そんな世界に転生したら俺は神様にだって……26
「うおおおぉ…………っ!!!」
連れてきてもらった講堂に入った時、これには俺も唸り声を漏らさずにはいられなかった。
ただでさえその外観に圧倒されたが、ロビーや通路を通り過ぎてたどり着いた本堂は、それこそコンサートホールのような造りであった。
天井は高く、やや下るように並ぶ座席からは、ヴァーレ国王軍の規模の大きさが窺える。
魔王神討伐任務ではおよそ数十人程度であたっていたが、総戦力でいえばそれを遥かに上回る数なのだろう。
「……如何ですか? これほどの規模を持つティマリール教の講堂はなかなか珍しいかと思いますよ?」
そんなヴァーレ国王軍魔術師の上層部にいるメイが案内してくれていることも、今思うと途端に身が引き締まる思いである。
いや、実際はそれどころではなかった。
まるでステージ上、スポットライトに照らされるように鎮座しているティマリール神像を間近で見ようと、許可が出る前に足が動いた。
遠くから見えるティマリール神像は、まさにアリーナのスタンド席から見える小さな国木原たまりそのものである。何なのだ、このリアリティは。
座席間の通り道をするすると進み、台座の目の前でティマリール神像を見上げる。
近付いてみると、俺の知っている国木田たまりよりも幾分か大きい、銅製の神像であることが分かった。
そして、模られたたまりるを注視する。今までのティマリール神像は、どれも別々のシーンが切り取られたものだったので、これがいつのたまりるなのかを読み解く楽しみ。まるで考古学のような解読は、オタクが活き活きするシーンのひとつである。
これは…………はいはい、分かりましたよ。これはデビュー五周年を記念した、5thアニバーサリーライブのワンシーンとみたね。
更に言えば、この講堂も当時の開催地であるYアリーナを彷彿とさせるキャパシティときたもんだ。
「うっわ…………あっつぅ〜……」
「えっ? 暑いです? 言うほどではないと思うんですけど、……大丈夫ですか?」
素直に心配してくれるメイ。申し訳ない、俺はずっと前から頭がおかしいんだ。
「マルコさんはいつものことなんで、放っておいても大丈夫ですよ。……でも、本当に素敵な銅像ですね……」
俺を軽くあしらいつつ、ライラは俺の横でティマリール神像を見上げた。
不本意な部分もあるが、彼女の言っている事は正しい。ロッカ村のたまりるも良いが、ヴァーレのたまりるも捨てがたい。それを思えば、オタクの俺のことなど放っておいたって構わないのだ。
「他の方々が見えないですけど、いつもこのような……閑散とした雰囲気なのですか?」
「ええ、最近は魔王神の動きもあったので騒然としておりましたが、そちらも落ち着いたので……。今は各自で近くの村や町へ出て、魔物たちからの影響が無いかを調査しているところです」
なるほど、普段のヴァーレ国王軍の魔術師たちは、そのような活動をしているのか。軍の人たちだし、戦争中とかなら話は別だろうけど、普段はそういった衛兵的なポジションなのかね。
すると、メイは話の中で思い出したかのように続けた。
「あっ、そう言えば……お二人はダリルさんとダズさんには会いましたか?」
「いえ、ヴァーレでは会ってませんが……もしかして、今はこちらにいらっしゃるんですか?」
ライラと同じく、俺も二人には会ってはいない。昨日から今にかけて、自由に行動出来る時間も限られていたからね。
「マルコさんとライラさんに会いたがってましたよ。……お二人とも、少しの間ここを離れるようでして……」
「ここを離れるって……。そうか、ダリルはロッカ村の衛兵からも離れるってことか」
「そうなんですね…………次はどちらへ配属されるんですか?」
何気なくした質問に、メイの表情は少しだけ気まずそうに首を傾げた。
「実は私も存じ上げなくて…………恐らく、国王軍から……退役されるのではないかと……」
その言葉に、俺たち二人は互いに何かを思ってしまったらしく、目を合わせて口をつぐんでしまった。




