジメるってことを先にターゲット(押見さん)に
伝えたら……どうなるかわかってるわよね』って言ってたなぁ。
でも、どうなるかなんて、私の知ったこっちゃない!
もう後悔なんて、したくない!
そうカレンは心の中で決意し、外に足を踏み出した瞬間、
蛾雷が家の壁に寄りかかっていることに気づいた。
「押見さん! 」
押見さんは、私に軽くニコッと笑いかけてくれた。
「なんか隠してんなら言えば? 」
押見さんはなんでもお見通しなんだ。
もう後戻りはできない。する気ないけど。
あげていた顔をゆっくり下に向け、うつむいてしまう。
「あ、あの……。ニュ、ニューヨークで……、
押見さんが……、イジメられちゃう……かも……」
押見さんは、相変わらず表情一つも変えないで無言で私のことを見つめる。
コ、コレは……相当キレてる?
半分泣き目で押見さんの機嫌を伺うように
私は言う。
押見さんは急に驚いた顔をする。
「で? 話はもう終わり!? 」
ふぇ? 終わりに決まってるじゃん……?
「そんなくだんないことにわざわざ深刻にならないで」
く、くだならない!?
イジメだよ!?場合によっては人を自殺まで追い込む、怖いものだよ!?
押見さんは、ものすごく呆れたような顔をした。
「あのね、私はもう、そんなのにいちいち構うほど、
いま心に余裕がないんだよね。バイトとかで」
へぇ……。
もう大物になると、イジメすら『そんなもの』になるんだぁ。
すごいなぁ。
押見さんは、話はそれだけなら……と言い、
自分の家に戻っていった。
すごい、心の底から安心した。
なんか……。押見さんみたいな人と仲良く(? )なれてよかった。
ものすごく時間が早く過ぎた気がする。
もう修学旅行か……。
外国に行くのなんて初めて。
一番遠くに行ったのは、京都観光に行った時ぐらいだよ。
うちの学校は、修学旅行は、制服が嫌な人は、先生に言えば私服でいいというルールになっている。
私は私服なんて、どういうのにすればいいかわかんなかったから、
結局制服になっている。
聖神とかは、とびっきりおしゃれなんかしてる。
イジメられていた苗葉さんのことなんか、もうすっかり忘れているようだ。
すっごい最低!
ふと押見さんを見る。押見さんも制服だ。
少しスカートの丈が長い。
いや、かなり長い。
スカートの丈は、とびっきり短いのから、押見さんみたいに、
長いのまである。
この学校の制服は、
スカートの丈を長くすると、スカート代が安くなるのだ。
ダサいので、特別安くなるとからしい。
だから、お金のない人はスカートの丈が長い。
ちなみに私も少し長めだ。
聖神は、ジャンプをしたら、パンツが見えてしまうぐらい短い。
気持ち悪い。
そんなに露出すんのが好きなら、全裸で学校くれば?
なんてことも思っている。
押見さんはあまり修学旅行は乗り気ではない。
緊急の用事があったり、どうしても休みざるを得ない場合は不参加でもいいのだが、
基本みんな強制参加だ。
だから絶対にこういうのに参加しなさそうな押見さんも参加している。
「うわぁ! みんな私服、かっわいぃ!
香奈霧さんも、制服がなんか、光ってる!
やっぱり美人って、私服で飾らなくても可愛いのねぇ! 」
これがお世辞っていうのはわかってる。
けど嬉しく思っちゃう私もどこかにいる。
「それに比べて押見さん。
スカートなっがぁい! いくらお金ないからって、
今日ぐらいは短いスカートでくればいいのにぃ」
始まった。
集団イジメ……?
最低! 最悪! 人間のクズ!
押見さん、なんか言ったれ!
「人のこと言ってないで、自分のことを気にすれば?
化粧濃すぎ。つけま取れてる。慣れない口紅で、口が口裂け女レベルよ」
うわぁ。めっちゃ毒舌!
なんかスカッとする!
聖神達は、何も言えなくなっている。
引きつった顔をしている。
確かによく見ると、化け物だ。
他の人たちもそうだ。
「う、うっさいわねぇ! 嫉妬したからって、変なこと言わないでよ! 」
うわあ。見苦しい。ダサい。可哀想な人だなぁ。
押見さんは相変わらず表情一つ変えないで、哀れ目で聖神を見つめている。
押見さんのイジメを交えた、最悪の修学旅行。
三泊四日の地獄タイムに、私は絶えないといけないのか。
真顔の押見さん。
修学旅行を心から楽しもうとする聖神。
そして、深刻な顔する私。
この三人は、このイジメ修学旅行が、とても長く、そして、とても短く感じられるのだろう。
〜おまけ〜
そういえば、苗葉さん。
聖神達の権力でもみ消されたらしいけど、
苗葉さんの死の後、どのようになったのかを説明します。
①苗葉さん、自殺。
②苗葉さんの母親、学校に怒りをぶつける。
③学校側、聖神に『苗葉さんにお金をあげて黙らせて』と頼む。
④苗葉さんの母親、逆上!
⑤聖神財閥、苗葉さんのお父さんの会社を潰そうとする。
⑥苗葉さんの母親、諦める。
⑦苗葉さんの件は、何事もなかったかのように消される。
最低だよね!
結局人間は金なんだ……。