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私、異世界へ会いに行きます!  作者: 飛狼
第一章 異世界へと誘われ
5/19

◇そして、私はステータスを確かめる。

 最初の岩室に戻ると、さっそくメニューと唱えてみる。

 さっきチューさんが、訳の分からないことを色々と言っていたからだ。

 すると驚いた事に、目の前に半透明のウィンドウが展開された。

 本当に不思議。

 ここは異世界というより、ゲームが現実化した世界。

 ゲーム好きの人ならたまらないのだろうけど、あいにくと私はゲーム初心者。

 今も胸がどきどきと激しく動悸するのも、興奮よりも恐怖のため。

 そもそも私が、ここでこうしているのも全て……。


 ――あの馬鹿!


 勇吾のまぬけ顔を思い浮かべぶつぶつ文句を言いつつ、浮かび上がるウィンドウを確かめる。 


ステータス

名前  :ユウコ・キムラ

年齢  :16

種族  :ヒューマン

level  :2

職業  :従魔師Lv1(SUB 弓師Lv1)

※※  :※※

※※  :※※

(以下、略)


固有スキル

【※※】


スキル(SP 20)

【※※】

【※※】

【※※】


〈チュートリアルモード継続中〉

達成クエスト

1「魔獣を倒してみよう」(難易度F)


未達成クエスト

2「地図を作成してみよう」(難易度F)

3「魔法を使ってみよう」(難易度F)

4「従魔に指示を出してみよう」(難易度F)

5「スキルポイントを使ってみよう」(難易度F)


 あれっ、見えない部分があるけど……てか、普通にステータス表示があるのに驚かされる。

 それに、クエストって、


 ――まんまゲームの中かよ!


 て、感じなんだけど。

 このクエストは、どうやらチュートリアルモードを選んだので発生したようだった。

 ここは、全く不可解な世界。ゲームみたいな仮想空間のようであり、でも、現実と同じく五感もある。それに何より、さっきから強烈な空腹感を覚えていた。



 この場所、あの『炎帝グリューエン』と名乗る魔物が現れた祭壇のあるこの部屋も不思議な場所だ。

 部屋から私が出たいと願うと、壁に縦の亀裂が走り、まるでゴムみたいにムニュンと左右に分かれ簡単に出入りすることが出来る。

 どうやら、今まで誰も出入りした痕跡が無いことからも、私以外は出入りが出来ないように思えた。外には、さっき出会った魔物みたいなのが沢山いるようなので、安全地帯ともいえるこの部屋の存在は非常にありがたい。ここなら魔物に襲われる事も無いだろうと、私もホッと、ひと安心できた。


 それにしても、あまりにも非現実的な馬鹿げた話よね。

 でも、どのような仕組みか分からないこの部屋も、ステータスやレベル等もだけど、もう深く考えるのは止めようと思う。これ以上考えても、頭が混乱するだけだし。だから、ここはそういう世界なのだと、納得する事にした。

 そうなると、当面の問題は……。


 ――さて、何か食べるものがあったかしら。


 そう、食べ物の問題だ。さっきからしきりに、お腹がクゥクゥと音を鳴らしている。

 ここには、私以外は誰もいないのだけれど、そこはやっぱり私も十代の乙女。恥ずかしくなって、ちょっと赤くなる。

 さっそく、リュックの中に何か無いかと探してみる事にする。

 さっき拾った白く輝く糸――何をするものかさっぱり分からないけど、

 その糸をリュックの中に放り込み、ごそごそとあさってみた。


 リュックの中には鍋やロープなどといった、ちょっとしたサバイバル道具と共に、干し肉やよく分からない物を練り固めた食物が入っている。それと、革を鞣して作られた袋。この中には、一リットルほどの水が入ってる事から水筒なのだと思えた。


 私がリュックの中に手を入れごそごそやってると、胸元から顔を出したキキが興味深そうに眺めてる。そのキキが、食べ物を見つめて「キュッ!」と嬉しそうな鳴き声をあげた。


「なに? キキもお腹がすいた?」


 私を見上げたキキが、その円らな瞳を向けてコクコクと頷いている。


「さっきは、キキも頑張ったからね。はい、これ」


 何かを練って固めた物は、コンビニで売られているおにぎりほどの大きさ。それを半分に割り、片方をキキにあげることにする。

 そして、残りを自分の口に入れるが……。


「げげっ、しょっぱぁぁい! 水、みず!」


 慌てて、革の袋に入ってる水を飲む。

 なにこれ、塩辛すぎてとても食べれたものでない。これは保存するために、塩漬けにでもしてたのかしら。

 涙目でそんな事を考えつつキキに目を向けると、カリカリと音を鳴らして美味しそうに食べている。


 うぅん、小動物とは味覚が違うのかしら。ちょっと、羨ましい。


 それではと、干し肉の方に手を伸ばす。こちらは、可もなく不可もなくといった感じの味。普通のビーフジャーキーに似てるけど、ただひとつ難点が。

 とにかく、固い。噛みちぎるのにも、ひと苦労。

 現代人は昔の人に比べてあごの力が弱まってるとか聞くけど、私は正にその典型。固い食べ物が苦手だったりする。


 ――うぅ、顎が疲れるぅ……。


 私が干し肉と悪戦苦闘していると、食べ終わったキキが、物欲しそうにまた見上げてくる。


「ん? まだ欲しいの?」


 コクコクと頷くキキ。


「あんまり食べると、太るよ」


 私は苦笑を浮かべながらも、ジャーキーの欠片をキキにあげる。そして、キキにも水を飲ませてあげようと、水筒から鍋に水を注ごうとしてある事に気付く。

 注いでも注いでも、水が尽きることが無いのだ。


「ほえぇ、凄いね。この水筒」


 もう色々と驚き過ぎて、今更だけどね。もう、これぐらいではあまり驚かなくなっていた。

 しかし、魔法の水筒かあ……これで水に困ることはないわね。人が生きていくのに、水分は一番大事だから。


 ――あっ、もしかして!


 私は大急ぎでリュックの中を確かめる。


「あぁ、駄目かぁ……」


 もしかしたら、食料も尽きることなくリュックの中に現れるかもと思ったけど、どうやら食べ物は今あるだけのようだ。


 となると、早急に食べ物をどうにかしないと。

 ざっと見たところ、干し肉や練った食物は切り詰めても、もって三日ぐらいかなと思える。


 その三日の間に、周りを探索して食べ物を探すか、或いはこの世界にいる住人に出会うかしないと。

 あの炎の精霊さんと話した感じだと、この世界にも人がいるみたいな感じだった。

 となると、さっさとこのダンジョンから脱出するしかない。


 ――ふぅ……やっぱり、魔物と戦わないといけないみたいね。


 いや、分かってはいるけど。それでも、私は普通の女子高生。自分が望んでここに来たとはいえ、いきなり怪物と戦うのに怖じ気づくのは仕方ないよね。


 私は「ふぅ」と、ため息を吐き出し、水をごくごくと飲んでいるキキの背中をそっと撫でる。

 すると、キキが気持ち良さそうに目を細めていた。


「キキ、ありがとう」


「キュウ?」


 キキは首を傾げて、不思議そうに私を見上げる。


「キキがいて助かったわ。私ひとりだと、不安で押し潰されてた所だったから」


 私がそう言うと、キキは嬉しそうに鳴き声をあげて、私の肩の上まで腕を伝って駆け登って来る。そして、私の頬に甘えるように体を擦り付けてきた。


 ――うん、キキは可愛いねぇ。


 指先をキキに伸ばすと、キキがその指先にじゃれ付いてくる。出会ってまだ数時間だけど、本当に癒やされる。

 そのまま指先でキキを遊ばせながら、目の前にまた、ステータスが表示されたウィンドウを浮かびあがらせた。やはり、ステータスの大半が読み取る事が出来ない。

 これは、レベルを上げると、見えるようになるのだろうか?


 どちらにせよ、魔物と戦ってレベルを上げなければいけないということね。まあ、レベルを上げる事によって自分が強化されていくなら、ある意味簡単。分かりやすいといえば、分かりやすい。

 でもそれは、この世界での死についても考えさせられる。元の世界には私の体が残されてるはず。


 それなら、この世界で死んでも大丈夫なのかしら?

 それとも、ここでの死は実際の死となり、元の世界にある体も、その生を終えてしまうのだろうか?


 だからといって、これは確かめる事も出来ない難しい問題だ。ここでの死が実際の死なら、確かめた時点で、私の人生が終わってしまうのだから。

 そんな事を考えながら、ウィンドウに並んでいる項目を目で追っていく。


 ――クエストねぇ。


 このクエストも、よく分からない。

 あの蜘蛛の怪物を倒した時に、スキルポイントなるものが貰えた。この事から、与えられた課題を達成すると、スキルポイントが加算されるのだと思われた。


 クエストの一番目、「魔獣を倒してみよう」を達成したので、スキルポイントが10増えて、今は20のポイントがある。


 そして、まだ達成していないクエストが、あと4つも発生していた。その未達成のクエストに目を向ける。

 2番目の「地図を作成してみよう」は、よく分からない。

 ウィンドウの枠外、ここには本来、日付、時刻、ログアウトや機能、ヘルプ等といった文字が並び、操作が出来るようになっていた。けど、今はデジタル表示の時刻と、マップの文字があるだけ。

 このマップが地図作成に関係してるのだと思うのだけど、今は暗転して使えないようだ。クエストにあるという事は、どうにかしたら使えるようになるはず。でも、それが今は分からないので、どうしようもない


 3番目の「魔法を使ってみよう」は、私が魔法を修得していないのでって、魔法がある事に驚きだ。ここは、ゲームと似た世界なので、普通に魔法があるのだろうと思うけど、私も魔法が使えるようになるのだろうか。

 これも、今はよく分からないな。


 4番目の「従魔に指示を出してみよう」は、たぶん、キキに命令を出して何かをさせれば良いのだと思う。

 これは後で、キキに試してみよう。


 そして、5番目の「スキルポイントを使ってみよう」が問題だ。

 スキルポイントって、なに?

 せっかく増えたスキルポイントの使い道が、私にはよく分かっていなかったのだ。

 スキルって事は、能力や技能って事なのかしら。


 私が「スキル、スキル」と呟いていると、ウィンドウの表示が突然切り替わる。

 そして……。


《現在、修得可能のスキルの一覧です。この中からお選びください》


 チューさんの抑揚の無い声が、頭の中に響く。

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