そんな世界に転生したら俺は神様にだって……28
俺たち三人は講堂を後にして、ヴァーレ城から少し離れた森の中を歩いていた。
「この辺りは、魔物とか出たりしないの?」
「魔物が出た、というのは聞いたことがありませんね。先ほどのティマリール神像があるお陰か、はたまた城内にいるユウナ様のご加護のお陰かは、はっきりとはしていませんけれど」
俺とライラの前を歩くメイが、淡々と答えを返す。
「魔物もそうですし、ヴァーレ城の近くですから、野盗の報告もございません。それに、何かありましたら私がおりますので、ご安心ください」
ヴァーレ国王軍魔術師の頼りになる一言、俺も言ってみてぇ。
しかし、そんな彼女はどうも気がかりなことがあるらしく、俺の様子を窺っているようであった。
「…………マルコさんは、ユウナ様を見ても平気でしたよね?」
そんな中、突然話題は変わり、メイが俺に質問してきた。
「私は今でも覚えています。ユウナ姫を見た時、何かが頭の中に流されてくるような感覚。そして、初めて会ったはずの。その人の全てを肯定してしまいそうな魅力と言いますか……」
メイは、その衝撃を何とかして俺に伝えようと言葉を紡いだ。
「でも……、あの日はメイも大丈夫そうじゃなかった?」
「あの日はちゃんと目、合わせないようにしてましたから。それで耐えられるのも最近の話ですよ? 今までは、同じ場所にいるだけでふらつきましたし……」
ため息を何とか堪えるメイ、それに共感するようにライラは目を閉じて頷く。
「……私はあの時、目の前にティマリール神様がいると、そんな確信をしました。そんなことあり得ないと、頭では理解しているつもりでしたが……」
ライラも口を開いて、あの日のことを話してくれた
「今までの自分を見られていたかのような、全てを見通しているような……、メイさん……あれは一体何だったのでしょうか?」
するとメイは振り返って、俺たち二人を前に足を止めた。
「アレは今まで、ティマリール神の寵愛、とされていました。しかし、今では私にも分かりません。マルコ様に何の影響もないことを考えると、神信力……黒魔法が絡んでいる可能性もあります」
メイは一歩踏み込んで、俺を覗き込んだ。
「マルコさん……ユウナ様を見て、何か感じませんでしたか?」
彼女の目からは、疑いの念などはなく、純粋に俺やユウナを心配してくれているのだと分かる。
俺の神信力が、メイやライラとは違う性質があるのは、マキラとの戦いで教えられた。しかし、ユウナの件に関して言えば、原因はそれではないと俺は思う。
メイとライラの二人には、やはり前世の記憶がないのだろう。きっとそこが、ユウナを見た時の違いに繋がっているのではないだろうか。
「いや……俺は何も感じなかった……ですけど……」
だが、それをここで言うべきか、俺には判断がつかなかった。故に、濁すような返ししかできない。
「……そうですか、それなら仕方ないですね。……大丈夫ですよ。私は、マルコさんが隠し事をするような人だとは思っていませんので」
メイはすぐさま踵を返して、森の奥へと歩みを進めた。
信頼してくれている彼女の言葉が、俺の心にグサグサと突き刺さる。うぅ……しんどい……。
俺たちが向かっている目的地に到着するまで、俺はどこか肩身の狭い思いをしながら、彼女の後ろをついていくしかなかった。




