8話 クオンの秘密作業と一日の終わり
第一章 久遠ダンジョンマスターになる はこの話で終わりになります。
4月29日 本文の改稿をしました。
クランドールを背に俺は自分の作業に集中する。
「次はアレだな。 <死霊術> <錬成>×99!!」
あの戦場で死んだ女性兵の魂を”990個”用意して九十九御霊にする為の準備に魂を純化融合する。
先程使った<死霊術>はこの為に習得した。
死霊術・・・魂のない肉体や魂そのものを利用する術式。故に、人族には”禁忌指定”されている。この術式だけでは利用することしか出来ない。(CP20)
コレに先程も使った<錬金術>を使用することで、魂の純化を行うが一個の九十九御霊につき”99個”の魂が必要になる。
ちなみに厳選してある。生き残った彼女もそうだが、処女の魂のみ使用している。いくつか理由があるが、俺自身が抱きたくないっての大きい。
真っ当な理由の一つとしては『魂の純度』だろう。処女なら70~75%くらいの純度であるが、非処女だと30~40%くらいまでガクンと下がる。使えないよねこれは・・・・・・。
「ふぅ・・・九十九御霊、99個完成した・・・。MPの残量は8割くらいかな?」
今の俺のMPだと10000くらいは使ったと思う。(本来なら数週間かかります。)
「純度は・・90%か。そんなもんかな?」
本来、生まれたばかりの赤子ぐらいしかない高純度である。色々と規格外のクオンである。
ふと違和感を感じたのでステータスを確認すると、習得可能スキルに<死魂術>が追加され、称号に<魂魄操者> <魂を冒涜するもの>の二つが追加されていた。
死魂術・・・魂を扱うことに特化したスキル。魂に色々と改造を加えられる。<死霊術>の上位特化版。(CP20)
なかなか役に立ちそうな術が手に入った。利用価値はかなり高く、これからも使えるので習得する。
早速、習得した<死魂術>を使う。
「次は九十九御霊を99個・・・<死霊術> <死魂術> <錬成>!!!」
ピュリアの効果が凄まじく、”魂の改造”かかなり簡単にできた。出来上がったのは『九十九仙霊』魂純度は99%にもなる超高純度になる。この魂には俺と同じ”全属性適正”と”魔の才”の二つを魂に刻み込んだ。
*九十九仙霊
全属性適正 魔の才 LVUP時ステータス上昇 忠信 奉仕の心得 家事の才
あと、必要になりそうなものを加えていった結果が上のステータスになる。一応ミネットが出ていっても大丈夫なように考えたつもりだ。この九十九仙霊にこの女の魂を融合させて細工を行えば、裏切ることがほぼない淫魔が手に入る予定だ。
「これで・・・仕上げだ!! <死魂術> <融合>!!」
<死魂術>を使い目の前の美女の魂に、先程錬成した”九十九仙霊”を融合させる。これにより、悪魔にとっては至高の美味となりこの魂の前では、理性など砂の楼閣になる予定だ。
「どうしたんだ?クランドール?」
隣にいるはずなのに、大人しくしているクランドールに声をかけた。何か変なことでもしたのか気になった。
「錬金術にその様な”改造出来ない”はずだが?」
クランドールの言葉にも一理ある。ただ、理解している範囲が違うだけだ。
「クランドールの認識だと<錬金術>は”物体を作り替える”ものだと思ってないか?それは間違いではないが、正解でもないと俺は思うんだ。
俺の考えは『錬金術とは、物体の元素を”組み替え、変化・変質”させる術式』だと思っているんだ。元素に関しては、地球の”化学”の話になるから置いておくけど、”水”を例にすると、『水素』と『酸素』から成り立っているんだ。
地球がそうなら此方はどうなのかと言うと・・・やっぱり二つの元素から成り立っていた。
クランドールも知っていると思うが、『万能源素』と『魔力源素』だ。と言うかこの二つ以外の源素はなかったと言うべきか?」
手持ちのものを幾つか”解析”してみたが、本当に何もなかった。手持ちと言っても剣とか鎧とかになる。あと、回復薬が一個あったのは幸運だった。
「だがそれでは・・全ての物は簡単に複製出来てしまわないか?」
「クランドールの懸念は理解できるが、はっきり言って『不可能!』だ。一番厄介なのが『エーテル』っていう源素さ。
万能源素というだけあって、回復薬なら『回復』という効果が付加されているんだ。その『付加』がかなり厄介者ってわけさ」
クオンは自身で立てた推測を話した。
「スキルの中に『付加』はあるが、両者は効果が全く違うと仮説を立ててみた。スキルの付加は”物体”に対するモノで、エーテルの付加は”エーテルそのもの”に付く、いや”そのものが変わる”のかも知れない。
現時点で、一概にこうだとは言えないと思う。この話もあくまでも『推測』でしかないからな」
クオンの話にクランドールは何故か納得してしまった。実のところ、クランドールも知らないのだ。この世界の詳細を知っているのは創造神のみである。
「そうなると、”エーテルを支配”するものが”世界を制する”といえないか?」
クランドールが最もありえそうなことを、口にした。
「原則として『原住民は知らない』と思うぞ?俺は『化学』の知識が有ったから、『世界の神秘』に辿り着きかけている・・のか?」
「自信はないけどな・・・」とクオンは言ったが、クランドールには真実と思えてしまった。この世界の真実を調べる気はないが、”覚えておいてもいいかも”と考えていた。
「この話はこれで終わりな?永久には教える気はないから、アテンドールには話さなくてもいいと思う。
フェブリーズにいる永久には、時間はあっても”設備”と”お金”が無いと言えるんじゃないか?」
そう言うと、クオンは悪魔召喚の準備に取り掛かった。
「吉と出るか、凶と出るか・・・運試しだ」
数回の深呼吸をして、気持ちを切り替える。右手を魔方陣にかざす。
『異なる流れ 交わらぬ流れ 今一度 その流れを 掛け合わさん』
クオンが詠唱を詠むと、魔力が徐々に高まっていく。
『我が意を持ちて 異なる門を 抉じ開けん』
クランドールは唾を飲み込む。その音が静かな空間に響く。
『我が前に 汝が姿を現せ!! ”悪魔召喚”!!!!』
ビカァ!!っと空間を白い光が、ボスルームを染める。
その中に影が浮かび上がった。
Side:????
私の~目の前に、魔方陣が~現れました~。
「私が、喚ばれた~のでしょうか~?」
のんびりとし過ぎた言葉が、クオンの耳に届いた。
「ああ・・そうだが、お前は生まれてから間もないのか?」
クオンは、若干引きぎみに答えた。
「いいえ~もうすぐ200歳になります~」
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あとで、クランドールに聞いたところ、悪魔の200歳は人族の20歳くらいになるそうだ。契約したら、口調くらいは我慢しなくてはいけないのだろうか?クオンは思い悩んだ。
「その口調を、変えることは出来るか?」
目の前の召還者が私に話しかけてきた。
「このくらいが限度になります~」
あまり変わらない気がするが、最初より我慢出来るのでこれでいいか・・・。
「契約の内容は”俺の作業の補佐と、生活の支援”が役目となる。
一つ、契約期間は『俺が死ぬまで』になる。俺を傷つけることを禁ずる。
一つ、このダンジョン内で生活をしている住人に対して、傷つけることを禁止ずる。
一つ、俺以外の男を”喰うこと”を禁ずる」
召喚した悪魔は一つ一つ確認しながら、クオンの言葉に頷いている。
「契約の対価は、そこにある女の『肉体』と『魂』になる。お前が”契約する”なら、それと俺から個別にお前に”名”を与えよう」
ここで、気になるのは”名”についてだろう。基本としては、この世界に住まうする”魔物・悪魔”には『名前などは無い』ということだ。
名前を持つのは『名前持ち』と言い、普通の個体とは違う扱いになる。名前の有無だけではなく、『能力の違い』が上げられる。一番の違いは固有能力の獲得が上げられる。最も個人?の資質に依存されるそうだが。
「こちらこそお願いします~。これほどの生贄をいただける機会はありませんし~」
どうやら此方の思惑通り、契約行えたようだ。
さて、どの様な名を与えるべきか・・・。
「とりあえず、与える肉体との”親和性”を見てもらえるか?」
幾ら同じ女性の身体でも、肉体と悪魔とのズレは有るはずだ。元々が別個体だからこそ、契約成立時にきちんと確認する必要があるだろう。
「それでは、失礼しまして~」
そう言うと、契約悪魔は美女の肉体に乗り移った。一度『ビクンッ!!』と身体が跳ねたら、瞳が開いた。
「この肉体のスペックは、かなり高い様ですね~。でもこれ、人族の肉体ですよね~?」
当然スペックは高い。本来の持ち主は相応に高レベルだったので、今までのステータスの上昇値の何%かを基礎値に加えたのだ。当然LVは1に戻ったが、同LV帯のステータスは倍以上違うだろう。
「気に入ったようだな。お前の名は”リリィ”だ」
クオンは淡々と言葉を紡ぐ。ただ、平然とした顔の裏では結構な疲労に襲われていた。
初めての”名付け”による魔力の大量消費と、異世界での目に見えない精神的な疲労も多かったのだろう。
「クオン、大丈夫か?」
クランドールが心配そうに、言葉をかけた。
「ああ・・・魔力は、どのくらいの量を一度に消費できるものなのか?」
「そうだな。最大で10~15%がいいところだろう。ほとんどは、5%前後が一度の最大使用量になる。
念の為に言っておくが、15%も使用しようとして、万が一制御に失敗したら、全魔力を一度に放出して『魔力枯渇』を起こして”干からびて”死んでしまうから気を付けるようにな・・・」
クランドールの言葉に頷き、先程の魔力消費量を確認したら『16%』に近かった。下手をしていたら死んでいたのかも知れない。
「結構危険な量を、一度に消費したようだ。16%近かったからヤバイよな?」
「当然だ。今回無事だったのは、『名付け』だったことが理由ではないのか?」
クランドールの推測だが、的外れな意見ではないだろう。名付けであったからこそ、今自分が無事だったと考えた方が逆に”安心かつ、警戒”出来るであろう。運の要素が”ない”とは言わない。次が無事だという保証はどこにもないのだから。
「今回のことを、教訓として気を引き締めよう」
そう言うクオンに、クランドールは頷いた。
「リリィ、身体との親和性はどうだ?」
クオンの言葉に身体を動かしていたリリィは、笑顔で答えた。
「問題はないです~。むしろ、魔界での生活より、快適かもしれないです~」
想定していたより高性能になった肉体に、クオンは驚くと同時に納得をした。今回の召喚のデータが次の召喚に役立つのは元より、契約魔法事態の確認にも役立った。
悪魔召喚は悪魔と言われているモノを呼び出し、契約するだけの代物ではないと感じさせられた・・そう言っても不思議ではない気がする。
「今回の召喚は、リリィで終わりにする。リリィには俺の補佐に加えて、可能なら”悪魔”について教えてくれないか?」
リリィの召喚だけで、俺自身が悪魔に対する知識なさに気づかされた。力だけでない『何か』を、ソレを理解しないと『召喚者』が逆に悪魔に良いように操られそうな気がした。
これから先、幾年月かは分からないが、リリィと他に契約するだろう存在との円滑な生活と、対人?関係を築くのに知識はいくらあってのも問題ない。『知識はかさばらない財産』と、どこかで聞いたことがある。
クオンは大まかな、今後の予定を考える。
「まあ、明日考えるか・・・。姫たちに、風呂のことを教えておくか」
『風呂に入って寝るか』そう言い残し、クオンの一日は終わった。
お読みいただきありがとう御座います。
第一章はこれにて、終幕になります。
次回より、第二章に入ります。
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次回更新は、2月25日の予定になります。