帰宅と事実とまさかの展開
「はぁ…死ぬかと思った…」
俺はボロボロになりながら最後に掃除をした応接間の床に寝転がっていた。
「小僧、生きているか?」
フレデリックさんは俺に水を差しだしてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「全く、若いくせにこの程度で休むとは…軟弱だな」
いや、フレデリックさんと比べられても…と言ってしまいたいが…
言ったらどうなるかの予想は大体つくので心の奥にしまっておこう。
俺はもらった水を一気に飲み干す。
「あら、掃除の方は終わったようですね?」
そこには花宮の姿があった。
「ああ、何とか…」
「ふふっ、お疲れさまでした」
「ホントにな、まさかこんなにでかい家の掃除をすることになるとは思わなかったよ」
まさか昼飯の代償がこんなに大変なものになるとは思わなかった。
「あら、もうこんなお時間ですね」
「え?」
さっきまで必死に掃除をしていたために時間を全く見ていなかった。
確認すると時計の針はもうすぐ8時を指そうとしていた。
「もうこんな時間か、俺そろそろ帰らせてもらうよ」
「まあ待て小僧」
「はい?」
帰ろうとしたところをフレデリックさんに呼び止められる。
「帰るのならば車で送って行ってやろう」
「え?いいんですか?」
「よろしいですかな?お嬢様」
「ええ、というより元よりフレデリックに送って頂こうと思っていましたから」
「そうか…ありがとう」
「いえいえ」
花宮は微笑みながらそう言った。
「では車を取ってまいります故少々お待ちを…」
そう言うとフレデリックさんは目にも止まらぬ速さで走り去ってしまった。
「あの人…ホントにすごいな…」
「ええ、他にも執事はいますけどほとんどのことはフレデリック一人で事足りてしまいますから」
「………」
もはや言葉も出ない…
「鈴河さん」
「ん?」
花宮は突然俺の方を向いていつも通りの微笑みを浮かべて話しかけてきた。
「鈴河さんは私たちの学校に現在いる唯一の男性です」
「うん?…そうだな」
「鈴河さんを狙う皆さんはどの方も大企業の娘さんだったりします」
「うん」
「ご自身が狙われている理由はご存知ですか?」
「いや…政略結婚をさせられるのが嫌で俺を狙ってるって聞いたことがあるけど…」
「そうです、ですが誰しもがそうではありません」
「え?」
「本当にあなたのことを狙っている方々もいらっしゃるのですよ」
…え?マジで?え?え?この俺を?
本気で狙いに来てる女子が?この顔も身長も成績も全てにおいて普通、
というかもうド普通の人間の俺を?
金も美貌も成績も全てにおいてパーフェクトな女子ばかりのうちの学校の女子が?
何で?え?俺、そんな好かれるようなこと何かしたっけ?
俺が答えの出ない問答を頭の中でしている内に目の前に真っ黒いリムジンが止まった。
「小僧、早く乗れ」
「あ、ありがとうございます」
俺が乗り込むとドアの窓が開いた。
「花宮、今日はありがとな」
「いえいえ、ではまた明日学校でお会いしましょう」
「ああ」
「あ、そうそう鈴河さん」
「ん?何?」
「さっきの話ですが私も…鈴河さんを狙っている一人であるということを覚えておいて下さいね?」
「…!?」
突然の言葉に動揺して言葉に詰まる。
「もちろん答えは急がなくても結構ですから」
俺が言葉を返す前に車は動き出す。
花宮はいつもの笑顔で俺を送り出した。
「………」
しばらくしても俺の口は半開きのままだった。




