そんな世界に転生したら俺は神様にだって……29
森の奥へと進み続けて辿り着いたのは、まさかここが目的地とは思えない、林道の真っ只中であった。
「記録上はこの辺りになりますが、……ライラさん、どうでしょう?」
案内をお願いしたライラの顔色を窺うメイ。連れてきた場所がこれでは、そりゃあ気を揉んでしまうのも分かる。
「ここが、そうなんですね……」
ライラは辺りを見渡しながら、口を閉ざした。あるはずの何かを探しているのか、何かを見出そうとしているのか、彼女の表情からは見て取れなかった。
ここを目指したのは、彼女の一言が始まりだった。
「オスマン村長がヴァーレの兵士だった頃、近くの森でティマリール神を見たそうです」
俺もその話は、以前オスマンと教会で話した時に聞いていた。彼がヴァーレの兵士だったのは初耳だったけど。
俺も周りをグルッと見回すが、特筆する点もない、ただの森林である。道も特に舗装されている訳でもなく、見晴らしも決して良いとは言えない場所だ。強いて言えば、一部の地面には岩で出来たタイルのような部分がある程度か。
「オスマン村長にもお伺いしましたし、この辺りで謎の発光を見た、という記録もあります。ただ、どれも原因が不明なこと、そして我々も調査したところ、神信力に関する要素を見つけることができなかったのです」
メイもいくつかの補足をしてくれているが、俺としても、この場所では何も感じることができなかった。
神信力については、そもそも感知が得意なメイで発見できないものを、俺が見つけられる訳がないのはあるとして。
たまりるにまつわるエピソードとしても、引っかかるものが何も無かった。考察はオタクの得意分野であり、一見関係の無さそうなものが実は匂わせ、というのはオタクの大好物であるが、考察とはそもそも当たらないものである。
むしろ怖いのは、俺の単純なたまりる知識の不足によって判明していないのではないか? という不安だ。本当にたまりる要素はないよな? 俺の弱さとかではないよな?
「村長以外にも、ティマリール神を見たっていう人はいないんですかね?」
「目撃という意味では、聞いたことがないですね。ただ、一般的にティマリール神のお姿は文献ごとに様々な容姿ではあるので、どうなんでしょうね……」
メイにも答えづらい質問のようで、回答も歯切れが悪くなっている。
「それに、この場所には神信力が何も感じられないのが不思議なんですよ。ティマリール神を見たという逸話や謎の発光……そういったことが観測されていて尚、神信力は一切ないというのが……。神信力で言えば、以前マルコさんが手にしていたティマリール神像の方がまだ感じられましたよ」
聞けば聞くほどに、この場所の特異性が見られない状態である。
それでもライラは、自身の目で見て納得がしたいのか、淡々と辺りを観察し続けるのであった。




