1話 永久フェブリーズに降り立ち、冒険者になる
今話から第二章になります。
この章の主役はトワになります。
クオン編のようなスキル設定はありません。
4月30日 本文の改稿をしました。
クオンの予想通りにスキルを決めたトワは、アテンドールにフェブリーズに送ってもらった。
「ここがそうなのか?アテンドール」
(「そうだ。現在の位置から北に2時間程歩くと、お主のいる『リーズ王国』の王都”フィーレン”に着く。
念のため、先程教えた”念話”で話してくれるか?」)
(「これでいいか?」) (「問題ないぞ」)
トワ以外の人影は周囲にない。アテンドールに送られる前に聞いた話だと、こっちの世界は『巨大な大陸』一つで、他の大陸はないらしい。船とかの乗り物が苦手なトワとしてはありがたかった。
(「しかし、ヴェラリーズに”刀”が有ったことに感謝だな」)
(「喜んでくれて嬉しいが、ATK10しかない武器で申し訳ない」)
ちなみに、ATK10は初心者の武器としては”異常なほど強い”武器になる。
*初心者の武器
武器:銅の剣or銅の槍 (ATK4~5)
防具:皮の服 (DEF3~4)
皮の盾 (DEF2)
良くてこのレベルの装備になる。お金の無い人だともっと酷い。果物ナイフとか、鉈でモンスターと戦いに行こうとする人もいるとアテンドールから聞いた。
(「無手で送られないだけ、アテンドールには感謝している」)
クオンと違い190cmの身長に、落ち着いた雰囲気の顔。冷酷に思われそうだが、クオンよりは甘く優しい。
現在のトワは刀を振る回し、感触を確かめながら歩いている。
(「魔法はイメージで決まるんだよな?」)
(「そうだ。魔力・気力は慣れの部分が多いから、簡単にはいかんだろうがな。)
クオンと違い、トワの方はアテンドールが着いてきて誰かに見られようものなら、”勇者召喚”された勇者と勘違いされかねない。
勇者認定されようものなら、パーティーメンバーと言う名の、お供がつき、トワの不老長寿がバレかねない。間違いなく、いいように利用されるだけだ。
当然、トワは拒否したいし、アテンドールとしても避けたい事態である。
(「この世界では、ステータスの詳細が見れないのは、本当なのか?」)
クランドールがクオンに与えた『魔眼』には、詳細を見る機能があるがトワの『神眼』にはその機能はない。それは、”もしも”を考えた光と闇の神の保険でもある。
(「その事に関しては、大変申し訳なく思う・・・。”完全鑑定”、”真偽眼”、”刹那の瞳”のみになるが、それだけでもこの世界の住人と比べてもかなりものだ。
ただ、ステータスの詳細が見れない代わり、個人に対する『天職』は分かるようになっている」)
ちなみに、トワのステータスはこうなる。
名前:トワ
性別:男 年齢:17歳
職業:無職
(天職:魔法刀士) (トワの神眼でのみ確認できる)
MP 200/200
STR:F-
VIT:F-
INT:F-
AGL:F-
スキル なし
となる。クオンの見ている詳細との違いは、このようになる。
(「この程度でも、使い様ってことだろ?アイテムや、魔物に関しては詳しくは見れるのか?」)
トワにとっての問題点は、コレに集約されている。情報収集がどのレベルで出来るのかが、これからの冒険者生活に必須となる。基本的な常識は貰っているけど、生きた情報は何より大切だ。
(「そこだけは、お主が望めば詳細を確認できる。普通の鑑定では『名前』とかの簡易情報のみになる。
ただ一つ気をつけて欲しいのは、『普通の鑑定』より少し初期情報が多いだけという点だ」)
(「あまり役立たないんじゃないのか?」)
(「そう思うだろうが、お主に与えた『完全鑑定』住人が使える『鑑定』は、越えられない”差”がある。
鑑定だと、『名前』『職業』『平均ステータス』位だし、アイテムに関しての詳細もほとんどない。『名前』『性能』くらいになる」)
(「以外と少なくないか?」)
(「文明とかが、何度か滅びていると言ったと思うが?」)
クランドールのこと言葉には、呆れが混じっていた。トワの頭の中からそのことは、抜け落ちていた。
(「それってかなりヤバくないか?」)
(「当たり前だ!このままの状態おれば、”生まれるモノより、失うモノの方がどんどん多くなる!”それにラグドリーズで、問題が発生時そうだ。正直・・かなりどころか、このままでは存亡の危機まで短縮してしまうぞ!!」)
殆ど猶予がない言い方だ。最初の説明だと数千年くらいの時間があったはずだが・・・。
(「何かあったのか?」)
(「正直に言うと、『ラグドリーズ』で”勇者召還”の準備が極秘裏に進められているようなのだ!」)
(「ちょい待てよ!そんな事する必要がないくらいに、情勢は人族優勢なんだろ!?まさか・・・」)
暗い声でアテンドールが、肯定した。
(「その通りだ。”今が優勢”だからこそ、人族以外を滅ぼす好機と思ったのだろう。愚かしいことだ・・・」)
気づけば無言で舌打ちしていた。傍目でみると、怖い奴だろう。刀を振り回し、舌打ちするヤツなんて・・・・・・。
(「なら少しでも早く、魔物を減らさないとヤバイな」)
(「済まぬが無理せぬ範囲で、倒し・魂の回帰をさせてくれ!」)
これからのことを話しながら、歩いていたせいか街が見えてきた。
(「街が見えてきたから、一度念話をきるぞ?」)
(「了解だ。ある程度落ち着いたら、連絡をくれ。情報を整理して、お主の今後を話したい」)
(「おう!夜にでも連絡する」)
念話しているうちに、門番の近くまできた。
「王都"フィーレン"にようこそ。身分証の確認をさせてください」
真新しい鎧を着た青年である。歳は少し上くらいに見える。
与えられた知識では、『町』言われる規模以下の村では『ステータスカード』と呼ばれる身分証は持っていない。当然だが、村の場合住人は全て顔見知りだから必要ないだけだ。”コスト面で作っていない”と言うのが現状か。町と村が距離的に何日も移動する以上は仕方がないとなのかもしれない。だから、持ってなくても問題ない。
「すまないが、冒険者になる為に村から出てきたばかりなんだ」
そう言うのが、当たり障りがない。門番の基本作業の中に、『ステータスカード』の作成があるくらいだ。
「わかりました。それでは、『ステータスカード』を作るので着いてきてください」
ステータスカードの作成自体に金銭の発生はない。作成器自体が”アーティファクト”であり、人の手で作り出せないモノであるが、遺跡からかなりの数が出てくるし、カードの作成には当事者の『魔力』を使用しているので、お金を取る必要性自体がない。
「この水晶に手を置いてください。”手”から魔力を放出すれば、カードになります」
握り拳・・・いや、瓜くらいの大きさの水晶に手を置く。アテンドールに教わった”イメージ”を行う。出てきたカードを見ると、
トワ
無職
賞罰なし
と出ていた。かなり簡素だが、必要最低限の情報のみが出ていれば良いのだろう。
「これで問題は、ないかな?」
青年にカードを手渡し確認して貰う。
「問題ないですね。入門の度に提示が必要ですので、なくさないようにしてください」
話によると、賞罰欄に『身分証紛失』と出てしまい、特にギルドでは信用度にも関わるらしい。特に”護衛任務”は受けるに当たり厳しい査定が加わるらしい。”危険区域”や”緊急依頼”時などの例外はあるらしいが。
「ギルドはどこら辺にあるんだ?」
基本的にトワに敬語はない。話せない訳ではないが、本能に忠実で”考えるより感じろ”と地でいく。
「門から真っ直ぐ進むと、『中央広場』があります。教会がある道の反対側の大通りを進んでいただくと、”右手側”に赤い屋根の建物があります。その建物が、”冒険者協会”があります」
「ありがとう。助かったよ」
トワはそう言うと中央広場に向かって歩いていった。中央広場まで歩いて30分くらいかかったが、中世ぐらいだと当たり前の時間だろう。疲れは今のところない。
教会を見つけて思ったが、エンブレムは異世界共通なんだろうか?と思わされた。だって、十字架だし。
「アレが、ギルドなのかな?」
赤い屋根の建物が見えてきた。入り口の扉は”ウエスタンドア?”(両開きで西部モノで出てくる扉)のようだ。お約束とかあるんだろうか?
建物の中に入ってみると、なんか地球の役場のように整然と受付が並んでいて、洗練された感じだ。
とりあえず、受付を眺めると一ヶ所空いていたので、ソコに向かう。
「すまないが、ギルド登録を出来るか?」
少し緊張して、いつもより言葉が少なくなった。だって”美人さん”なんだもん。
「はい、こちらで伺います。身分証はお持ちでしょうか?」
トワが懐から身分証を出す。
「コレで問題ないかな?」
「問題ありません。身分証をそちらの”黒水晶”に差し込んでください」
「どこに差し込むんだ?」と真面目に聞きそうになった。そんな俺は悪くないと思う。
とりあえずカードを”黒水晶”に当ててみた。受付嬢の目が開かれたように思う。カードが黒水晶に吸い込まれていった。なぜかラノベにワンシーンのように感じた。
「身分証の情報を更新中に、ギルドに関する説明を致しますがお聞きになりますか?」
「ほとんど知らないから、すまないが可能な限り詳しく教えてくれるか?」
アテンドールから貰った知識と、現状の状況との違いはあるはずだ。
「それでは少し長くなりますが、ご説明させていただきます。
まず”冒険者協会”の役割は、依頼者と冒険者の”取り次ぎ”になります。ギルドは依頼者より『依頼料』を受けとります。冒険者に支払われる『褒賞金』は、ギルドの”仲介料”を引いた金額になります。ギルドとは、『仕事の斡旋所』と思っていただいて問題ありません。
次に依頼の内容は、『常時依頼』『討伐依頼』『採集依頼』『運送依頼』『護衛依頼』『指名依頼』『緊急依頼』の7種類の依頼があります。
『常時依頼』には”繁殖力の強い”モンスターの討伐と、薬草などの”常に需要のある”採集依頼があります。依頼とありますが、”事後受け付け”できます。
『討伐依頼』は”どこ”で”どんなモンスター”を”何体”討伐するのかが決まっています。稀に”盗賊”の討伐依頼が出るときもあります。こちらは、”先に受け付け”してください。最悪、”褒賞金”が出ません。
『採集依頼』も同様の指定があります。薬草・鉱物といろいろな種類があります。
『運送依頼』は、”手紙”や”荷物”の配達になります。運送依頼以降の依頼は”一定のランク”が必要になります。
『護衛依頼』も同様で、基本としては『商隊の護衛』がメインになります。高ランクの方で『王族に連なる方』の護衛をなさった事例もあります。
『指名依頼』は、直接該当者にお願いする形になります。”住人””ギルド””王国”と様々な依頼があります。
『緊急依頼』は、例えば”街がモンスターの軍勢に襲われている”時に出ます。基本的に”初心者以上の7級”以上の冒険者に強制として出されます。大ケガの場合は断ることが出来ますが、”理由のない辞退”は最悪、登録剥奪があります。もちろん、二度と登録出来ません」
結構一気に話したよ・・・この受付嬢。
「そして皆様に関係ある”ギルドこ階級”に関してですが、こちらは”10~1級”の10段階有り、10級を初心者とし8級で初心者卒業になります。7級で一人前、5級で中級者、3級で一流、1級で超一流となります。
この上には”ギルドが与える特級”と”国家連盟より与える超特級”がありますが此方は『栄誉称号』と言えます」
問題ないか聞かれたので「問題ない」と答えた。
「昇級は10→9級だと、『20P』以降は倍で増えていきます。10級に関しては、”依頼一つで1P”になります。
ポイントについてですが、9級以上は適正級で”2P”上なら3P、一つ下なら1Pの達成ポイントになります。
冒険者は暗黙の了解として、10級こ依頼と9級の依頼は該当者に残すよう、新人の教育を行っております。
8・7・5・3級に上がる際には、『認定試験』を受けていただき合格の後、昇級されます。
10級は『街中の依頼』で、9級は門外に出る『常時依頼』、8級で『討伐依頼』、7級より『護衛依頼』がメインになります」
恐らくその様に区別されているのは、自分の力量を測れない脳筋が結構居たのだろう。
「『常時依頼』の討伐系はどんなモノの討伐になるんだ?」
「戦闘経験を積むためのモノなので、”粘態生物”や”一角魔兎”の討伐がメインになり、スライムなどはとても弱く”子供でも倒せる”強さになります」
「よく聞く『小醜鬼』の討伐だとどうなるんだ?」
「ゴブリンは8級からの依頼になります。基本が4匹の小隊編成で出てきます」
よく小説であるパターンに思える。詳しい話を聞いている内に、ステータスカードが出来た。
説明がほとんどになりますが、よろしくお願いします。
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