居候どもが!!
とりあえず練習あるのみですので駄文ですがよろしくおねがいします
ドラゴン、魔法、精霊、妖怪、幽霊、転生、異世界、神様、魔王、勇者 etc. ……
全て物語の中の存在で、いないからこそ物語として色々な作品が生まれてきたんだと思う。
少なくとも現代ではそうであるし、空想だからこそ自由に楽しめるだろう。
科学が発達して天気や超常現象、色々なことが解き明かされていきわからないことが段々と少なくなっていく中、存在しないものをどう創作しようが自由だろう。
そんな空想の物は存在しない物だし、証明しようとするようなことは鼻で笑われる行為だろう。
それがあたりまえなのだから。
……少なくとも俺以外には。
「あっちぃ……」
思わず出た言葉とともに目が覚める。
いつの間にかカーテンが開いており、そこから強い日差しが直接当たっていた。
起きて時間を確認すると午前の十一時過ぎ。
平日であれば今は学校で午前最後の授業を受けている最中であろうが今日は土曜、休日でしかも高校は夏休みの最中だ。
寝汗で張り付くシャツを脱ぎ捨てて、汗を流す為にシャワーを浴びる。
……思い出せないがイヤな夢でも見ていたことと、茹だるような暑さで寝起きが災厄だ。
冷たい水を身体の熱を冷ますように、……イラつきで血が上った頭を冷やす為に目一杯浴びる。
(あ゛あ゛……イライラする)
風呂場から上がり、髪を乾かす為に洗面台に立つ。
そこには猛禽類のような鋭い目つきと、寝不足でついた濃い隈、右目の下や頬についた傷跡のせいでどう見てもヤのつく人かその道のプロのような顔の人間が映る。
……当然映ったのは自分の顔なのだが。
百八十近い身長と筋肉質な身体、オールバックにまとめた髪型も相まってどう見ても高校一年生には見えない。
職務質問、補導待ったなしである。
というかよく間違われたりして連れて行かれるので最早顔なじみである……。
「…………っ!!」
『………………てっ!!!?』
(……またか)
サッパリしたばかりだというのに部屋から大きな声で言い争いが聞こえ、頭痛がしたような気がして額に手を当てる。
いつもの事とわかっているが、目が覚めたとはいえ徹夜明けにこの音量では頭に響いてしょうがない。
同じように徹夜をしていた母さんは当然寝たままなので心配は無いのだが少し恨めしく感じない事も無い。
近づくにつれて頭に響く声が大きくなっていくが、止めない事にはどうしようもないのでさっさと部屋まで向かう。
「……」
勢いよくドアを開けて部屋を見ると案の定二人?が言い争いをしていた。
「あ、翔矢さん起きてらしたんですね。おはようございます!」
『ぬ?下僕ではないか!起きたのなら挨拶とはよう、飯を作って持って参れ!』
そこにいたのはまさに白と黒と呼べる二人?の子供がいた。
片方は真っ白な髪に白い肌、所々に金や青色で縫われた刺繍がある物の殆ど白い服を着た少女?だ。
軽く微笑むようにして頭を下げる様から、キチンと礼儀を感じさせる。
もう片方は黒髪黒目と日本人によく似た特徴だが、高い鼻や彫りの深い顔立ちからは日本人ではない事が伺える。
服もどこか古代の民族衣装を感じさせるような黒い服装で、偉そうな態度と勝ち気なその目からは軽い覇気と力を感じさせる。
「……あぁ、おはよう。で?何言い争ってたんだテメェらは」
これだけ見た目が綺麗な二人を見たなら、すぐさま自分の格好を正したりして平伏しそうなものだが自分はそんな気が起きそうもない。
「それはこの者がッ!!」『そんなものコヤツのッ!!』
同じタイミングで相手の事を指差しながら言うため、またこちらの事を忘れて睨み合いを始める。
……お互いのもう片方の手でテレビのリモコンを握りしめながら。
「私はこれから見たいにゅーすというのがあるのです!アナタのはいつでも出来るでしょう!?」
『何を言う!このてれびげーむに必要な時間がわからぬか?まだまだ終わっておらぬ物もあるのだぞ!お主のは役にも立たぬ無駄な知識集めではないか!!』
また目の前で言い争いを始める二人。
手や足が出たり取っ組み合いのようにはならないので危険は無いし、見た目がかわいらしい二人なので微笑ましく感じるかも知れない。
……ほかの人が見えればだが。
少なくとも徹夜明けの自分にとってはただ煩わしいだけだし、イライラが募っていくばかりである。
「翔矢さん!聞いていますかっ……!?」『下僕!黙っておらんでコヤツを……ッ!?』
二人がこちらを向きながら意見を求めようとするがどんどん声が小さくなっていき、仕舞いには二人とも口をパクパクさせるだけでそれとともに顔色がどんどん悪くなっていく。
「うんうんそれで?ここまで五月蝿く騒いでた理由はなんでかな、かな?」
笑顔で声が優しくなるように気をつけながら問いかける。
「……あ、ぅ」
『げっ、げげ下僕……?』
まったく、ちゃんと優しく笑顔で聞いているだけなのに顔を青くして震えるなんて酷い奴らだ。
「なんだい?」
怖がらせてしまっているようなのでもっと笑顔を深めて問いかける。
「『そ、……その』」
「その?」
「『すっ、すみませんでした!』」
「ゆるさねぇ、ギルティだ」
その言葉とともに固く握りしめていた拳をそれぞれに振り下ろす。
「ぎゃんっ!!!?」
『はぐぉあ!!!?』
悲鳴は上がるが拳骨の音は聞こえず、ポンッと音を立てて二人の姿が掻き消える。
そして二人のいたところには西洋の剣の柄のような物と、真っ黒で丸い以外何もわからない何かが浮かんでいる。
「痛いです翔矢さん!壊れてしまったらどうするんですかぁ!?」
「うるさいわぁあ!こっちは徹夜明けでまだねみぃのに騒がしくすんじゃねぇぞ!!」
いち早く復帰して反論してきたのは白い方の少女……、もとい聖剣だ。
厳密に言えば柄だけというのは初代が剣を使った名残なのだが、持ち主に合わせてその姿を変えるため殆ど関係ないのだ。
その上見えるのも限られた物だけで、その時代の勇者やその子供達にしか見る事が出来ないらしい。
『このぉ、下僕っ!主に手を挙げるとは何事か!!そんな物はそこの駄剣だけでよかろう!』
「……あ゛?(ピキッ)」
『下僕。お主にには神たる我を敬い従う事はあれど、もっと……』
懲りずにまた文句を言い始めたので、向きを変えて怒りを隠さずに振り返る。
するとようやく聞かれている事に気がついたのか小さく震えて静かになる。
「テメェに敬うようなところなんてねぇんだよ!この黒マリモがぁああ!!!!」
流石に切れたのでそれを掴み、全力で外に向かって投げる。
『むぎゅっ!?ぬぅああああああぁぁぁ……!!』
凄まじい力と速度で飛んでいくそれは、ドップラー効果で小さくなっていく声と共に空の彼方へ消えていった。
「……あの」
「……あれだけ飛ばしてもまたすぐに戻ってきやがるなあれは」
『いい加減にせぬか!死なぬとはいえ怖いのだぞ!?』
「ちっ……」
『お主、下僕のくせに舌打ちなどと——……!!!?』
全力で投げたのにも関わらず、すぐに戻ってきてギャーギャーと喚いているこの真っ黒で丸い生ものの正体は神……らしい。
しかも邪神とやらだ。
遥か昔、この世界には魔法が存在していたらしい。
そしてこれは魔王を生み出しこの世界を支配しようとしていた黒幕だった。
しかし長い戦いと、多くの魔王を生み出していった事により弱体化してしまったらしく、勇者に封印されたのだ。
その頃の邪神は必ず蘇り、再び世界を支配してやると意気込んで呪いをかけ、眠りについたらしい。
呪いも勇者やその仲間達の力をそぐとともに、自身の力を取り戻すため世界に満ちた魔の力を失わせその身に吸収させていった。
月日は流れ封印も弱まり勇者やその仲間達の子孫の血も薄くなってしまい、さらには魔法などの力の行使も困難になっていた人間達。
対して邪神は力を蓄え復活の時を待つばかりだった。
それでも諦めるまいと覚悟を決め、立ち向かい再び邪神を倒すと!
そして類を見ない苛烈な戦いが幕をあげる……はずだったのだが。
あろう事かこの邪神寝坊したのである。
そうしてズルズルと時は立ち魔の力は全て邪神に吸収され、人間は魔法を使う事もできなくなり……、やがては存在だけを残し力の全てが失われた後やっと目が覚めたのである。
そうして現代に復活した邪神は周りに魔も無く、人間には認識もされる事無く彷徨っていたのだろう。
ここはあくまで想像なのだがあながち間違っていないと思う。
なぜなら自分が見つけた時は泣きながら空中を彷徨っていてこちらに全く気がついていなかったのだから。
威厳も何もあった物じゃない。
というか邪神というより最早駄神である。
「ふわぁ〜……。おはよぅショウちゃん」
「……五月蝿かっただろ。すまねえ母さん」
つい怒鳴り声を上げてしまったせいで起こしてしまったらしい。
目は半開きだが単に眩しいだけらしく、足取りはしっかりしたまま歩いていく。
「おはようございます勇者様!」
「はぃ、おはよぅ〜……zzZ」
……
そう、これが勇者……。
身長百四十そこらでブカブカのパジャマを着て、枕を抱えたまま椅子に座って船を漕いでいるこの子供一人生んだとは思えない|(というか自分がほぼ子供にしか見えない)少女こそが俺の母親。
そして何を間違えたのか今の時代の勇者である。
「勇者様!!」
「はっ!ぁあおはよぅ〜聖ちゃん、良い朝だね〜」
「今はお昼です」
「そっかぁ……zzZ」
……こんなんでも勇者である。
‘おつかれさまです坊。遅めの起床ですが、今日もお元気そうで何より’
「おう……」
一息ついていると足下の方から声が聞こえたので答えを返す。
そこには一匹のネコが足にすり寄りながら顔をこちらに向けている。
ただし只のネコが喋るわけもなく、目の前のネコには尾が二本に分かれている。
『なれ!下僕よりもこちらに先に挨拶せんかっ』
‘すいやせんねぇ、こちらとしては敬うべきは坊なんで義理は通すのがスジでしょう?’
ごぶろく。
それがこのネコ、我が家の飼い猫だった子のなまえだ。
そうだった、だ……。
子供の頃に捨てられていたごぶろくを俺が拾ってきて世話をしていたのだが中学二年の秋、母さんと俺に見守られて死んだのだ。
しかし邪神を見つけ、勇者を捜して聖剣がやってきてそれに対抗して邪神が生み出した魔王の元となる力が宿ったのがごぶろくだったのだ。
「……zzZ」
「勇者様、しっかり起きてください。翔矢さんも手伝ってくれませんか?」
『我は腹が減ったぞ!おい下僕、さっさと飯を作らぬか!』
‘坊も起きた事ですし、あっしはいつもの見回りに出てきやす’
「……」
これは俺とm「翔矢さん!」『下僕!』……
「少しは静かにできんのかぁああ!!」
……これは見えない物を見続けてきた俺と、
集まってくるいろんな物達との騒がしくも退屈しない
そんな日常の物語である