そんな世界に転生したら俺は神様にだって……38
「レオン様がこの国に来たのは、私がもっと幼い頃でした。その頃の父は、私の呪いをどうにかしようと必死になってくれていました。いや……、それは今も同じですね」
ユウナは両手を膝の上に乗せて、まるで先生に話しかける生徒のような礼儀正しさで話を続ける。
「その頃の私は、この呪いをまだ受け入れることが出来ていませんでした。幼かった、というのは、心が未熟であった、ということでもありました」
懺悔のような言葉を紡いでいたが、彼女の表情はとても穏やかである。
「レオン様が着任して間もない時期に、そんな私の面倒を見ることもあったんです。第一印象は、とても悪かったのではないでしょうか……」
そこで、ユウナの言葉は止まってしまった。
これ……レオンが話していた内容と、同じようなことを言ってないか?
『ユウナ姫には、俺のそういった……余裕の無い部分も見られているからね。怖がられることはあっても……好かれるだなんて……』
この二人がお互いに第一印象が悪くなるって、全然想像つかないけど。何が起こればそんなことになるんだ……。
結局のところ、二人はすれ違っているだけではないか。これを解消することが出来たのであれば、ユウナとレオンが幸せに暮らすハッピーエンドもあるはずである。
「でも……レオンだったら、ユウナのことを子供扱いしたりしないと思うけど? ほら、レオンって本当に紳士って感じだし、カッコよくない?」
俺の言葉に、ユウナは相変わらず涼しい顔で会話を続けた。
「レオン様は、誰に対しても礼節と配慮がありますよね。とても素敵な方です。ですが私のことは……良くても、妹や娘のような感覚だと思いますよ」
仰る通り、レオンは誰に対しても、特に女性には同じような対応をしているイメージだね。いや、ダリルみたいな部下には、ハッキリとした物言いをしているだけで、真摯な応対をしてくれてはいるってことか。
「それから少し経ったある日、お恥ずかしながら私、癇癪を起こしてしまい……」
「えっ? ……ユウナが?」
癇癪ってあれだよね、感情的になって泣いたり叫んだり……みたいな。
一瞬、聞き間違いかと思って聞き返すと、ユウナは静かに頷く。
「その際、レオン様に言われたことがあるんです。『他国のお姫様や国王でも、ご自身の死と向き合うことを、ましてやそれを受け入れている方は、数少ないでしょう。国のために戦う我々兵士は、そんな人間からの命令を受けて、死地に向かうのです』、と」
「私はレオン様に教えていただきました。国を統べる者の、人の命を預かる者の在り方。私が指示をすることはありません。ですが、我々の指示で誰かが死ぬことになる。それを我々は自覚しなくてはいけないのです」
「兵士さんにはその覚悟があるのに、私が『死にたくない』など、何故言えるのでしょう。今では、それが私にも分かるのです」
言葉を続けたユウナは、改めてカップをつまんで紅茶を飲んだ。
「……レオン様にはとても感謝していますし、お慕いもしております。ですが…………」
その時、彼女の口から出てくる言葉を少しだけ待ってみたが、それが出てくることはなかった。




