そんな世界に転生したら俺は神様にだって……24
「……ユウナ姫と出会ったのは、僕がこの国に兵士としてスカウトされ、初めてヴァーレを訪れた時だった」
少しだけ口が重くなっていたレオンが、ゆっくりと語り始める。
「その時は、城内を守る兵士の一人として配属されたんだ。戦場で功績を挙げる、というよりかは、国王様への助言という形で努めていたけどね」
レオンがまだ兵士長でない、新米兵士だった頃の話か。非常に興味深いよね、俺が主人公の話よりも、よっぽど爽快な王道の漫画になりそうだ。
「……その時は出自もあったからか、厳しい言葉を投げかけられたこともあったよ」
出自、それで言えば、レオンとヴァーレに来たメイも、同様の苦労があったのだろうか。聞きたい気持ちもあったが、レオンが話し続けてくれる内は、静かに耳を傾けることにした。
「ユウナ姫には、俺のそういった……余裕の無い部分も見られているからね。怖がられることはあっても……好かれるだなんて……」
本当に、そうだろうか。
「ユージオ様は優しい方だけれども、当然のことながら、結果が伴うことも必要とする人だ。それなら俺は応えることができる、そういう自負はあるんだ。でも、人の心となると……なかなか、ね……」
レオンの言っていることも分かる。人の心は、決して見透かすことはできない。
「きっと、俺がもっと上手くやれていたら……ユウナ姫と一緒に暮らす未来もあったのかもしれない」
本当に? その未来は、本当になくなっているの?
「……後悔がある訳ではないんだ。さっきも言ったろ? こなしてない事は出来ない、あの頃は出来なかったってだけさ。今ならどうかな……少しは上手くやれるかもしれないね」
これも、ユウナの時と同じだ。俺がここで何かを言ったところで、解決する訳では無い。
それにしても、レオンの持つ矜持というか、信念というか。
「……レオンって自分に厳しすぎない? レオンは将来、どんな生き方をしてると思ってるの?」
この男、このままだと一生ヴァーレに仕えて、その生涯を終えそうである。自身の幸せについて、考えないのだろうか。
するとレオンは、予期せぬ質問だったのか、上の方に視線を投げながら思案した。
「そうだなぁ……、ユージオ様への恩義を返し切ったら、どこかの小さな町で静かに余生を過ごすよ。その時には、町一番の美人と一緒に過ごせたら、尚良しだね……ふふっ」
レオンの優しい微笑みを見て、俺は僅かながら安堵した。先ほどまでの曇った表情は、あまりにもレオンらしくなかったから。
大国ヴァーレの兵士長を務めた男が町娘と結婚か……なかなか想像もつかないな。
「レオンとお似合いの町娘って……ライラさんとか?」
その一言は、本当に何気なく呟いたものだった。俺の知る町娘代表がライラであった、ただそれだけの話だ。
しかし、どうやらレオンはそう捉えていないらしく、さっきの質問などを遥かに上回るほどの呆けを見せた。恐らく口にはしていなかったが、「何言ってんの?」が聞こえてくるような丸い目と開いた口。
次の瞬間、緩んだ口元を覆い隠しながら、レオンが笑った。
「……は、ははっ……! そうだね…………うん、シスターライラのような美女となら、それはさぞ幸せだろうさ!」
何故、そんなにも大笑いをしているのか、俺には理解できなかった。正直、そんなズレた話をしたつもりもない。
ライラは、どちらかといえば、かなりの美人寄りだろう。そんな事、本人の前では言えるはずもないけれど。
「うん…………そうだね、そう考えると、君の周りには素敵な女性が集まっているね。────二人もそう思わないかい?」
レオンの視線が突然、俺の後方へと移ったことに気付き、即座に振り返る。
ああ、なんでこんなにタイミングがよいのだろう。二人でティマリール教の講堂に行ったって、言っていたじゃないか。
俺の後方にたっていたのは、ロッカ村一番の町娘ことライラと、ヴァーレ国王軍の美人ランキング上位にいるのだろう、メイが並んでいた。




