そんな世界に転生したら俺は神様にだって……36
次の日、引き続き調査を進めようとした矢先、俺は再びレオンに呼び出された。
「連日すまないね、マルコ。出来れば早いタイミングで、こういった場を設けたかったんだ」
俺が座っているすぐそばで、まるで給仕のようにお洒落なお茶を注いでくれるレオン。香りから察するに、淹れているのは紅茶のようなものだろうか。
「俺は良いんだけど……、レオンに接待されていると……ねぇ?」
気品ある振る舞いを真横に、俺は視線を前に向ける。
「はい、まさかレオン様から、このようなおもてなしを受けられるとは。……とても光栄ですよね、マルコ様?」
俺の前に座るユウナは、その言葉に反して、くすくすと笑いながら、レオンを優しく見つめる。その眼差しには、尊敬を越えた何かがあるように見えた。
レオンの計らいにより、俺とユウナは、昨日の中庭で歓談することとなった。
今日のユウナは、初対面の煌びやかなドレスではなく、比較的日常的な軽装であったが、どこかしらから上品さが滲み出ている。お姫様の服装が持つ質の高さは、隠せないものなのだろうか。
「大国ヴァーレのお姫様と、魔王神を討ったロッカ村の勇者様……、僭越ながら私めが誠心誠意、努めてまいります」
そう言ってレオンは、ユウナの前にカップを置いた。
「お二人の素敵な出会いを、ぜひ私が取り持ちたいと思いまして、このような場を設けさせていただきました」
それに対し、ユウナが頬に手を添えて話し出す。
「あら? 私たちは既に親密な間柄ですよ?」
そのまま同意を求めるように、俺を見つめながら首を傾げると、それを眺めていたレオンは、わざとらしく手を叩いて明るく振る舞った。
「そうでしたか! それはとてもおめでたい! であれば、早々にユージオ様にもお声がけを……!」
「待って待って、さすがに話が早すぎるって!」
二人の独特な会話のテンポについていけない俺は、おたおたと会話を遮ることしかできない。
レオンの持つ会話の展開力についていける人間がいると、途端にブレーキがかからなくなるんだな。今までのメンバーにはいなかった、レオンと波長の合う、珍しいタイプである。
ユウナも、何でそんなにリアクションが良いのか? 昔からこのテンポで話していると、慣れもくるのかな?
「そうかい? でもマルコの言う通り、ユージオ様は本日、城外での公務となっているようだ。今すぐに、とはいかず、段取りが悪くてすまない……」
とても反省したように頭を下げられたが、スケジュールが空いていたら本気でやりそうな恐ろしさもある。
位の高い人間に囲まれて、俺は置かれたカップをちまちまと飲むことで、何とか間を持たせようという、情けない努力しか出来なかった。
「それでは、ここからは若いお二人に任せてたいと思います」
おいおい、待ってくれ。その流れで置いていかれるのは困る。こんな席で、俺は一体何を話せばいいというのか?
助けを求める俺の潤んだ瞳を見て、レオンが涼しい笑顔を返す。
「……冗談、少し席を外すだけさ。ちょっとだけ待っていてくれ」
全くもって何も伝わっていないレオンは、ユウナに頭を下げてすぐにその場を離れてしまった。




