向かい席の男
掲載日:2026/04/15
いつも通りの帰り道、男は着々と下車駅まで近づいていた。
ちょうど駅に停車し男は今自分がどこにいるのか車内ディスプレイに目を向けた。
前に覆いかぶさるように立っている乗客にどけよとテレパーシーを送るも通じず眉根にしわを寄せているとぱっとマップアプリを開けばいいことに頓悟した男は左手を使って今新宿駅にいると知った。
男が自分の臨機応変さによっているとふと向かいに座る笑顔の男の視線を感じた。
男はカエルにみられるコオロギのように硬直し、とてつもない恐怖にのまれた。
徐々に湿る手がスマホを視界から外しいよいよ彼と対面した。
その恐怖の時間と格闘し次の駅に停車したときに彼はまだ全く姿勢を変えずにこちらを見ていた。
男の隣にいた女が大便くさかったのか逃げるように駅から降りて行った。
電車が発車しまた彼と二人になると男は次の駅で降りることに決めた。
駅に着き彼が恐る恐る視界の中央に男を映すと彼も同様に男を視界の中央に置いていた。




