そんな世界に転生したら俺は神様にだって……32
ダズの巨体は、街中で見ると本当に規格外である。俺の目線あたりに腰があるので、通りすがりの人たちも度々振り返ったり二度見をしている。
そんな彼は、はるか高くから俺を見下ろして、首を傾げた。
「…………ん〜? 誰じゃあ、お主はぁ〜?」
本当に俺のことなど知らない、といった風の口振りである。
一緒に死線を潜り抜けた仲じゃないか、などと思ったが、一度だけ一緒に仕事した奴の顔を忘れるなんて、良くある話か。
「誰って……マルコですよ、ダズさん。あの日の任務で一緒だったじゃないですか」
「う〜ん? マルコ、…………コイツがぁ?」
名前まで出されているのに、まだ納得がいかないような、疑り深い眼差しで俺をみつめる。
「いーや、マルコはもっと強そうな奴だった! コイツはマルコじゃないね!」
そう言い放つと、ダズはそっぽを向いてどこかへとふらふら歩き出す。
「ダリルー、ワシはもう宿に戻るぞー。……本当に、この街は退屈で仕方ないな……」
辺りにいる誰よりも身長のある男が、とぼとぼと帰路につく様子は何とも異様な光景である。
ダリルに紹介してもらったはずなのに、信じてもらえなかった俺は、呆然とダズを見送ることしかできなかった。
一応マルコという人間がいたことは知っているようだが、何で信じてもらえないんだよ。そんなに弱々しいか、今の俺が。でも、
「はは……、悪い、マルコ。ほら、お前って、戦場と普段とじゃあ、イメージが違うからさ……。ああいう人なんだよ…………」
その気まずい空気に、ダリルも気を使って慰めてくれている。確かに、あの時は神信力も使っていたしな……、とはいえ、そんな戦闘力のみで人間を判別するなんてことある?
そんなことでモヤモヤしていると、ダリルが切り出しづらそうに口を開く。
「……マルコには、色々と世話になったな。ロッカ村の時も、魔王神討伐の時も……」
「えっ? ……あっ、いやいや、こちらこそ……」
突然の謝意に、俺は頭をペコペコと下げる。
ティマリール教会事件についてはもう謝ってもらっているし、任務の時は俺も勝手に動いてただけで、ダリルを助けてあげた、なんて思っていない。
「……ダリルさんは、ロッカ村に戻らないんですね。これからどうするんですか?」
ダリルは国王軍を退役するらしい。ロッカ村に戻らなかったのか、それとも戻れなかったのか。
「ああ、あんなことがあって、戻れねぇからな。それに、兵士長からもこっぴどく怒られてるから、謹慎扱いなんだよ」
ダリルの口調は明るかったが、レオンからの処分は重いものがあるように感じる。ロッカ村での出来事を、ヴァーレ国王軍としても非常に重く受け止めているのだろうか。
「いや、そんな悪い話って訳じゃないんだ。兵士長には本当に助けてもらってさ……」
俺の表情が暗くなったと悟ったのか、俺が何かを言う前にダリルの方からフォローが入った。
「……マルコとは、この街から出る前に話しておきたかったんだ。……もう少し時間もらっていいか?」
そういうと、ダリルは辺りを少し見渡して、落ち着いて話ができそうな飲食店に俺を促した。




