9話 踊るは愚かな者たちなり
雑魚はどこまで行っても”雑魚”であり、扱いはいい加減で・・・・・・。
ケインたち冒険者を配下にして、1週間がたった。この1週間の動きは以下の通り。
1・契約当日に、町に向かいギルドに報告して貰うために、ダンジョンを出る。
2・2日かけて拠点にしていた街に移動。
3・街に着いたら、ギルドに報告する際に危険度は少し高めに言って貰う。
4・渡した金品の内6割をギルドで売却して、ダンジョンの注目を集める。
5・渡した金品で”ユニーク級”のアイテムは、オークションに出すとギルド内で自慢する。
6・奴隷商の元に行き、指示内容の奴隷(ラグドリーズの奴隷の9割は、亜人系)を購入する。内容に関しては指示する。
個人で欲しい奴隷が有れば1人だけOK。それ以外の奴隷に関しては、主人は次の通りにすること。
女性→シリア 男性→ケイン
7・購入した奴隷は、身綺麗にさせ平民より少し、上物を与えダンジョンでの”高級なお宝感”を周囲に匂わせること。
8・常に渡したリングを身に着け、可能な限り1人での行動はしないこと。
取り合えずはこの命令を厳守させ、街に向かわせた。結局のところ、5人全員がハーフやクォーターであった事が判ったので”ダンジョンで暮らさないか?”と確認したところ、全員が喜んで飛びついてきて少し驚かされた。
ちなみに渡したリングは、俺特製の一品である。
契約の証・・・<念話> <気配察知> <身体能力上昇・小> <自然回復力UP・小> <物魔結界・弱> 他
上記のようになり、売り払わせた物品の数倍の価値がある。コレは奴隷になった彼ら用に造ったアクセサリーであり、嫁たちより数段下ではあるが国宝に数えられるほどの性能でもある。
形状は男性陣は腕輪型で、女性陣は指輪型である。個々に形状を聞いて造った物なのだが、女性陣は頑として”リングがいい”と言い張ってきたので造った。勿論その指輪は左手の薬指にはまっている。まあ、3人は満足しているようなので気にしないことにした。
街に送り出して1週間。現在のダンジョンには侵入者がいる。5人の冒険者たちは現在、居住区フロアで自身の部屋の準備をしている。彼らは購入した奴隷と違い”俺専属”みたいな地位で他の住人たちより数段良い対応をしている。
購入してきて貰った奴隷は、元・ラグズ王国の王城で仕えていた者たちだ。内訳はこうなった。
元・近衛騎士団長 1
元・騎士 6
元・王宮魔術師 1
元・専属治療師 2
元・王宮メイド 10
他は個人の奴隷で、
性奴隷兼家事奴隷 2
性奴隷兼戦闘奴隷 3
の計20名になる。ちなみに購入してきた奴隷が全て『亜人系』だからだ。ちなみに全て女性である。
ケインとシリアが”性奴隷兼家事奴隷”をアッシュとサーラとアリー”性奴隷兼戦闘奴隷”を購入してきら。
ダンジョンの居住区フロアで王城勤めをしていた、特に元・近衛騎士団長たちは俺を警戒していた。最も、此方には彼らの仕えていた王族の姫姉妹がいる。
彼らは姫姉妹が生きていたことに涙を流した。そして、彼女たちが俺の妻となり、このダンジョンの居住区フロアで新しい王国を築き上げる事を聞き、今度は驚かされた。
「クオン様、我々をその国の礎としてお使いください!」
結構攻略難易度の高そうな、元・近衛騎士団長が率先して切り出してくれた。ルクレシアの話では、「臨機応変で忠誠心の高い男」であると耳打ちされた。
まあ、理解がある方が俺的には有り難いがな・・・。彼ら騎士団には以前より広くなるが、同様の治安維持の活動を続けて貰うつもりだ。
メイドたちの活動は現・4層の王城予定の場所で働いて貰うつもりだ。ただ王城を作成するのは、まだまだ先の話になるので現状では活動する目処が立たないので、居住区の農耕エリアで簡易栽培を行い自身の食料自給を確立してもらうつもりだ。
「クオンよ・・・侵入者はどうするのだ?」
クランドールは、侵入者を放置している現状を心配しているのだ。
「現在の地点は・・・入り口から、10kmくらいか?現状は”湧く湧く君”産のスライムを狩って、変な自信をつけてもらおうか・・・・・・」
左手を振り簡易ディスプレイを表示し、確認していたクオンはそう言った。現在侵入者の対応に当たっているのは、アル・イル・ウルの3匹だ。3匹には”「生かさず殺さず」で対応しろ!”と曖昧な命令をしてみた。
この”曖昧な命令”というのは、彼ら『人格と感情』を持ち得た”特異種”の対応力の確認も兼ねている。正確なところ、”人格”といっていいのかは分からないが(性癖といった方がいいのか?)、対応方法をどの様に出すのかがこれからのダンジョン運営に関わって来るのが明白だからだ。
「御主人様、なぜ侵入者に力を与えるようなことをしているのですか?」
「ローナの意見も最もだが、今回のような”雑魚”は有効に利用しないと勿体ないのさ。俺は新しい称号 <特異なる者> を手に入れて、アルたち”特異種”いわゆる『固有魔物』の発生率が上がった。
しかしだ、彼らがどれ程の知識・知恵・行動を起こせるか知らないと、これから先のモンスター軍の編成に支障をきたす。
ローナやリリィにティナは言葉によって、意思疎通が出きる。しかし生粋のモンスターであるアルたちはそうはいかない」
これは真実である。スライムという種には、言語が存在しない。彼らに意思疎通を行うという考えなどはない。だからこそ”特異種”となり意志を獲得したアルたちのことを深く知る必要がある。
「それに、簡単な罠以外は動作を止めた状態でこの程度の進行になると、排除は簡単だし・・・」
サラリと雑魚発言を咬ますクオン。
ルクレシアたちの王国を滅ぼした軍勢ですら、現在のクオンにとってはそれ程苦戦する相手ではなくなってきている。
「そろそろアルたちが、アタックするみたいだぞ!」
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『出来立てのダンジョンって話は、本当だったんだな!!』
雑魚Aの発言はバカっぽい。
『な~にが”6級以下は入らない方がイイ”だ!!こ~んな楽な迷宮は俺様たち”ドラゴンバスターズ”が攻略してやんぜ!』
雑魚Bはクオンの手加減していることに気付きもせずに、意気揚々とダンジョン内を無警戒に歩いていく。
「こんな雑魚が”6級”な訳ないよな?」
クオンはソファー前に映し出した投影ディスプレイを見ながら、ケインに確認した。
「クオン様、彼らはおそらく”7級”・・・それも最近昇級したばかりだと思います」
対面のソファーに座り、俺も質問に答えてくれる。クオンは最近の彼の行動に対し、ある程度の信頼を持っている。
”ケイン”と言う男は現在20歳で、登録可能な15歳より親友のアッシュと冒険者登録を行ったという。この世界は人類領が増えても、魔物による被害は減らないらしい・・・。
冒険者として登録後、初心者講習でシリアたち3人とチームを組む。その時の安定感より、講習後より正式なパーティーを組む。
5年の冒険者生活で”5級”というのは以外と低い。それは、ほとんどの冒険者は楽して稼ぐ為”依頼達成内容が悪かったり、損耗率が異常に高かったり”してギルド側としての評価が低い傾向に成りやすい。
ケインたちは”3年間を下級冒険者”として堅実に下準備し、さらに”2年間を6級”として実力を着けてきた。依頼内容にギルド側は満足し、顧客の覚えも良いパーティーとして周囲に認知されてきている。
今回の冒険者は登録1年で”6級”に昇級したので『自分たちの方が才能ある』と誤認したマヌケだ。そうクオンは認識した。
”好きにさせてみるか?”とクオンは考えた。
「アル・イル・ウル好きに料理しろ。身の程知らずをたっぷりと後悔させてやれ!」
アルたちから”了解”意識を感じ取った。このことだけでも、今回の実験が成功したと言える。
『何でぇ・・・またスライムかよ・・・・・・雑魚が』
アルが雑魚Bの前に姿を見せた。この言葉に対し心の中で「お前のほ方が雑魚だ!」とクオンとケインは叫んだ。
『今度はワイがやりましょ』
変な方言の魔法使い?が名乗り出た。
『\$&¥^@$\^%?+&・・・』
詠唱らしいモノを唱えている魔法使い(笑)
10秒が過ぎても、まだ発動には程遠い。
「御主人様、侵入者はどうなりました?」
タイミング良くサーラが特訓から帰ってきた。
「サーラは詠唱について詳しいか?」
本職の魔法使いに聞いてみた。
「魔法使いとして未熟の身ですが、判る範囲でしたら・・・・・・」
「詠唱は”独自詠唱”のみになるのか?」
この質問に対しての答えは、その通りだった。クオンの使う魔法はほとんどが独自詠唱である以上、クオンの中では”あのバカは格好つけ”という認識になった。
『わたしの役割がないのは、有り難いのか、残念がるべきなのか・・・』
雑魚Cと雑魚Dに彼らが決まった瞬間”ドラゴンバスターズ”と言っていた彼らの名称は、”雑魚メン”とクオンの心の中で決まった。
現状は、アルが雑魚メンの注意を引いている。イルとウルは雑魚メンの背後に回っている。
『燃え尽きろ!爆炎』
どう見ても、俺の”ファイヤーボール”より弱い。強さは・・・”灯火”と同じくらいだろう。なぜこれほどの”差”が生まれているのだろうか?
魔法に関する、興味は尽きない。
『やったか?』
アルは雑魚Cの目の前から消えた。消滅したわけではない。アルは炎が当たる瞬間に地面の中に、回避していたので消えたように雑魚Cには見えたのだろう。
『ギヤァァァ!!』
雑魚Dの声がディスプレイより聞こえる。とても不快になる事を発見したクオンである。雑魚Dが悲鳴を上げた原因は、イルによる天井からの”ダイブアタック”で脳天にダメージを与えたのだ。
『ヒギィィ!!』
斥候役と思わしき雑魚Bにウルが攻撃を仕掛けた。攻撃箇所は”金的”で、俺とケインは恐怖体験をした気になった。
終始スライム側の優勢であった。侵入者を混乱に陥れ、1人づつ処理してゆく。アルが雑魚Aの注意を引きながら攻撃を加え、少しづつ体力を奪う。
「クオン様、スライムたちの相手には、些か弱すぎたようですね」
「そうだな。アルたちの認識力の確認を出来ただけd・・・・・・!??」
その時、クオンの直感に何かが働きかけてきた気がした。それはこのダンジョンのモンスターにとっては、初めての強者である。
「アル・イル・ウル、お遊びの時間は終わりだ。早急に始末して所定位置に戻れ!」
突然態度の豹変したクオンに驚く面々。ケインの脳裏にとある事柄が浮かんだ。
「クオン様!もしかして・・・”4級”以上の冒険者ですか!?」
いち早くその可能性に気付いたのは、ケインであった。いくら何でもいきなり”4級”は来ないと思っていたが、ダンジョンクリエイトで準備は進めてきていた。
クオンは、新たな侵入者の強さを感じたときには”迷いの森”の効果を発動させていた。ちなみに、森には沢山の”天然魔物”が多く生息している。
「どうやら、新しい侵入者が境界線を越えたらしい」
クオンの言葉と同じタイミングで、雑魚メンの処理が終わった。
ディスプレイに映ったのは、フルフェイスに全身鎧を着た『黒騎士』と言わんばかりの姿をしていた。
「何だコレは・・・。こんな状態でダンジョンに来るなんて正気なのか?」
ケインはディスプレイに映る黒騎士を見ていてこう呟いた。
「『黒騎士ヴェル』獣人に匹敵する身体能力を持っていると言われている冒険者です」
クオンとケインの両名の黒騎士を見る目は、正反対であった。クオンは『素材』として、ケインは『自身より強い強者』として注目する。最初の難敵が訪れた。
「さあ、パーティーを始めようか!」
クオンの声が居間に響いた。
今章最強の敵が現れました。
この章も、数話で終わる予定になります。
誤字・脱字がありましたら、連絡をよろしくお願いします。
次回の更新は5月25日の予定です。