そんな世界に転生したら俺は神様にだって……34
「これからしばらくの間は、ダズさんと一緒に旅をしようと思うんだ」
ダリルは椅子の背もたれに寄りかかり、ゆっくりと喋り続けた。
「国王軍を離れるのは、任務中に兵士長の指示を無視したことへの罰って建前で、要は『実家の家族と過ごせ』ってことなんだよ。今回の報酬も、俺みたいな一般兵士じゃ考えられないくらい破格だったしな」
柔らかく微笑むように語るダリル。俺としては、単純に厳格な措置をしているような気もする。レオンはダリルに対して厳しいからなぁ。
「もちろん言われたよ、『働いたことの報酬と、指示に背いた罰則、どちらもあるのは当然のことだ』だってよ。……あの人には敵わねぇよな」
うわー、めっちゃ言いそう。語尾が『突然のことさ』じゃないのが、ダリルへの口調っぽい。
「……家族の為に、少しでも稼げるように、偉くなってやろうと躍起になって、あんな事になってさ…………それが転じてこんなことになるんだな。素直に喜んでいいのやら……」
ダリルの表情は少しだけ翳りを見せた。それは、ロッカ村の住人たちへの罪悪感だろうか。
「でも、今なら家族と一緒に暮らせるんですよね? それなのに、どうして……?」
ダリルは変わらず、沈んだ表情で言葉を返す。
「今の俺が、家族と暮らして大丈夫なのかって……そんなことも考えちまうんだよな……。俺の中にあった何かが、大きく変わっちまったみたいでさ……」
そう呟くと、ダリルは力無く視線を上に向けた。
俺は、ダリルに投げかけられたその質問に、答えることができなかった。
昔、何かで聞いた事がある。戦場に長い間身を置いた人間が、故郷に戻った際、戦場での夢を見てしまうことがある。うなされる本人も辛いが、それに家族が耐えられなくなってしまうケースもあるらしい。
ダリルにとって、あの灰色の魔物と戦った経験が、自分に大きく影響を及ぼしているのだ。それによって変わってしまったのが人格なのか、常識なのか。
その結果、今までの日常生活が送れないかもしれないと、そんな不安があるのだろう。
きっと大丈夫ですよ、などと軽く伝えることだって出来る。しかし、それが何になると言うのか。
「ダズさんの旅についていって、少しでも誰かの為になりたいんだよ。俺は……少しでも自分を許したい。そして、自分自身の心を、もっと磨きたいと思ったんだ」
ダリルの目は、俺をしっかりと捉えていた。その目には、はっきりとした覚悟を感じたし、今更揺らぐことはないのだと、俺も理解した。
「……あの人が向かう旅って、絶対危険だと思いますよ? ……怖くは、ないんですか?」
俺の質問に、ダズは何故か笑ったように見えた。
「そうだなぁ……、死ぬのはもう怖くないかもしれないな。死んでも成し遂げたい事が、ハッキリと分かったからな」




