7話 昼食とやっとでたよダンジョンの話し
次回の更新で第2章も終わりになります。
クリシア夫人の言葉から始まった食事会。
かっこよく言ったが、詰まるところただの昼食だが。
「それほどの犠牲者がいたのか・・・・・・(´・ω・`)」
食事中に話すことではないと言ったのだが、ベルフォード氏に押し切られてしまいゴブリンの巣の光景を話すことになってしまった。
捕らわれた女性のことを聞いたベルフォード氏の悲しみはなんと言えばよいのだろうか・・・・・・。
「捕まっていたのは、20人ほどで”精神が崩壊していたのは過半数の15人”くらいだった。精神的に無事だった1人がエリスティナ嬢だ」
クロードが息を飲んだのを感じながら・・・・・・
「無事とは言っても、彼女を含め全員”死ぬこと”を選んだ。エリスティナ嬢に関しては、”ゴブリンキングを宿されてしまった為に・・・それ以外の選択がなかった」
俺はまた重い気持ちになる。直ぐには乗り越えられないと思っているが流石にキツい。
今の所、悪夢に魘されることが無いのが救いだろう。この世界に慣れ、気が抜けた時・・一気にクルのかもしれない。それまでに、少しでも前に進みたい。
「俺の行動を"偽善"と言う冒険者は多いだろう。それでも、連れ帰ったに後悔や恥じる気はない」
実の所本人は心の中で思っているつもりだが、バッチリ言葉に出ている。それを聞いたクーリッシュ家は何やら感動しているようだ。
「トワ、口から出ているぞ・・・・・・」
クロードが呆れた口調で話しかけてきた。トワの表情は変わらないが、”やっちまったぜΣ( ̄□ ̄)!”である。時たまこの男はこんな事をする。
「感心感心。トワ君の様な若者が増えてくれると良いんだがね(。・∀・。)ノ」
相も変わらずテンションが高い。実はただ気付いたら言っていたのが正解だ。
「昨日の今日で、親族の方は来れるのか?」
「基本的に、"貴族の葬儀は3ヶ月後に行う"と貴族法で国家から決められているんだ」
俺の疑問に答えてれたのはクロードだった。
「それは情報の伝達速度と、移動時間が関係するんだよな?」
この世界の移動手段は基本的に徒歩か馬車になる。極一部の王侯貴族が”転移陣のある設備”を持っているらしい。
この国には王城にのみ設置されているが、コスト面で存亡の関わる危機以外は使わないらしい。
「王都と辺境領だと馬車でも片道40日くらい移動時間が必要なのだよ(;・д・)」
片道40日とは恐れ入った。安全性や確実性を取るなら2ヶ月は余裕を持った方がいいようだ。
今はまだランクが足りず受けられない依頼も、その内受けるようになるのだろう。その時に失敗しないように覚えておこうと心に決めた。
「トワは今回の件も含め、”7級”になったんだよな?」
「ああ。”緊急時の強制召集”のおまけ付きだがな・・・・・・」
「話を聞く限りじゃ当然だろうね(ゝω・)
聞くところじゃ生まれる前とはいえ”ゴブリンキングを殺したのだろう?天災級のモンスターを殺した恩恵は伊達じゃないから、ギルドとしても捨て置け無いのさ(*ゝω・*)ノ
クーリッシュ家としても欲しいくらいだしねヾ(o´∀`o)ノ」
貴族としての本音までいわれた。普通の冒険者なら口から手が出るほどに好条件だろう。俺としては、別にと言うかどうでもいいことであり、行動の制限の方が煩わしい。
「他の冒険者なら飛びつくのだろうが、俺としては目的が有るから勘弁だな・・・・・・」
キッパリと言うのは、トワの美点であろう。相手のことは考えていないけど・・・。
「目的とはダンジョンか?」
「それも目的の一つになる。大まかな目的の一つとしては、各国を巡り自分の目で世界を見ることだ・・・・・・そして何時か最高のメンバーで史に名を残すことだ」
壮大に聞こえるだろうが、トワにとっては不可能ではない。アテンドールからのチートは伊達ではない。
「夢が大きいことは良いことだ(*´ω`*)
しかし、貴族と仲良くなる方がやり易くないのかい?」
ベルフォート氏の言うことは理解しているが、それ以上のマイナスをトワは感じてしまっているのだ。人は善意で何かを行わない。必ず見返りを期待しているものだ。トワが自身の行動を偽善と言ったのにも、きちんとした理由だってあったのだ。
"リスク&リターン"これが両者を取り持っている。ただトワの場合貴族からの支援より貴族から求められる対価の方が多くなるのがトワ自身には分かるのだ。
「個人として仲良くする分に対しては問題ない。ただ俺の場合、貴族側のリスクがかなり低くならないか?」
「なるほど。トワは相手側が一方的に有利になるのを危惧しているわけか・・・・・・」
クロードのセリフは、トワの危惧していたことを言い当てた。最もトワ自身、貴族相手に交渉する気は最初からないのだ。だからこそこの事をハッキリと話しているわけだ。
「ベル様にシア様、リリスティナ嬢に対して失礼だと思うが『貴族という交渉が得意で腹黒さを出さない人種』を信じるには俺は世間知らず過ぎる」
このトワの言葉に爆笑が起きたのは必然か?爆笑したのはベルフォート氏である。
「にゃハハハハh・・・・・・(≧▽≦)
そんなことを”気にするトワ君を世間知らず”とは言わないYoヾ(≧∇≦)」
かなりツボにハマったらしい。お腹を抱きしめて笑っている。涙目になりながら、トワを見ている。
クリシア夫人は「あらあら」と笑っている。本当に似た者夫婦だ。
「よくそんなことを言えたね・・・・・・」
苦笑しているクロードに対し、トワはハッキリと言い切った。
「いくつか理由があるけど、一番の理由は”この家の衛兵や、街にいる一般兵では俺に危機感を与えられない”と言うのが理由だな」
ハッキリと”相手じゃない宣言?”をされてしまったクロードたち兵士。
「”一般兵”と区切ったにはどうしてだ?」
己の”武”に少なからず自信を持っている以上、トワの真意は知りたい。
「現にクロードは”俺を殺せるか?”」
「何とも言えん・・・・・・」
クロードはそう返されて返事に困ったが、トワに勝てるかは分からない。
現在トワのLVは40を越え、オールアベレージ”A-”のステータスになる。アテンドールのチートは既に”1級冒険者”の高みにステータス上はトワを押し上げていた。
現状のトワは、戦闘経験こそ乏しいが”恩恵”と元々持っていた”規格外さ”により、常人の数倍に及ぶ”戦感”を養ってきている。時間が経つほどトワは強くなる。
「なるほど・・・それがトワ君の”強み”と言うわけだね(-ω-;)・・・それが本当なら恐いね」
「別に最初から敵対はしないさ。現にクロードたち姉弟やクーリッシュ家の面々は”気に入っているんだ」
その言葉を聞いて一番安心したのはベルフォート氏であろう。出会い頭から”貴族”としてではなく、”家族を連れ帰ってくれた恩人”としてトワに接していたことが此処でプラスに働いていた。
「確かにトワが問題に思うような貴族だっている。私もこの国に連なる者の一人だし、姉さんも同じだからな・・・・・・」
クロードの言葉に”言いたいこと”があると感じ取れたが、経験上面倒事だと感じ取れた。
「トワ・・・もし、姉さんが”助けを求めた時”は手を貸して貰うことは出来るのか?」
その質問に正しい答えなどない。トワは少し考えてからこう答えた。
「ハッキリ言って”状況次第”だな。モンスターの討伐くらいなら、すぐに返事して答えるが・・・それが”二人の実家”が関わってきたら返答は難しいな」
二人の実家・・・この国の”王族”が関わってくることになる。十年後なら簡単に答えられそうだが、現状では問題しかない。
本音を言うなら『関わりたくない』であるが、リヴィエルナ嬢が心の底から助けを求めてきた時『断れる自信がない』のが厄介だ。
「今はその答えで満足だ。私たちの”血”故に姉さんを”国の為の政略結婚”としなくてはいけない。それだけ”姉さんには利用価値がある”のさ」
吐き気がするが”王家の常”である。国王とは”国を統べる王でありながら、国の奴隷”であるのが真実であり、国王は”王=奴隷”と言うのではないか・・・それがトワの考えになる。
「特権階級の義務の一部になるが、平民階層には理解しがたいモノなのかもね・・・・・・(*´д`*)」
「ベル様には悪いけど・・・『ハッキリ言って虫唾が走る』それ以外に言葉はないかな?」
本当に不貞不貞しい態度である。本来なら護衛の兵士などが取り押さえるだろうが、トワに向かう様子はない。
「トワが何かしているのか?」
クロードが護衛士を指差す。衛士の顔色は悪い。
「それか?”殺気”を放っている」
淡々と語るトワに、寒気を感じたクロードである。しかし、自身は何も感じていないことを不思議に思った。
「対象の区別くらいは、出来るだろ?」
その言葉に恐ろしくなった。指向性のある殺気を使う事など姉さんにも出来ない。リヴィエルナ嬢の強さは”近衛騎士”クラスの強さになる。この国の近衛騎士は少数精鋭を良しとしているので全員で100人しかいない。
その100人の近衛騎士に次ぐ実力を持っているのだ。その姉ですら出来ないことを平然と行うトワの異常性をまざまざと見せ付けられた。
「トワが私たちのことを、気に入っていると言ってくれたことがこれ程の安堵になるとはな・・・・・・」
「確かにね・・・トワ君の言葉が本当ならこれ以上に心強いことはないね」
ベルフォート氏は大きく溜め息を吐いた。それほどまで、酷いことをしたのだろうか?
「それほどのことか?」
そうとしか言えなかった。本人に自覚は全くなかった。
「トワはどれくらいのことをしたのか、理解していないのだな・・・・・・」
呆れ顔でクロードに言われた。
「この国でも極少数しか使えないらしいんだよ」
ベルフォート氏の耳と尻尾はペタンとタレ下がっている。
「まあそれは横に置いといて・・・・・・」
「置かない・・・。彼らの拘束を解いてくれないか?」
クロードの言葉に、忘れていたことを思い出した。トワは放っていた殺気を消した。
護衛士の彼らは、『ゼイゼイ』と呼吸を乱していた。鍛練が足りないとは言わないでやって欲しい。
「ダンジョンについて、幾つか話を聞かせてくれないか?」
「ダンジョンの場所は”王都”から、東に向かって3日の距離にある”カクスの町”のギルドが管理しているものがあるぞ。無論フィーレンにもあって。数は2コあり”一つ目は西に『2つの鐘半』の距離”にあるのと、”もう一つは南に『5つの鐘』の距離”にある」
「ワシも知っているぞ(*ゝω・*)ノ
『マリスの迷宮』と『カカルの遺跡』でよかったかな?
『マリスの迷宮』は地下に潜るタイプで、『カカルの遺跡』は上下に移動するタイプだったかな?」
ベルフォート氏が元気よく答えてくれた。
「しかし、フィーレンのギルドが2つのダンジョンを管理していたのは好都合だな」
「私の知っている範囲だと、『マリスの迷宮』は地下30階まで攻略されてたと思う。
『カカルの遺跡』はここ数ヵ月で発見された新造のダンジョンと言える」
クロードの話によると、ダンジョンのタイプはいくつかの種類に別れているらしい。
『マリスの迷宮』のような”深層型”、『カカルの遺跡』のような”建造物型”、横に広がる”平面広域型”、塔のように上る”登塔型”以外のダンジョンも存在するらしい。
「結構ダンジョンのタイプがあるんだな。当分の間探索のは、『マリスの迷宮』の方かな?」
「”固定型ダンジョン”になるから、初心者には安心して探索出来るから人気は高いぞ。仕事中に聞いた話によると、各フロアに『小ボス』がいて、5フロア毎に『中ボス』、10フロア毎に『大ボス』が居るらしい。
私も話で聞いただけだから、詳しいことはギルドに聞いて欲しい」
「トワ君がダンジョンに潜って何かの”魔導器”を見つけたら、持ってきてくれないか?
ワシはこう見えても、”魔導器”には詳しい。トワ君が要らないものであったら買い取らせて欲しい。もちろん買い取り金額は”ギルド価格”より高額買い取りさせて貰うから(≧▽≦)」
「知っていると思うが、”魔導器”は『武器型』『防具型』『アクセサリー型』とあり、そのままの言い方だが『日用品型』の4種類に大別される。ただ魔導器自体、かなり希少な部類になるからあまり無理はしないでくれよ?」
この日は、食事会とダンジョンの話で夜遅くまで話してしまった。
実際にダンジョンに潜れるようになるのは、3日後になったのは仕方ないのかもしれない?
お読みいただき有り難う御座います。
誤字・脱字有りましたら連絡をお願いします。
次回の更新は3月30日なります。