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イジメ×イジメ  作者: クールホーク
1/11

第一話

最悪だ。人生初の中学校生活初日一日目で熱を出すなんて。

絶対出遅れた。


今日は清々しいほどに晴れてるのに、

何で熱なんか……。


少なくとも、クラスの子の名前と顔を、セットで覚えないと。


香奈霧かなきり カレン』は、クラスの名簿を見た。

新しい顔に新しい名前をたくさん目にしたカレンは、どうしようもなく学校が楽しみになった。


「うわぁ。この人、美人だなぁ」

思わず口に出してしまう。そのぐらい美人な女の子が、一番最初に目にはいった。

「『押見おしみ 蛾雷がらい』さんか……。

名前までキラキラだなぁ」


その人は、どことなくクールな雰囲気を漂わせている。

なんか、カッコいい!


**


よし! 体調も良くなったし、天気も良い!

最高だ!


私は昨日、心をリセットするために、髪をバッサリ切った。


真新しい制服の匂いを嗅ぐと、なんか気持ちがシャキッとする。

もう小学生の頃とは違うんだ。


少しでも遅れを取り戻すために、挨拶は元気良くするんだ!


**


「お、おはようございます! 」

いえた。周りの反応は……?


一瞬シンとなる。そして、数秒経つと、周りのいろんな子が、

「おはよう」と言ってくれた。

すごくホッとする。


良いクラスでよかった!


あれ?


カレンは、不思議に思った。

真ん中の列の、後ろから二番目の席。そこの席が、ポッカリと無いのだ。

机も、椅子も。あまりにも不自然すぎる。


「あそこの席……。どこにいったの? 」

後ろの席の子に聞いた。


後ろの席の子は、一瞬固まる。しかし、数秒後に、何事もなかったかのように、

「ん? もともとあの席に人なんていないよ?

このクラスが四十人クラスってことぐらい、知ってるでしょ? 」


四十人……? おかしいなぁ。クラス名簿で見たときは、

四十一人だったはずなんだけど……。

さては、この子、自分を数えてないな?


前の子にも聞く。

その子も一瞬、時間が止まったかのように固まる。

しかし、何事もなかったかのようにニッコリと笑い、

「昨日からあそこの席の子はいなくなったけど? 」

と言った。


背筋に冷や汗が垂れ落ちる。

ふ、二日で転校したのかなぁ? き、きっとそうだよね。


周りを見渡す。いないのは……。


苗葉さん。『苗葉なえば 汰一たいち』さんだ。

名前は少し男の子っぽいけど、れっきとした女の子だ。


少し不安になった。

隣の男子に聞いてみる。


「苗葉さんは? 苗葉さんはどこ!? 」

その男子は、当たり前のことをいうような顔をして、こう言った。


「あいつなら、この世に存在しないものとしてるんだけど笑」


目を丸くした。驚きすぎて。怖すぎて。

このクラスは異常だ。何かが……ヤバい!


このクラスでイジメが起きてる。

そんな事はすぐわかった。

こんな事は、漫画の世界とかでしか起きないと思ってた。

こんなところで三年間も、過ごせる気がしない。

頭がおかしくなりそう。


「出席を取ります」

カレンは口と手と足と……、全身をガクガクとさせている。


リーダー格の人は誰? せめてそんな人だけでもわかれば、

その子に害を与えないということができるから。

カレンはキョロキョロと周りを見渡す。


「……さん。香奈霧 カレンさん? 返事をしてください。カレンさん? 」

ハッとする。

みんなの視線が一気に私に注目する。

怖い。怖すぎるよ。


「は、はいぃ……」

周りから、どっと笑い声が聞こえる。


みんなが口々に、「は、はいぃ……」と言う。

私の真似をする。


嫌! 怖い! 消えたい!


「はいはい。静かに」

先生が言ったのかと思った。

いや、普通なら先生が言うのだ。しかし、声は幼い。

誰? 私を……助けてくれた?


「みんなのターゲットゎ〜、この子じゃなくってぇ、

汰一君……あ、汰一ちゃんでしょぉ〜笑

ごめぇん。男の子みたいな名前だからぁ、間違えて君をつけちゃったぁ笑笑」


みんなが笑う。大して面白い事は言ってないのに。


こいつがリーダーか。

そう確信できた。

こいつの名前を思い出す。


聖神ひじりかみ 姫奈ひめな』。

赤茶の髪が、いつもクルクルしてる。

パーマでもかけてんのかなぁ。

そんで、美人だ。私の三倍ぐらい。


けど、押見さんには劣る。

押見さんは本当に美人なんだから。

聖神さんと押見さんは美人。


けど、同じ美人でも性格があれじゃ、月とスッポンだ。


「苗葉さん」

先生が、健康観察のカードのようなものを見ながら、

苗葉さんの名前を言う。え? 先生は気付いてないの……?

「あ、苗葉さんはもうこの世に存在しないんでした〜笑」


は? この教師まで異常だ。

こんなクラス、見たことも聞いたこともない。

怖い。クラス全員から、先生にも頼れない状況でイジメなんて、

怖すぎるよ!


やっと普通の授業が始まる。

授業は普通だ。一限目は数学だ。男の教師が来る。


みんなは何事もなかったかのように学習に取り組む。

先生が廊下に出た。何の用だろうと思ったら、先生は黒板に、

『自習』と書いた。


まさか!?


みんなが自習をしている中、私はジッとドアの方を見つめる。

ガラリとドアの開く音がする。

机と椅子を大事そうに持った苗葉さんが入ってくる。


やっぱり。


あの男教師も気付いている。このクラスのイジメのことに。


わからない人もいると思うから、説明をする。


『自習』。廊下に出る先生。苗葉さん。。。


先生は廊下に出て、苗葉さんがくることに気付く。

自習と書くことによって、生徒は皆自分で学習することになる。


そして今、先生が教室を出る。

生徒たちは、今、この場で、自由となったのだ。


集団イジメの始まりだ。


苗葉さんが入ってくるなり、聖神さんが立ち上がる。

他の生徒も立ち上がる。

苗葉さんのところへ歩いていく。


苗葉さんの顔がみるみる青くなっていく。


ガタンッ!


大きな音がする。見ると、苗葉さんのものと思われる机が凹んでいる。

蹴られたりしたのだろうか。


怖い。怖すぎる。


あれ? 一人、立っていない人がいる。

その人は窓越しで外の景色を見ている。

顔が見えない。

その人をジッと見てみる。


その人と目があった。


その人を見るなり、目を大きく見開いてしまう。

押見さんだ。


私が慌てて目を逸らそうとする。

しかしそれはそれでどうなの……?



〜脳内プチ会議〜


香奈霧 カレン①が会議長だ。


「議題は、『押見さんと目をそらすか、そらさないか』ですわよ! 」

①は、周りを見渡す。

すると、②が手を挙げた。


「はーい! 目をそらさないほうがいいと思いま〜す。

目をそらしたら、感じが悪いからでーす! 」

元気よく②は発言をする。


すると、③が手を挙げた。


「私もその意見に賛成です。

第一印象が感じの悪い人なんて、最低だからです」


真面目な顔をして、③が言う。

①が腕を組む。


そして、大きな声で言った。


「判定を下しますわ!

『目をそらさずに見る! 』ですわよ」



ジッと押見さんを見つめる。

すると押見さんは、軽くニコッと笑い、再び外に目を向けた。


うわぁ。美人な人って、みんな性格最低だと思ってたけど、

押見さんは、性格もいいし、美人なんだなぁ。

すごいや。


それよりも苗葉さん! なんであんな目に……?


遊び疲れたなぁという顔をして、みんなが一斉いっせいに戻ってきた。


隣の男子に、なんで苗葉さんがいじめられているのかを聞いてみる。

すると男子は、少し深刻な顔をしてこう言った。


「リーダー格の女、姫の好きな人、『マライ・流星りゅうせい』と

たくさん話してたんよ。苗葉は」


マライ・流星……。


お父さんが社長で、ハーフなんだ。

お父さんが韓国の人、お母さんがアメリカ。

産まれは日本。


そんで、かなりのキラキラネーム。

顔はイケメンで、優しい。


女子に結構人気なんだ。


けどあんまりマライ君の話を聞かないなぁと思っていたけど……。

そういうことか。


可哀想。


でも最低だ。

あの聖神野郎は。


ていうか、なんで姫……なの?

あ、名前が姫奈だからか。


キモいなぁ。


**


休み時間。

押見さんと仲良くなろう。

イジメとか興味ないしみたいな人だったからね。


「お、押見さん! 」

思い切って話してみる。

外の景色を眺めていた押見さんは、

どことなく悲しそうな顔をしてこっちに振り向く。


そして、私を見るなり、

「私に話しかけないほうがいいよ」

と言い、少しフッと笑って再び窓の方に顔を向けた。


どうしたんだろう。

なんか無視されたみたいで、なんとなく悲しい。


その途端、私の元に、聖神率いる女子たち十数人が集まってきた。

ゾッとした。普段人から注目して見られるってことがなかったから、

一段とゾッとした感覚がきた。


「ねえ」

話しかけられただけで、とても怖くなる。

あんな光景を見せつけられてから話しかけられるなんて、

もう怖すぎる。


「あのさ……。悪いことは言わないわぁ!

押見さんとは話さないほうがいいわよぉ」

へ? 押見さんとは話さないほうが……いい?


なんで? あんなにいい人なのに。


「なんか押見さんってね。やばい薬やってたり、

危ない人と絡んでたりするらしいよ。

だからうちらと仲良くなろ? 」

聖神の奴隷のような女がそういう。


もちろんこんなクソウザい奴らと仲良くなんてしたくない。

けど、刺激したらイジメのターゲットにされるに決まってる。

怖いけど、うんと言わざるをえない。


私はコクリと頷く。

押見さんをちらりと見る。


相変わらず押見さんは外を見ている。

横顔も美しいな。


聖神みたいに、メイクとかはしてないし、髪の色も地毛のままだし、

全然アブナイ人と絡んでなんかいなさそう。


「だってさぁ、あぁんな”ドブス”と絡んでたら、

絶対に香奈霧さんの可愛い顔がブスになっちゃうわよぉ〜」


押見さんがブスゥ!?

眼中崩壊してんじゃないの!? あんたのほうがよほどブスで性格クズだと

思うんですけど!


「ね? 香奈霧さんも、押見さん、どブスだと思うでしょぉ? 」

ここでいいえと言いたいけど、そんなこと言ったら絶対にターゲットにされちゃうよね。

ごめん! 押見さん!


「う、うん。そう……だね」

タジタジになってしまう。

けど、聖神は機嫌をよくしたらしい。


本当にこんなところで過ごせないよ。三年間も。


そういえば、苗葉さんは……?

一人で寂しく教科書をめくりながら、泣いている。


教科書をじっと見つめる。

そこには落書きと思えるものが見えた。

目を凝らして見てみる。


『死ね』『うざい』『どブス』『メス豚』


うわ! ひどい。ひどすぎるよぉ……!


いつかあの子、自殺しちゃうよ。


その私の読みは見事に的中した。

その子は三日後、自殺した。


なんかすごい怖かった。


「あーあ。自殺しちゃっだよぉ〜! なんでよぉお!

残念。『いじめられ役の子』が居なくなっちゃったぁ」


聖神の取り巻きの人たちの顔が青くなる。

というか、このクラス全員の顔が青くなる。


「つまんないなぁ。でもまぁ、最近ちょうど飽きてきてたところだしぃ、

もっと手応えある人に変えたいなぁ」

みんなの顔が真っ青になる。

もちろん私も。


聖神が周りを見渡す。


「男子ってのも面白そうよねぇ」

途端に男子の顔色がぐっと青に近づく。

いまにも死にそうな顔をしている人もいる。


「でもやっぱ、女子よねぇ」

男子の顔色が、普段の肌色に戻る。


その代わり、男子の顔色が、伝染病のように女子に移る。

女子の顔が真っ青だ。しかし、押見さんだけ、相変わらずボーッと

外を眺めている。


「よし! 決めたわぁ! 」


女子の顔が一斉に、一段と青くなる。

「押見さん。あなたに決定よ」


女子も男子も、みんな騒ぐ。

イエーイだの、ヒューヒューだの。


押見さんは相変わらず顔色を変えない。

鋭い目つきで、騒いでる人を睨みつけるだけだ。


一気にシーンとなる。

そして、重々しい雰囲気の中、授業が始まった。


「はい。この問題を……押見さん、答えてください」

さっきから集中的に押見さんが指されている。

その度に押見さんは、きちんと答えている。


先生も、少しイラつきながらも、負けじとたくさん指す。


「はぁ。−−−−−−−−−−−−ですね? 合ってますよね」

押見さんは、呆れながらもきちんと答えている。

すごい。


押見さんは、三日に一回の割合でしか学校に来ない。

なのに、さっきから全問正解だ。

しかも先生が問題を出した瞬間に答えている。


だから、考える暇なんてない……はずなのに……。


「な、なんなのよ! ムカつくわね! 」

先生もついにキレた。

周りの生徒たちも、ワーキャーワーキャー言っている。


突然押見さんは、ガタンと立ち上がる。


「先生、そんなに怒鳴ってると、顔にシワができて、余計ババくさくなるよ?

みんなも……。嫉妬しちゃって私に怒鳴るぐらいなら、

こうやって怒鳴ってる間にも勉強してれば? 香奈霧みたいに」


みんなは何も言わなくなった。

いや、何も言えなくなった。


一気に視線が私に注目する。

再び恐怖を覚える。

(なによ。ムカつくわねぇ)(香奈霧……なんなのよ)


お、押見さん!


こんなのに毎日耐えるなんて……。


怖すぎる。。。

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