そんな世界に転生したら俺は神様にだって……25
並んで立っている二人は、まさに今ここに来ましたといった様子で、訝しげることもなく俺たちを見ていた。
「今……私の名前が出ていたようでしたが、何かありましたか?」
実は話を聞いていた、という風ではなさそうではあるが、陰でこそこそ名前が出ているのは、気分が良いものではない。
しかし、さすがはレオンと言ったところか、すぐさま爽やかな返答をした。
「いや、マルコがね? ロッカ村一番の美人はシスターライラだという話で……」
「あーっ! ズルいでしょそれは!」
やいのやいのと騒ぎ立てる俺に対して、レオンはそのまま何事もないといった様子で、ライラも話の流れが読めずにきょとんとしている。
レオンめ、相変わらず変な話題を投下してくるね。そしたらこっちにも考えがあるんだぞ。
「違うんです、ライラさん。レオンが言ってたんですよ、ライラさんのような美人と結婚できたらなーって」
「ふふっ、……そうだね、確かに言ったよ。……僕は美しい女性に弱くてね」
それに対してライラは、照れる素振りなど一切せず、髪を軽くかきあげた。
「あら、それはとても光栄ですね。……私と一緒なら、きっとレオン様でも神信力を使えるようになることでしょう」
恥ずかしげもなく、ライラにそれを言い放つレオンも凄いが、さも平然というように冗談(?)で返すライラも大概だ。顔が整っている人間は、容姿を褒められ慣れているというのも納得できる。そして俺は、いつだって狼狽える弱き立場なのである。
「それはどうかな? 僕はメイという優秀な魔術師を手元に置いて尚、神信力が使えない生粋の無神道だからね……。二人とも、まだ講堂には行ってなかったのかい?」
「そうなんです。メイさんとお話ししてて……当然、来賓の対応という業務扱い、ですよね?」
話を戻したレオンに、有無を言わせない満面の笑みを浮かべるライラ。メイがサボっていると言わせない為とはいえ、圧が強いな。
「それはそうさ、……メイ、分かっているとは思うけれど、シスターライラとマルコは丁重にもてなすように頼むよ」
レオンの指示に、メイは鼻息荒く胸を張った。
「ご安心ください! レオン様のご命令とあらば私、この命に代えてでもお二人に尽くしましょう……!」
こっちはこっちで、献身への覚悟が重い……! 命を尽くしてまで尽くさないでほしい。
「期待してるよ、……マルコも良かったら二人と講堂に行ったらどうだい?」
レオンは二人を示して俺を促す。さっきは一人で行くつもりだったが、ここで断ってまで単独行動するのもおかしい。
「どうぞマルコ様……、私めがエスコート致しますよ?」
キャラが浮ついているメイが、エレガントな紳士のように恭しくお辞儀をする。
「まぁ、なんて素敵な人……頼りにしておりますわ!」
そんなメイに寄り添うライラ。なんなんだ、この三文芝居の嵐は。まぁ、みんなが楽しそうで何よりだよ。
こうして俺は、三人でヴァーレ国王軍魔術師の集う講堂へと向かうことになった。
先ほどからいくつか、百合の花の種を拾ったような気もするが、この中庭では育てるのに必要な栄養が無さそうである。どこかで芽吹いてはくれないだろうか。




