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ダブル・サイド  作者: 四宮 皇季
第三章 ダンジョンと少女たち
31/39

11話 黒騎士とそれから・・・

 短いですが、今話でクオン編は一区切りになります。次回からは、トワ編になります。

 「どういうことだ?」


 「だから”自分”より上に年下の管理職がいたら”プライドの高いヤツ”はとても屈辱を感じると思う」


 そう言葉を濁したが、確定事項だと思う。クランドールたちには信じられないだろうけど、俺にはそれしか思い当たらない。


 「あたしは・・・それに”巻きの込まれた”ってワケか?」


 「言いにくいけど『その通り』だね」


 さらりと言うクオンの何処が言いにくいことなのだろうか?まあそれがこの男のクオリティなのだろう。


 「で、ユリーナーーー君はこのことを知った上で”どうする”のだい?

 今まで通り、【ギ?】に”弄ばれる”のかな?

 それとも”復讐”するのかな?

 君自身の心に聞いて、答えを出してくれ」


 クオンは”人の悪い顔”で黒騎士に選択を迫る。表面は紅顔不遜でいるが、内心は焦っている。


 「(このままの状態だと、寿命の前に”魂が燃え尽きて”しまいそうだ・・・。少しでも強く”生を望まないと”先に心のない『肉塊』になってしまう・・・)」


 結構酷い例えだが、魂がなくなった時点で『生きた人形』になってしまう以上、同じことなのだろう。


 「クランドール、一つ確認したい。お前たち神が『成長する』方法はない(・ ・)で間違いないか?」


 「”ワシが知る範囲(・ ・ ・ ・)”になるが、聞いたことはないぞ」


 クオンは少し考えて”こんなこと”を聞いてみた。


 「クランドールたちの知っている範囲で、『邪神』とかはあるのか?」


 「「!!」」


 クオンの言葉に驚く、クランドールとユリーナ。クランドールはまだしも、ユリーナが驚くのは其処まで頭が回らなかったのだろうか?

 詳しく聞くためにクランドールを問い詰めていくと、ある程度のことが浮き彫りになった。


 第一に、神の中にも”欲深い”神が現れたこと。人間らしい存在はそういう面も同じ用なモノらしい。


 第二に、堕ちた存在は通常の神とは違い、神は成長しないと言う”絶対的ルール”から逸脱した存在となる。


 第三に、そういった”落ちた存在”は、ほぼ『世界神』クラスであることで、それ以下のものたちも多数いるらしい。


 「150億年くらいで”約2万”のステータスは『ありえないこと』と認識した方がいい。しかしクランドールの話だと・・・」


 クオンは現状で最も高い仮説を導き出そうとしている。だが、今のクオンには確証に至る”何か”が圧倒的に足りない!


 「黒騎士ユリーナ。俺は君を誘おう!【ギ?】を倒し、この世界(ヴェラリーズ)の危機を救う戦いに!!」


 テーブルの上に肘を着き、ユリーナを見ているクオンからは、形容しがたい”何か”を感じ取れる。


 「わたしは・・・・・・」


 「まあ、いきなりのことで混乱しているだろう。この部屋を今夜は解放するから、一晩じっくりと考えてくれ」


 クオンは答えを急がせることをしなかった。こういうことはじっくりと考えて欲しいし、現状で世界神が手を出してこないと、確信しているからだ。

 このダンジョンが世界の機構から”ほんの少し”ズレているからだ。


 「俺はお前が”当たり前”の人生を手にすることを祈っているぜ」


 1階のボスルームから退室する前に、彼女に対してアドバイスっぽいものをしてみた。出来ることなら巻き込まずに放っておければ一番なのだが、ユリーナを世界神が放っておくことはない。

 間違いなく世界神はユリーナを”気に入って”いる。それも良い方でなく”悪い方”でだ。クオンの予想はこうである。

 ユリーナは世界神にとって、


 『おもちゃであり、魂が消滅するまで”絶望を与え続け、己の成長の糧”としている』


 そうクオンは結論づけた。ハッキリ言て今回、クオンが気付かなければ、確実にユリーナは殺し尽くされていただろう。

 あの場でこの事を言わなかったのは、今の彼女では”受け止めきれない”とわかったからである。


 「ティナにユリーナの相手をさせようかな?」


 「そうだのぅ。同じ女性同士の方が安心できるだろう」


 クランドールもクオンの考えに賛成らしい。ティナは現状では”肉体がない”が他の者たちと比べても、何の遜色のない行動をしている。ティナにユリーナの件を頼むと、二つ返事で「お任せ下さい」と言ってくれたので、ユリーナのことをお願いした。



■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□


 ユリーナことをティナに任せて、クオンはケインと『今後の動き』について話し合っている。


 「ーーー。そうか。それなら”ミレロマ”だっけ?其処に向かって、道中の村々に『コレ』を”人知れず”おいてきてくれ」


 「『コレ』は何ですか?」


 クオンの取り出したのは”手のひらサイズ”の縦長い石だ。ケインが持って大丈夫か?と聞くので頷き持たせてみた。


 「ほんの少し”魔力”を感じます。これは魔導具ですか?」


 「魔導具と言うのは少々魔力が少なすぎる。名前を付けるなら『刻印具』かな?」


 この物体の中には目では確認できないくらい小さな、1cm台の刻印が複数ある。

 この刻印は、この世界(ヴェラリーズ)の住人では読めない上に、同じ日本人なら読めたとしてもこの”刻印具”自体が恐ろしく堅い。その上、”刻印とそれ以外の見分け”の難しさが拍車をかけている。


 「刻印自体は、結構ありふれた内容(モノ)になる」


 この世界には、『刻印』は存在している。神像などに『豊作祈願』やら『家内安全』なんかの願いを刻む程度だが・・・。


 「内容は『老若男女とわず、ダンジョンを攻略しなくてはならない』と思うように、時間をかけて刷り込んでゆくんだ」


 「『時間をかけて』は良いのですが、どのくらいの時間ですか?」


 「ケインにとってはかなり”長い”かもね~~~。一応10年くらいを目処にして、準備を進めている感じかな?」


 クオンから出た時間はすでに、一般からズレていた。


 「その間に俺たちは何をするんですか?現時点での予定通り、ダンジョンの攻略ですか?」


 ケインの言葉に頷く。そこからじっくりと行動のプランを練っていく事になる。


 「最初の一年は、各村を周りながら”刻印具”を設置する。この”刻印具”の効果は大体1kmくらいになるから、う~村の中央が良いかな?

 この刻印具は大地に落ちると、地面に溶け込み広範囲に浸透する。中心点から50mくらいが一番濃い範囲になるから、可能なら設置点は”井戸”なんかが一番効果的だ。

 それと平行して行うのが、ケインたち”冒険者グループ”のレベルアップだ。これは今やっていることを、そのまま続けてもらうつもりだ。

 個人のレベルに応じて、もっと上の『修練の間』を造る。そうやって地力をつけてもらう」


 「わかりました。そのようにみんなと話します。道中で亜人(同士)と出会ったときは、どの様に対応いたしましょう?」


 ケインにその質問をされたクオンは、待ってました!っと言わんばかりに”ある袋”を取り出した。


 「現存する収納袋を魔改造したモノになります!」


 なぜか敬語になるクオン。それを不思議そうに見ているケイン。


 「持った感じ・・・別段変わったところはない様ですが?」


 「収納袋の収納数は『規格化』されある程度決まっているのは周知のはずだ。

 しかしこの”無限袋”は限界量の規格がない。これがどういう意味か分かるかな?」


 ニヤニヤしながら、クオンはケインに問いかける。


 「際限なく入る・・・ですが、何かしらの制約が出てこないですか?」


 「制約自体はあるけど、『登録した本人以外使えない』って言う防犯上のものなっんだよな」


 本来の収納袋にはそんな機能はない。


 「魔力が少ない者が使うとどうなるんです?」


 ケインは鋭いところに気が付いたようだ。


 「購入してきて貰った”収納袋”くらいだからーーー40個くらいか?」


 「一番高いヤツでしたからね」


 「俺の魔力を込めたから、数万(・ ・)くらいかな?」


 ケインは絶句した。収納袋自体は、”同じ種類でもまとめない限り個別”になる。

 その状態でも数万(・ ・)になれば、1回の探索で収納限界に達することはない。


 「防犯に関しては、『個人認証(パターンチェック)』を使っている。袋の口に付いているメダルがソレだ!」


 ケインはそのメダルを手に取る。硬貨くらいの大きさである。


 「現状で袋の中に手を突っ込んでみろ」


 クオンの言葉に従い、ケインは手を突っ込む。


 「”ただの袋”ですね・・・」


 「それは『個人認証(パターンチェック)』をしていないのが原因だ。メダル手を当ててくれ」


 ケインはメダルに手を添える。その手にクオンは手を重ねる。


 「『個人認証パターンチェック』登録ケインの使用を許可する」


 クオンがそう呟くと、一瞬メダルが光った。


 「これで、”使用者登録”が終了した。もうケインも使用が出来る。中にお前たち用の武器が入っている」


 そう言われたケインは、再び袋に手を突っ込む。今度は手がスッポリとは入り、慣れた感覚が伝わってきた。


 「確認出来ました。しかし・・・凄い機能ですね。そうなのに、これだけじゃない気がします」


 「特製だからな!じゃあメダルを握りながら『接続(コネクト)・ダンジョンボックス』と念じてくれ」


 クオンはテーブルの上に、透明な箱をおいた。


 「この中と、その袋の中は繋がっている」


 「試してみます」


 成功し透明な箱の中には、ケインの手がでていた。


 「この機能を使えば、いつでも連絡が取れる」


 「手紙がいいとこだがな」そうクオンは苦笑するが、戦略面とし見たらスゴいことになる。


 「連絡をしてくれたら、金銭は準備しよう。奴隷購入の資金は準備しよう」


 クオンはそう言った。それからは、ケインち今後について話し合った。

 クオンの毎日は流れるように進んでゆき、ダンジョンにある程度の住人が集まったのは、この日から5年の歳月が流れていた。


 「結構時間がかかったな・・・」


 王城のバルコニーから城下を眺め、そう言うクオンの隣には、妻である”ルクレシアとルルミナ”の二人がいた。

 2人の腕に中には赤ん坊がいた。

 お読みいただきありがとう御座います。

 クオン編ではほとんどない戦闘シーンをトワ編では入れていきたいです。


 誤字・脱字がありましたら連絡をしてください。


 次回の更新は、6月5日を予定しています。

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