3.ハウ(始まり)
さて、冒険者になる理由は何も憧れなどという前向きな理由だけではありません。中には選択の余地が無くダンジョンへ挑まなければならない者も居ます。
そんな一例を紹介しましょう。彼の名前は『ハウ』彼の物語はとある小屋からスタートします。
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「いい加減にしろよお前ら!借りた物はしっかり返さんかい!」
「すみません、どうかあと少しだけ待ってください」
まあ、珍しくもない借金の取り立てというやつです。
彼の親がなぜ借金をしたのかそれがどの程度なのかは対して重要ではありません。
「もう待てねえよ財産全部差し押さえだ!」
「それだけは勘弁を」
「うるせえ!」
こうして彼の家の財産はすべて差し押さえられることになりました。
しかし、借金はそれだけではどうしようもない額だったのです。
「ちっ!足りやしねえ。仕方ねえこのガキをダンジョンで強制労働させるぞ」
「息子だけはお助けを……グハァ」
「うるせえお前に口答えする権利はねえんだよ」
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ちょっとひどいように見えるかもしれませんがこちらの世界では認められている行為なのです。文化の違いだと思ってください。
こうして、彼ハウは無理やり冒険者として働き借金を返すこととなったのです。
ん?彼がどうなったか気になりますか?じゃあまたあなた方に選択をしていただきましょう。彼のその後を見るか見ないか。
続きを見たくない方は次へ飛ばしてください。見たい方はそのままどうぞ。
では、語らせていただきましょう彼の少し先の話を
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「これで全額だ」
「確かに、お疲れさん」
彼はたった今借金を全額返し終えたところです。
「んで?これからどうするんだ?このままダンジョンに潜るのか?」
「まさか、命がけの日々なんてこれ以上まっぴらさ」
「まあちげえねえ、まっとうに生きるのが一番さそれじゃあな」
男に見送られ、彼は金貸し屋を後にします。
その足で向かったのは彼の両親の所。全財産を失った彼らは街でも一番治安の悪い地区の住人となっておりました。
「……」
家の敷地に入るハウ
「お前!ハウか!よく無事で帰ってきた、うれしい」
喜びハウの元へ駆け寄る両親、しかし、ハウの心はどうやらその感情とは逆だったようです。
「お前らのせいで……よくも」
彼は腰につけた剣を抜くとダンジョンで鍛えた腕で両親を一刀両断にしました。
その腕は彼の両親が悲鳴をあげることなく絶命するほどにさえていたようです。
「これで俺は本当に自由だ」
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こうして、彼は自由になりました。えっ?捕まる?殺人?ああ、街の底辺が1人2人いなくなったところで街は全く騒ぎになりませんよ。冒険者がいざこざを起こすことなど日常茶飯事なのです。ちょっとやそっとの事では気になりませんよ
では今日はこのくらいで失礼しますねまた別の機会があれば彼の事を語ることもあるでしょう。