そんな世界に転生したら俺は神様にだって……35
俺たちは店を後にして、店先で別れることとなった。
「今日はありがとな、俺に付き合ってもらってよ」
そのままダリルは、背中を向けて歩き出そうとした。
「……ダリルさんっ!」
そんな彼を、俺は引き止めた。そうしなければ、ダリルはそのまま手を振った後に、その場を去っただろう。
ダリルはこちらを振り返ると、まだ用事があったか? 程度の、ポカンとした表情である。
「……次は、いつ会えますかね? どこでなら、会えますかね?」
「……えっ? いつって……どうだろうなぁ……?」
ダリルは間の抜けた声を出しつつ、顎を触りながら視線を上に向けた。
「近い内にヴァーレを出るけど、それまでは偶然会ったりするかもな。それからは、そうだなぁ……、ダズさんとの旅もいつまで続けるのか分からないし……、どっかでのたれ死んだりしなければ、また会えるんじゃねーか?」
冗談のようにそう答えるダリル。その顔は、まるで頼れる兄貴分である。
「じゃあ、約束しておきましょうよ。次に会う約束です」
ダリルは未だに、俺の本心に気付いていないようだ。
さっきの冗談も、きっと本気ではなかったと思う。しかし、もし本当にそうなったとしても、彼は後悔しないだろうし、まさかそんな事になるなんて、とも思わないだろう。
死ななければ、またどこかで会えるし、どこかでもしものことがあったら、当然その次は無い、なんて当たり前だ。
それを、自身の命を軽く扱っている、とは思わない。しかし、周りの人間がどれだけ心配しているか。どれだけ大事にしているか。あまりにもそれが抜け落ちている気がする。
「無事に旅を終えて、絶対にロッカ村へ来てください! 今度はお酒飲んでも、絶対に倒れないようにしますから!」
そんな俺の考えなど、きっと伝わらないだろう。ならば、せめて俺なりの言葉で背中を押したいと思った。
ダリルは俺の言葉に少し吹き出して、鼻を鳴らすように笑った。
「……おう! 絶対に行くからよ! お前も元気で暮らせよなっ!」
いつもはどこか抑えめに話してくれるダリルが、彼の見た目に似合った、ややドスの効いた低い声で叫んだ。
そのまま大きく手を挙げながら、今度こそ人混みの中へと消えていった。
俺は、俺の周りにいる人間を、可能な限り助けたい。そう思う人間なのだ。これは優しさなどではなく、自己満足の類である。
だから、手の届く範囲は助けたいと思うし、少しでも手を伸ばすように努力したいとも思う訳だ。
ダリルの姿が見えなくなってから、俺も歩き出した。
少しでも、ユウナの呪いについて調べてみよう。正直、文字は読めないし、知らない人と会話をして情報を集めるなんて、そんなコミュニケーション能力もない。
それでも、出来る限りのことを、俺にでも出来ることを探そうと、俺は賑わう商店街へと臨んだ。




