2.アギ(始まり)
ダンジョン、それがなぜ存在するのかそれは知られておりません。
そしてどのような構造なのか?どの程度の深さで最奥に何があるのか?それに辿り着いた猛者は未だおりません。
それゆえに多くの者がダンジョンに潜り奥を目指すのです。
ダンジョンに挑戦する理由はさまざまです。その一例をご紹介しましょう。
彼の名前は『アギ』遠くの異国からダンジョンを求めてやってきた若者です。
物語は彼がダンジョン近くの宿屋の食堂に居る所からスタートします。
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「おばちゃん!フライ定食!」
「おやおや、元気だねえ」
「ああ、なんたって憧れのダンジョンに挑むんだからな!」
「あんた冒険者かい、命は大事にしなよ」
近くの中年の男性がアギに話しかけます。
ここで説明しておきますとダンジョンに潜る人の事を総称として『冒険者』と呼びます。
『冒険者』という名称がつかわれるのはダンジョンに潜る人のみです。ダンジョンの外で長距離を移動や採取、調査等をする者たちは『旅行者』や『放浪者』、『探索者』などと呼ばれています。それだけダンジョンの冒険というものはこの世界では特別な存在なのです。
「俺は、子供のころからダンジョンに憧れてたんだ男ならやらなきゃな」
アギのようにダンジョンに憧れ挑む者は多いです。なぜならその特別さゆえにかつてダンジョンに挑んだ冒険者たちとりわけその中でも猛者たちの物語が英雄譚として語り継がれているからです。その英雄譚についてはいづれお話することもあるでしょう。今はアギの話に戻しましょう。
「それでもちゃんとギルド行って指導を受けてからにしろよ」
「わかってるよ、さすがにそこまでの命知らずじゃないよ」
ダンジョンに挑むというのは相当危険な行為です。そのためギルドと呼ばれる団体が指導を行っています。冒険者はほとんどがこのギルドの指導を受け登録を行っています。
「はい、フライ定食お待ち」
「いただきます~」
少し食事のシーンはカットしますね。
「ごちそうさま、じゃあ行ってくるよ」
「まあ頑張りな」
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意気揚々と宿を後にするアギこうして彼のダンジョンへの挑戦は幕を開けるわけです。
えっ?短い?もっと先の事を教えろですって?
どうやら皆さんの中には勘違いしている人もいるようですね。私は彼をダンジョンに憧れる者の一例として紹介しただけですよ。
彼は別にただの一人の冒険者ですよ。それでも彼のその後が知りたいですか?
では皆さんに1つ選択をして頂きます。それは彼のその後を見るか見ないかです。
ダンジョンでは選択の連続です。そして選んだ道は後になって変えることはできません。
そのような体験をあなた方にもしていただきたいのですよ。
では、続きを見たくない方は次へ飛ばしてください。見たい方はそのままどうぞ。なおと飛ばす方は下には続きがありますので上からお戻りください。ダンジョンで戻るときは来た道を引き返すのですよ。
さて、これを見ているということはあなたは見る選択をしたということですね?
もし違うのならばすぐに戻ることをお勧めします。よろしいですね?
では、語らせていただきましょう彼の少し先の話を
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ここはダンジョン内部、どの程度の深さかと言われればそれを示す尺度が無いと答えるしかないわけで、そこは皆さんの想像にお任せします。
彼はそこで一人走っております。
「うわぁああ」
なぜ走っているか?それは簡単です。彼は今追われているのですよ、ダンジョンの魔物に。
声を出して走るのは危険じゃないかですって?もうすでに危険なんですよ。彼は今命の危機なのです、追い付かれれば確実な死が待っています。そしてそれは時間の問題です。
彼にできることはこうして逃げ、助けと出会える幸運を祈るだけです。そしてこうして声を上げていれば近くにいるかもしれない猛者が助けてくれる可能性が上がるのです。
まあもちろん危険も上がりますが。そして……残念ながら彼が辿り着く先そこは行き止まりです。
「あ、ああっ、いやだ死にたくない」
ダンジョンで助けに来る猛者と出会えることなどまずありません。現実は非常なのです。主人公補正?なんですかそれは?言ったはずです、彼は『ただの一人の冒険者』だと。
後ろから追いついた魔物が彼に襲い掛かります。彼は最後の力で必死の抵抗を行いますが当然実力が違います。そして彼の冒険はここで終わってしまいました。
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どうでしたか?見るという選択をした皆さん?後悔しましたか?それとも……
いや、ここで皆さんの感想を聞くのは無粋ですね。さて、残念ながらお亡くなりになってしまった彼ですがこれは少し先の時空の話です。まあ、私が今いる時間から見れば過去なのですが、それが彼が冒険に出てからどのくらいの頃の話なのかどうして彼が強力な魔物と対峙することとなったのかそれはまた別の機会があればお語りいたしましょう。
見る選択をしたみなさまへ
見ない選択をした方のためにネタバレはお控えくださるようにお願いします。