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ダブル・サイド  作者: 四宮 皇季
第三章 ダンジョンと少女たち
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5話 ダンジョンの一日 後編

 明日からGWが始まります。仕事の方も忙しくなりますが、可能な限り更新していきたいです。

 ローナに対する説明の難しさに難儀するクオン。今までにこれほどの敵に出会った試しはない。


 「?????????」


 属性に関することを教えているのだが、ななかなか理解してくれない・・・(´;ω;`)

 魔法以外のことには十分な理解力を示すだけに残念で仕方ない。


 「・・・ローナ、キミの属性体質は『光』と覚えといてくれ。ティナの属性体質は現状『光』に属するから・・・知っているだろうが”闇の浸食魔法”には滅法弱いからな?」


 「はい。重々承知しております。それで、私とローナの属性体質は”闇属性”の魔法は覚えられないのですか?」


 ティナは属性体質(こんなこと)を初めて知ったのだろう。


 「属性体質は何かというと”魔法に対する親和性”で、どれだけその属性の術を”覚えやすい”かになるんだ。多分ほとんどの人は知らないまま一生を終えるんじゃないのかな?」


 「この言葉を知らなくて当然だし」とクオンはティナに笑いかけた。実質こんな事を調べるのは”よほど暇な変人”くらいだろう。クオンが知った理由自体が”たまたま・なんとなく”である。


 「だからティナもローナも”闇魔法”覚えられるが、進歩が”光魔法に比べ遅い”から時間がかかる」


 「どのくらいの”差”あるのでしょうか?」


 「ハッキリとは言えないが『光魔法を100回』使うとLVが1つ上がるとしたら、『闇魔法は800回』使わないと上がらないと言う感じになると思う。

 ただ”属性体質”は最近、俺の気付いたモノだから現状は手探り状態になると思う」


 「私とローナには”闇魔法”を極めることは不可能だと言うわけですね?」


 その言葉にクオンは笑って答えた。


 「現状は『ローナとリリィは不老』だから、時間があればどの魔法でも極められる(・ ・ ・ ・ ・)。無論、ティナの”肉体”を準備できたら一緒に『不老長寿』にして貰うつもりだ」


 そのことを言っているクオンの心境は、自身と他人の時間の違いに悩んでいた。どうしても”不老長寿の自分”と”寿命が限られた他人”ではどれほど愛しても(・ ・ ・ ・)先に逝く(・ ・ ・ ・)相手を看取らなくてはいけない。

 クオンは”絶対無敵”ではない。自身の心が”脆く弱い”ことを知っているからこそ、この世界で作る”初めての家族”には隣にいて支えて欲しいという想いもある。


 「今は光魔法を中心に魔法を覚えていこうと考えている。ただローナ自身は魔法が苦手な様だから”身体強化魔法”がある<補助魔法>を覚えて貰うつもりだ。

 その間にティナの魔法の見直しを行おうと想う。イメージを”早く・正確”に描いた上で発動できるようにしようと思う」


 クランドールから教わって実感した『魔法の基礎のイメージ』の重要性。これに関して地球での『化学知識』が役に立った。それをティナが理解したとき”ラグドリーズで最強の魔法使い”になるだろう。クオン?現状で最凶の魔法使いです・・・なにか?


 「イメージとは”瞑想”ですか?」


 「ティナ姉”瞑想”ってなに?」


 ローナに与えた知識の中に組み込んだはずだが?クオンはそう思いながらティナの説明を聞いていた。ティナの説明が終わった後、クオンの特訓の説明をした。


 「俺の言っているイメージ訓練は”原理からの理解”になる。『火は何故、燃えるのか』『水は何故、液状で流れるのか』そう言った君たちが”意識しないこと”をきちんと理解する事で、より強くイメージが固まる。

 例えばこれとか・・・『蒼炎』!!」


 無詠唱で俺は魔法を発動させた。右手に”蒼い炎”が灯っている。この世界に住人にはこの様なことを出来る人はいない。現時点では俺とトワくらいだろう。

 理由は簡単で”火だから燃えて当然(・ ・ ・ ・ ・)”と言う考え方が原因だ。今回の”火”に関しては『空気の供給量』を増やした結果になる。もう一つ例を上げるとやはり『水』だろう。水の派生系の『氷系(アイス)』と『霧系(ミスト)』がそうだ。共に同じ水の魔法なのだがこの世界(ヴェラリーズ)の魔法使いはそれを”別々のモノ”として扱う。それは”水の三原則”を知らないからだ。


 「クオン様・・・何故その火は”蒼い”のですか?私は聞いたことがありません・・・・・・」


 「聞いたことがなくて当然だろ・・・。この世界の(ヴェラリーズ)の住人は”知ろうとしない”んだ。ティナには『火が燃える理由』が分かるか?」


 この質問の答えは予想通り「火だから燃える」と言う端的なものだった。


 「その認識だから”火は赤いもの”と言うイメージになり、それ以外のものを求めなくなるんだ。

 火が燃えるには”燃料と酸素(空気)”が必要なんだ。『燃料はマナ』であり、そこに『空気を送り込む』とマナに宿った火の力が強くなる。一度やってみよう」


 俺はローナを隣に座らせ、正面にティナを座らせて体験させた。


 「そうだな・・・詠唱は『火の精よ 我が魔力を糧とし 風の力を取り込み 更なる力となれ 『灯火(トーチ)』』」


 ローナの手に合わせた手から魔力を流し込み術を完成させる。初めて流れる魔力の奔流に「うぅ・・・ん」と、何故か色っぽい声を出した。

 ローナの指先には”小さな蒼い火”が灯っている。最初は艶っぽい目で入れを見ていたローナだが、自身の指に灯った”蒼い火”を輝く瞳で見つめている。好奇心旺盛で良いことだ。


 「ティナも俺がさっきした詠唱で試してみてくれ。その際”指先の火に風が流れ込む”様にイメージしてくれ」


 クオンの指示に従いティナは詠唱する。


 「『火の精よ 我が魔力を糧とし 風の力を取り込み 更なる力となれ 『灯火(トーチ)』!」


 クオンに言われたように風が火に向かうイメージを描いた。ティナの指には”オレンジ色の火”が灯っていた。その火を見たティナは興奮している。


 「クオン様!火が”オレンジ色”になってます!!」


 そんなティナを微笑ましそうにクオンは見ている。そんなティナの頭を<魔力操作>を使い撫でてやる。


 「”オレンジ色”なのは、少し酸素(空気)が足りないのだろう。イメージの段階でもう少し風を吹き込めば”蒼く”なるはずだ」


 面白そうにしているティナを見ているクオンの隣では、ローナが一人で魔法の発動をしている。このまま一人で練習させるのは不安が大きいのでつきっきりで指導する。


 [クオンは 称号(ピュリア) <教育者> を入手した]


 新しく手に入れたピュリアのお陰で、二人に教えるのが少し簡単になった。夕飯の時間まで魔法の練習を行った。結構有意義な時間だった。



 □■□■□■□■□■□■



 夕飯が終わり、ティナとローナの二人は自室でやりたいことをする様に言っうと、俺は姫姉妹の休んでいる部屋の扉の前に来た。そろそろ、意志は決まったのだろうか?扉をノックする。


 「俺だ。答えを聞きに来た」


 しばらく待っていると、扉の向こうから返事が帰ってきた。


 「お入りください」


 そう言って扉を開けたのは”メイド長”のミネットだった。ミネットに促されるまま、寝室に入る。


 「ルクレシア姫にルルミナ姫、あなた方の意志は決まったか?」


 様子見などなく直球で聞くクオンに、後ろに居たクランドールは驚いていた。イジケていたクランドールは、クオンの言葉(セリフ)で気持ちを持ち直していた。そんなクランドールに少々呆れたクオンだったが・・・・・・。


 「はい。私たち姉妹はクオン様の元に下ります」


 「下るって、戦争じゃないんだぞ?捕虜にしたいわけじゃないんだ」


 それはクオンの本音である。眷族として人生を変えてしまうことはまだ飲み込めても、”自由のなさそうな”捕虜というものに良い感情などはない。


 「まあまあクオンよ、”下る”といっても”統治下”に入るだけだろ?そこから先はお主次第だ」


 クランドールの言うことも一理あるので、クオンはそれ以上話を蒸し返したりはしなかった。


 「クオン様・・配下に入るのは私たち姉妹とミネットになります。ココに関しては今しばらくの時間をいただきたく思います」


 その話を聞いている最中寝室のクローゼットから「んんん・・・」と響いてきた気がした。だがクオンは”聞かなかったこと”にした。


 「わかった。3人には悪いがちょっと確認して欲しいことがある。元ラグズ国民の仮設住宅についてだ」


 「確認で御座いますね?お願いいたします」


 俺は3人を引き連れ、4階層の居住区に向かったそこには等間隔で小部屋が並んでいる。小部屋(5m×5m)の50DP×100=5000DPを消費した。布団とかは無くて残念ながら毛布だけだが、本来の難民は毛布はおろか”安全な場所”自体がないのが普通だ。だからこそ今回のクオンからの支援・・・と呼べるかは謎だが、かなり手厚いものといえる。


 「ザッと見て貰ったが、基本的に一人一部屋の予定で用意した。ただ、回収する人数次第では2~3人で生活して貰うつもりだ」


 そんなクオンの傍らでは呆気にとられている姫姉妹とミネットの姿があった。この状況は”クオンと姫姉妹たちの認識の違い”が原因である。

 クオンとしては『この程度(・ ・ ・ ・)』であっても、姫姉妹たちにとっては『これ程も(・ ・ ・ ・)』となり、現状何も出来ていない彼女たちからすれば”自分自身”しか対価(・ ・)となるものはない。


 「クオン様・・・これ程のご配慮、感謝致します。ですが、今の私たちではお返しできるものがありません・・・・・・」


 ルクレシア姫はそう言っているが、クオンとしては『家族であり、妻の一人となる女性への誠意』でしかない。無論クオンの行動の一因に、『性欲』が無かったとは男として言わない。


 「ルクレシア姫・・・いや、ルクレシアが気にすることではない。コレは俺が持ち出した”契約に対する対価”だ。

 きちんと話したと思うが、ルルミナもミネットもこれから先、どれほどの時間かわからないが『数千年を妻の一人(・ ・ ・ ・)』として生きていくんだ。酷い言い方になるが、”妻のお前たちとこれから生まれてくる子どもたち(・ ・ ・ ・ ・)”と笑顔で過ごしたいからな・・・・・・」


 そう言うクオンの顔は朱くなっている。それを見た姫姉妹はそっとクオンの腕を抱きしめた。2人の顔も同じ様に朱に染まっている。もしかすると”将来生まれる子どもたちのこと”を思い浮かべているのかもしれない。ちなみにミネットも引っ付いていないだけで同じ顔をしている。


 「家に帰るか?」


 「「「はい!!」」


 穏やかな空気のままマスタールールに4人で帰るのだった。


 ちなみにクランドールは物影からクオンたちを見ていた。その顔は”おじいちゃん”のように感じたとローナ(・ ・ ・)はクオンに話し、それを聞いたクランドールは涙を流したと言う。嬉し泣きか?それは本人にしかわからない・・・こともなかったみたいだ。

 結構それからローナのことを可愛がっている様に感じた。正しく”爺バカ”と言える。


 「スーハー・・・今から、”眷族契約の儀”を行う。対象はルクレシア・ルルミナ・ミネットの3名だ。クランドールは3人の『眷族化』が完了したら、<不老長寿>のスキル付与を頼む」


 クオンは一度深呼吸をすると、作業内容の確認をした。3人の女性たちは頷き返した。


 「任せてくれ・・・ワシの出来る”唯一の世界干渉”だ」


 本来この世界(ヴェラリーズ)に不老長寿の生命体はいない。居ても”不老のエルフ”と”長寿のドワーフ”だ。この2種族には共通点がある。それは『死からは逃れられない』運命にあることで、クランドールの与える<不老長寿>がどれほどのぶっ飛んだモノ(チート)であるかわかるだろう。

 この時点でもし”ココが<不老長寿>になったら”ずっと幼いままである。(内面は除く)



 眷族化の光が3人を包んだら、直ぐに別の光が包み込んだ。姫姉妹たちの魂に契約が刻まれた瞬間であり、これから何度も見る光景になる。


 「これで全て完了だ。あとは若い者の時間だ・・・・・・」


 そんなことを言ってクランドールはマスタールームから出て行った。4人の顔が朱いのは仕方のないことなのだろう。

 今夜のことあった事はヒミツである。



 ■□■□■□■□■□■□


 皆が寝静まった深夜、とある空間にクオンとティナは居た。そこはクオンが<夢幻異信(ファーリース)>で作り出した異空間であった。


 「トワ様は大丈夫でしょうか?」


 心配そうにするティナの頭を撫でてクオンは言う。


 「もしまだ・・・捕らわれているなら、俺たちが助けてやればいいさ!」


 そうこの後、トワとクリスティナの両名は最後の瞬間以来の再会を果たす。

 投稿分の各話の修正などを行っています。

 誤字・脱字がありましたら連絡をお願いいたします。


 次回の更新は5月5日を予定しています。

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