プロローグ・共通部 全ての始まり
1月3日 誤字を修正しました。
教えていただきありがとうございます。
4月10日 本文の改稿・修正をしました。
何も無い空間・・・白一色の白無の部屋。
このままだと発狂するだろうその空間には二人の少年がいた。
雰囲気は全くの正反対だ。彼らを見ている存在と同じように・・・。
「ここは、どこだ?」
パッと見、天然の入ってる少年が言葉を呟く。
「さあな。とりあえずさっき始めたVR-MMOのキャラクターメイクでは無いよな・・・」
眼光が強く、厳しい印象を与える少年が話しかける。
パッと見正反対の印象を与える少年たちの仲は。良さそうに思える。
「楽しみにしていたゲームがこんなのだったら最低を通り越すな・・・」
天然で優しく見える少年は冷たく切って捨てた。
ここで初めて会った人なら不思議に思うのだろう。
「たぶん違うんじゃないのか?こんな空間なんかはバグではすまないだろう?」
理性的な考え方なのだろうか?
少年たちは顔を突き合わせて考えている。
ふっと感じる微かな違和感。眼光の強い少年は天を見回した。
「なぜ浮いている?」
少年の視線の先には天に浮いている人の姿だった。
「一応確認しておきたい・・・。あんたたちは、何者だ?」
白い肌の人物が話しかけてくる。
「想像はつくと思うが、お主たちの感覚で言うなら『神』と言える。正確に言うと少々違うがな」
黒い肌の人物が話す。
「お主らと同じ立ち位置で言うなら『先生』が近いかの」
少年たちより一つ上の立ち位置らしい。
「ゲームで言う”運営”ってやつなのか?」
「もしそうなら、俺たちにどんな用なんだ?」
眼光の強い少年に、恐れと言うようなものはないようだ。
もしくは、思考が追い付いていない可能性も否定できない。
「お主らの世界に”ラノベ”とやらがあるのが調べでわかっておる。
実のところはそれと変わらんとも言える状況が起きてな・・・・・・」
用件がつかめない。
天然っぽい少年が二人組に突っ込む。
「神とやらがラノベを読むのか?」
白い肌の男が慌て出した。何かあるらしい。
「まさか・・・・・・ラノベにうつつを抜かして、ミスを起こし尻拭いとか言わないよな?」
少年の言葉に白い肌の男の肩が跳ねたような気がした。
見かねたのか黒い肌の男が少々あわて気味に口を挟んできた。
「そうではない。説明しやすいようになにか比較対象が無いか調べたのだ」
胡散臭い。いや、嘘臭い。騙す気があるならもう少し内容を捻れと言いたい。
パッと見だがこの二人にはかなり無理難題だろう。
「まあいい。内容を聞かせてくれないか?
それだけだと、内容までは推測できないからな・・・」
奴等の思惑に乗るのは少々癪だが、話が進まないことには状況が進まない上、時間の無駄だ。
「わかった。先に自己紹介をしないか?
ワシは光の神・アテンドール。創造も司っておる」
先程うろたえていた白い肌の男がそう言った。
「ワシは闇の神・クランドールじゃ。破壊も司っておる」
黒い肌の男がそう名乗った。
次はこちらの番だろう。先に名乗ったのは天然っぽい少年だ。
「倉敷 永久、17才になった」
かなり単調な話し方だが、いつものことだ。
「俺は、遠峰 久遠。同じく17才で、永久とは幼馴染みだ」
お互いの自己紹介が終わった。クランドールが二人に話しかけた。
「永久・久遠とは”永遠”に意味を持つ言葉でよかったか?」
「近いと思うが・・・少々違うと思う」
クランドールの言葉をやんわりと否定した。詳しくは知らないし。
アテンドールは髭を撫でている。
「で?話しはなに?」
あくまでマイペースな永久。無神論者である永久に二神に対する優しさはない。
無論、久遠にもない。情け容赦のない二人である。
「ある世界が崩壊の危機にある。今すぐではないが、このままではあと数千年で消滅する」
時間感覚がおかしく感じるのは、時間感覚の違いだろうか?
「そんなに時間があるなら、対処の時間はないか?」
久遠の言葉は、ある意味真実だ。人間の寿命からしたら、有史以来の時間になる。
100年が最長と言っていい人間としては・・・。
「ワシらからすると4~5000年はあっという間といえるのだ」
「現にワシもアテンドールも、150億年位は生きておる」
「気の滅入る話だな」
「悪い冗談と思いたいな」
二人とも引いた。
桁が違うのだ。8桁くらい。
「お主らの年でいうなら150位かの?」
「それでもって・・・長生きレベルじゃない・・・・・・」
最高齢は聞きたくない。景(数字の桁)越えていても不思議ではないのだから。
そんな二人の心境は置き去りにして状況は進む。
「それで、話内容だがワシらが管理する世界に行ってほしいのだ。
その世界は”鏡面世界”と言う。
鏡面と言うように、地図のようにまっ平らな世界が互いに向かい合っている世界だ」
クランドールが空中に映像を投影した。
そこには向かい合うような二枚の世界があった。
その姿は二人に納得させた。
「どのような世界なのかはこの映像で理解しておおらえたと思う。
それで・・・この世界に起ころうとしていることなのだが、この二つの世界が衝突しようとしておるのだ」
「原因は?」
「人口の激変による”世界バランスの崩壊”と言える」
永久の問いにアテンドールが答えた。
アテンドールの話を詳しく聞くと3000年位前から両世界間の”魂バランス”とでもいうものが狂いだしたらしい。
「原因の一つは映像の上の世界”ラグドリーズ”でお主らの世界にある『勇者召喚』を完成させた」
クランドールの言葉にアテンドールの顔は暗くなった。少なからず関わっているようだ。
「・・・確認したい。上の世界死んだ魔物の魂はどうなるんだ?
まさか・・・・・・」
久遠の顔に確信に染まっている。
その顔を見たクランドールは頷いた。
「そのとおりだ久遠。"鏡面"とは”共面”ともいえる。
片側で死んだ魂は、反対側で再び命を授かり生活する」
久遠のやな予感は的中した。さらに最悪の事実が告げられた。
「久遠、お主には予想出来ておるようだな・・・」
沈痛な面もちのアテンドールに頷く。
「確認の為に聞いてくれ。
この世界”鏡面世界”は根幹のシステムとして『魂輪廻の共有化』がある。
良くも悪くも今までは魂の総量が一定で、ほぼ両世界間に差わ生まれなかった」
一度話を区切り、2神と永久を見る。
3人は頷いた。話を進めよう。
「それは先程のアテンドールの『勇者召喚』が、バランス崩壊の引き金となった。
恐らく最初の召喚は偶然の産物だったと思う。
だが其処が人間。1国がそれで利益、もしくは領土拡大を行えたとしたら・・・」
チラリと永久を見ると、次の言葉が分かったのか指を鳴らした。
「なるほど!成功に味をしめたき国もしくは国王は更に利益を求めて、更なる召喚に賭ける。それが更なる加速を生む」
久遠は永久の言葉に『我が意を得たり』と頷いている。
此処までの話を聴いていただけの、クランドールとアテンドールの2神は驚いていた。彼らの世界の創作物を調べてはいたが、これほどまでとは思っていなかったのだ。
「そんなことを他国は許さない。自国には利益がないのだから。
そうなれば後は簡単だ。情報の奪い合いが起き、諜報合戦だ」
久遠と永久の二人の脳裏には同じ光景が浮かんでいたのだ。
その後は、各国がの召喚合戦だ。
ラグドリーズの魔物が激減する→魂が『魂輪廻の共有化』により下の世界に流れる→下の世界で魔物の魂は再誕を受ける→迷宮などの魔物が発生するポイントで迷宮の許容量を超える→大海嘯のようなものが起きた。
「下の世界は魔物で溢れてくる」
「そうなれば下の世界は人が亡くなり、その魂はラグドリーズに転生する。
人と魔物のバランスは、両世界で真逆になる」
そう言うと、久遠と永久の二人は2神を見る。
アテンドールは沈痛な顔で答えた。
「お主らの言う通りじゃ。本来なら世界恒常矯正が働き元に戻るはずだった。
だが、それの発動よりバランス崩壊の方が速かったのだ・・・それ故の現状だ」
「ワシとアテンドールが気付いたのは偶然の産物だった。
2000年ほど前に崩壊の可能性に気付いたのだ」
「それまでの間にどんなことをしたんだ?」
永久が確認を行う。必要なことだ。
「鏡面世界には魔族がおる。
ラグドリーズにいる魔族に能力を与え"魔王"を生まれさせたりした。
下の世界"フェブリーズ"にも"英雄や勇者"を産まれさせたりもした」
「それで失敗してきたってことは鏡面世界の人間の能力値は・・・
両極端になったってことだろう」
「それだけとは思えないが?」
クランドールの話を聞いた久遠はそう判断したが、永久には不思議に思えた。
「人口の激増により文明が進み、技術が次々と産まれた。
人口の激減により文明が滅び、次々と技術が失われた」
「そりゃあ、スペック以前の問題だな」
久遠は切って捨てた。実際にスペック以外に一番の問題がある。
「”魂の総量=魂の可能性”と考えると、ラグドリーズは魂の総量が多い=限界値が高い。
そう考えると、フェブリーズは魂の総量が少ない=限界値が低い。
それで、人と魔物が真逆になるわけだ。永久はどう言うことか分かるか?」
永久は少し考える。
限界値が低い=レベルが高くても能力値が低い。そうなる。
「かなりやばくない?」
「実際その通りだろ。片方が極端に高く、もう片方が極端に低いこれほど酷いものはないだろう」
「久遠の推測はほぼ当たっておる。
それ故に、両者の文明には恐ろしいほどの”差”が生まれている」
クランドールの言葉には悲痛さがある。
この2神は反対のモノを司っているが、仲は良さそうだし。
「話の内容は理解したが、俺たちの寿命は100年くらいだぞ?」
「ソコは理解しておる。
ワシらの頼みを聞いてもらえるなら、相応の特典を付ける」
アテンドールはどこからともなく杖を取り出し胸を張った。
次回更新は、1月5日の予定です。