表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブル・サイド  作者: 四宮 皇季
第三章 ダンジョンと少女たち
30/39

10話 黒騎士とダンジョンマスター

 今回は12時投稿になります。


 黒騎士ヴェルの正体は!?

 仮面の黒騎士・・・。地球でだったら完全に”中二症”患者だ。そんなことを思いながらも、黒騎士の動向に注意する。

 ケインの反応から見ると、この黒騎士は相応の強さを持っているモノと推測した方が、ダンジョン防衛にプラスに働くのだろう。


 「ケイン、”黒騎士ヴェル”いついて分かっていることは、どのくらいあるんだ?」


 ケインに確認するが、明らかに情報の開示がないようだ。


 「申し訳ないのですが、黒騎士に関しては”推測の域”の話しか流れていないのです。常にあの鎧姿なので、誰も『性別・年齢・種族』と不明な感じです。

 流れている唯一の情報が、使用武器は”大剣”と”斧”を使用していた・・・らしいです」


 ケインの言う通り、黒騎士が”情報の重要性”を理解していたのなら、自身を隠す意味は高い。情報の有用性を理解しないものには、”6級以降は早すぎる”とクオンは判断した。そう考えるとLVに関しては、俺より高いと見た方がより安全面が増すのだろう。

 黒騎士に関しての考査を行っていると、黒騎士は”迷いの森”に侵入し、野生の魔物たちを薙ぎ払っている。


 『この森は雑魚が多いな・・・。それに何やら、この森から”以前になかった気配”を感じるな・・・・・・』


 黒騎士にはこの森に起こった異変を、直感的に感じ取っているのだろう。クオンがこの地にダンジョンを構えていこう、モンスターが生息していた森は”一種の魔境”と化していた。

 このことを感じ取れるのは、次の二つくらいしか考えられない。


 1・生まれつき”第六感”が以上に働くタイプ


 2・”勇者召喚(コール・エタニティー)”により、この世界(ラグドリーズ)に喚ばれた勇者


 もしかすると”勇者召喚(コール・エタニティー)”で喚ばれた可能性の方が、高いのではないだろうか?クオン自身はまだ、この世界(ラグドリーズ)に来て半月も経っていない。異世界人は、ケインたちに比べ”身体能力や適正”が高い傾向にある。


 「黒騎士は冒険者になって長い(・ ・)のか?」


 「接点がないので詳しくはわからないですが、登録一年も経たずに”5級”になり、それからわずか半年で”4級”に上がったと、他の冒険者が噂をしていました」


 ローナに魔法を教えていたクランドールに、念話で話しかける。


 (「クランドールは今の話、どう感じた?俺は、”異世界人”だと睨んでいる」)


 (「それが”可能性として”最も高いな・・・・・・。とてもレアなケースで『転生者』ならぬ、『再誕者』というものがある」)


 クランドールから新しい単語が聞こえてきた。


 (「『転生者』は聞いたが、『再誕者』は聞いたことがないな・・・?」)


 クオンが頭を捻っていると、クランドールが補足してくれた。


 (「『再誕者』とは”前世の記憶”に加え、”前世の経験”を持ちながら再び生を受ける、大変珍しいモノだ。

 2・300年に一人が生まれればよい方になる」)


 そんなことを聞いたクオンは、黒騎士に対して”鑑定”を試みた。



 名前:ヴェル (ユリーナ・ヴェルクトル)


 性別:女  年:17歳


 種族:人族(1/8はエルフ)


 称号ピュリア:<異世界の落とし子> <再誕者>



 この鑑定結果には、驚かされた。<異世界の落とし子>これは死後、この世界(ヴェラリーズ)に魂が引き寄せられたのだろうか・・・・・・。

 そして、もう一度生まれて、死んで・・・再び、生を受けたのだろう。

 普通の精神では、保たないだろう。彼女の精神が治る範囲なら、治してやってもいい。”仲間”に加わることが条件になるが・・・。


 「黒騎士の対応は、俺が直接当たろう」


 クオンの言葉に驚いたのは、クランドールであった。理由は簡単で、ローナでも十分対応が可能だったからだ。


 (「彼女が俺たちと”同じ世界(地球)”から来た者なら、俺が対応した方が話が早い」)


 (「確かにそうだが・・・もし、お主が死んでしまったら、姫たち(娘たち)が悲しむぞ?」)


 クランドールに言葉に、俺はニヤリとと笑い1階層のボスルームに転移した。

 簡易ディスプレイを表示して、黒騎士(彼女)の動向を見ていた。黒騎士の進行速度は予想以上に早かった。

 侵入開始から2時間で、天然迷宮と化しt”迷いの森”を抜けるてダンジョンの入り口まで辿り着いた。異常な進行速度である。この様なことは、このラグドリーズで可能な存在は居ない。

 彼女がこの世界(ラグドリーズ)に”落ちた(・ ・ ・)”のではなく、”落とされた(・ ・ ・ ・ ・)”可能性の方が高い。そうしないと彼女の能力が高いことの説明がつかない。


 「此処まで2時間・・・かからないかもな」


 俺はそう呟くと、黒騎士を迎える準備にかかった。まずは異次元収納庫(アイテムボックス)から俺用の玉座を取り出した。つぎに紅い絨毯を入り口まで真っ直ぐに伸ばす。

 そう俺は擬似的な”ダンジョンのボスルーム”を作成しているのだ。この姿を見られるのは、ダンジョンの主としてマイナスなので急いでセットする。

 準備が終わったら、椅子に腰掛け脚を組む。左手にワイングラス(中身は葡萄っぽいモノを搾ったもの)を持ち、右手に顔を寄せて”魔王スタイル”で入室するのを待つ。10分くらいで黒騎士はやってきた。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 黒騎士:Side

 わたしがこの世界で生を受けて17年が経つ。再び生を受けたことにも”ある種の絶望”を感じたが、そのときと変わりないくらいの衝撃と驚きを受けた。何故なら・・・・・・


 『美幼女(・ ・ ・)が無理して尊大に振る舞っていた』


 からである。ハッキリ言わなくても、この言葉しかない。恐怖感などもない。何がしたいのだろうか?彼女の出方を見ていると、昔懐かしい(・ ・ ・ ・ ・)言葉を聞いた。


 「よく来たな・・・黒騎士ヴェルよ」


 彼女はその言葉(セリフ)に仮面の下の表情をひきつらせた。


 「お主は我に従う気はないか?世界を支配した暁には、世界の半分をくれてやっても良いぞ」


 一体どのくらい前に聞いたことがあるのだろうか?懐かしのセリフに暫し呆けてしまう。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■


 掴みはバッチリだと思いたい。それにしても黒騎士は全く動かない。取りあえず気まずい空気でないのをいいことに、このまま傍観していよう。


 「なぜ・・・その言葉を知っているのだ!?」


 黒騎士が慌てだした。見ている分には面白いけど、このままでは話が進みそうにないので、無理やり話を進めることにした。


 パチン!


 指を鳴らせると”何もなかった空間”にテーブルとイスが現れた。


 「座るといい。立ち話も何だ・・・」


 突然現れたテーブルに警戒心を露わにする黒騎士ヴェル。そんなことを気にせず、座るように薦めるクオン。


 「わたしを何処まで侮辱するんだ!!」


 飛びかかってきた黒騎士ヴェルに脅威は感じなかった。パチン!と指を鳴らすと、黒騎士の眼前が爆発した!


 BOoooooN!


 まるでマンガの様な効果音が響いた。


 「キャァァァァァァァ!!」


 壁まで吹くとばされる黒騎士。その鎧は所々ヒビが入りボロボロになっている。特に兜の方が酷く、こちらはバラバラになり破損していた。

 兜の中に隠されていた、彼女の”長い黒髪”が外で広がった。これでもかなり手加減したのだが、ステータス上の2ランク分の”差”はかなり大きかったようだ。


 「力量差が分からないほどバカじゃないんだろ?少しでも俺とお前の力量差を感じたなら、イスに座ってくれないかな?」


 優しそうな口調だが、殺気をぶつけているので彼女の顔色は悪い。怯えなくてもいいのに。(←元凶です)

 なかなか大人しくならない黒騎士ヴェルは数度、黄泉路へ歩みかけたかもしれない。


 「もう分かっていると思うが、俺の名はクオン。日本人だ」


 「ユリーナ・ベルクトル・・・元日本人だ・・・・・・」


 時間にして数時間ほど彼女を、なぶり続けた俺は悪人かもしれない。


 「さて、ユリーナ・ベルクトル。君のこれまでの行動は、全て調べさせて貰った」


 投影ディスプレイに彼女の”この世界(ヴェラリーズ)”に魂が流れ着き、生まれ変わってからの人生を見てきた。この娘の人生は酷いモノだった。


 「1回目の再誕時は、誕生と同時に母親が死んでしまう。その後父親の娶った後妻が、幼い自分に暴力を振るうのが常だった。

 2回目は、10歳の時に実の父親に襲われ・・・・・・なんつーか酷いってモンじゃないよな・・・・・・」


 その内容に呆れてしまう。そして、明らかに”彼女の人生は他人に操られていた”という事実が分かってきた。

 今回で10回目の再誕になる。この時点で彼女の魂はボロボロで、その魂の根底には『深い闇と憎悪』が渦巻いている。こんな風に彼女の人生を滅茶苦茶にしたのは、おそらく・・・”鏡面世界(ヴェラリーズ)の世界神【ギャ・・・】”何とかだと思う。

 どの道【ギ?】何とかは滅ぼす予定だけど、その前に彼女が消滅してしまうのは忍びない。


 「ユリーナ・ベルクトル、君は・・・君を巻き込んだ張本人を”葬る”気はないか?

 俺に従うなら、その目的は果たせるぞ?」


 「そう言う”不可能なこと”を言うんじゃない!そんなの無理に決まっているだろ!!」


 彼女は涙目になり、心情を暴露する。それ聞いた瞬間に世界神(バカ)に対して、初めての殺意を持った。殺意はコントロールしてこそで、それに飲まれては行けない。


 「”可能”だとしたら?俺は君の協力を仰ぎたい!じゃないと・・・君の進んできた道、選んできた選択それのほとんどは”ヤツの手の平の上”と言うことになるんだぞ?

 2回目の死に方も、前回の死に方も・・・全部が嘲笑(あざわら)う世界神のせいなんだぞ!?」


 俺の言葉に手をきつく握り締めるユリーナ。そこまで【ギ?】が怖いのか?と俺は思ってしまう。

 実際彼女の人生は【ギ?】のせいで狂わされた。それは紛れもない事実であり、これまでの転生もおもしろ半分で狂わされた続けた。

 今回俺との出会いは彼女の人生をやり直す最初にして最後のチャンスになる。それでも踏み出せない・踏み出さないのは彼女の自由である。


 「例えそうだとしても、あの存在には勝てない・・・」


 ユリーナの言葉に息をのむクオン。そんなことはクオンの方がよく知っている。現状では負けるだろう。それでも前に進み続けるのは止めない。

 今は勝てずとも5年後は?10年後は?

 十分に勝算がある様に感じている。この勝算自体に希望的観測は全く入っていない。クオン・トワと言う”世界の常識外”が規格外の成長を遂げたとき、その目的は果たせる。

 最も”世界神を倒す”そこのこと自体が、クオンたちの役目ではない。あくまでも”通過点”に存在する石っころ(・ ・ ・ ・)と言う認識だ。

 クランドールたちのステータスの平均が大体20万くらいらしい。現状では所持していない<身体強化系>の上昇スキルや、ある種の特化スキルなどを獲得すれば十分に超えられる計算だ。

 ”神たち”は監視者であり、そこまでの強さは求められていない。20万と言う数値だって、管理者の上の”監視者”だからこそのステータスと考えれば、高くても【ギ?】は7万前後の数値ということになる。

 レベル上限値が分からない以上、上げられるところまで上げ、ステータスを上昇させるべきだろう。


 「何故そこまで・・・世界神(ヤツ)に強気になれるのだ?」


 「お前はヤツの数値がどれくらいか、知っているのか?」


 「わたしの記憶が正しければ、7万に満たないくらいだった様に思う」


 200年前の話だがな・・・付け加えていた。


 「結構高いな・・・」


 何かが腑に落ちない。クランドールに来て貰うか・・・。


 (「クランドール、話は聞いていたよな?こっちに来てくれ 」)


 「呼んだか?」


 「ん?驚かせたか?彼はクランドール。君を巻き込んだ神とは”別の上位神”になる」


 俺の言葉に警戒するが、行動に移すことはなかった。


 「俺が喚ばれた理由が彼ともう1神のお願いからだ。君は今生きているこの世界と別の世界(・ ・ ・ ・)の可能性を感じたことはないか?」


 俺の質問に彼女は考え込んだ。


 「そういえば、前回に比べ異常に魔物が少なくて疑問に思ったことがある・・・」


 パチン!


 空中に投影されたのはクランドールたちに見せて貰った、『鏡面世界(ヴェラリーズ)』の映像だった。


 「これが俺たちの暮らしている世界”鏡面世界(ヴェラリーズ)”だ。この様に二つの世界が向かい合っている。簡単に説明するとこの世界が”バランスを崩して、世界崩壊(・ ・ ・ ・)が起きる”までそれほど猶予はないそうなんだ・・・・・・」


 クオンは体の前で横にした手を”上下で叩いた”パン!と乾いた音が部屋に響く。ユリーナは恐る恐る言葉を発した。


 「どれくらいの時間なんだ?」


 「数千年とクオンたちには教えたが、ここ最近の調べで、多くみても”2~3000年”くらいが妥当との判断をワシ等は下した。

 無論、かなり余裕を取ってた上での判断になるがな・・・・・・」


 苦々しそうなクランドールの顔を見るとヤバそうなのはわかった。


 「クランドール、話は変わるが・・・お前たち神の成長は有り得るのか?」


 突然の話題変換に少々と惑うが、クランドールは持ち直して答えた。


 「ワシ等神に”成長は存在しない”ことを念頭に置いてくれ・・・。よく物語である”信仰心が力”とあるが、ワシ等神にはそんなモノは関係ない(・ ・ ・ ・)!!」


 「”全ての神において”・・・と言うわけか?

 地球における宗教観が全くの無価値になってしまうな(笑)」


 クッッッ・・・とクオンが笑う。その様は神と敵対する”魔王”そのものだった。職業としての【魔王】を持っているのだからあながち間違いではないのだが・・・。

 だからこそクオンは”この世界神(バカ)はそんなに高いステータスをもって生まれたのか?”と疑問に思った。


 「クランドール・・・たかだか世界一つの管理者が『7万近い』ステータスを持っているモノなのか?」


 この言葉に驚愕の表情を浮かべるクランドール。


 「先ほどの弁が真実なら、この世界神(バカ)は生まれつきに高い能力を持っていたことにならないか?

 そんな存在が”たかが一世界神(管理者)”であるとは思えないんだが?」


 「他の者には話さんでくれよ・・・。

 ワシ等神の区分は『生まれ持ったステータス』で決まっておる。ワシが『平均21万』で、アテンドールが『約22万』となる。

 下級神・・・いわゆる”世界神”は『約5万』くらいになる」


 「ここの管理者の世界神(バカ)が何故それほどの能力を持つのだろうか?それ自体がおかしく思うのだが・・・・・・」


 「それが分からんのだ。鏡面世界の管理者(ヤツ)の能力値はギリギリの『約5万』だったはずだからな・・・・・・。しかも『5万』程度の数値の者は”溢れるほど”おる」


 クオンが一つ話の中で思ったことを聞いてみることにした。


 「クランドールたちと此処の世界神(バカ)同い年(同期)になるのか?」


 「ああ。ワシ等の方が200年ほど遅いが、神期は同じだ」


 クオンには原因の一端が解った気がした。


 「そいつってさ・・・自尊心(プライド)が異常に高くなかったか?」


 「よくわかったの!その通りだ!」


 「なるほど・・・それが答えの一つか・・・・・・」


 クオンの言葉はクランドールには届かなかったが、ユリーナには届いたようだ。クオンはこの面倒事をどうしようかとため息をついた。

 今回の会話の中で一番不憫なのは名前のない、ヴェラリーズの世界神【ギ?】何とかですかね?


 誤字・脱字がありましたら、連絡をしていただけると有り難いです。


 次回の更新は5月30日の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ