そんな世界に転生したら俺は神様にだって……22
レオンの語り口は、まるで御伽噺のそれであった。瞼の裏に書いてある文章を読むように、つらつらと話し出す。
昔々あるところに、国王様と王妃様がおりました。昔といっても、およそ十と数年前、二人の間には可愛らしい女の子が生まれました。
その女の子が生まれた瞬間から、城では不思議なことが起こります。幾人の兵士たちが、彼女の近くを通るだけで不調を訴え、その一部に至っては、意識を失ってしまう程でした。
そこで二人は、娘を占い師に占ってもらうことにしました。少なくとも、医療の分野では何も分からず仕舞いであったのです。
すると、占い師はこう言いました。
「この子は、神様からの強い寵愛を受けておられる。まるで神の化身、信心ある者は近付くことも叶わぬ」
「しかし、それは本人も同様。その寵愛を受けることの出来ない脆い器は、短い生涯でその輝きを放つことになるだろう」
占いの結果を知ったのは、城内の極々少数の人間でした。その結果が外部に漏れないようにしたのです。
国王様は、その占いを決して信じようとはしませんでした。
それが何故なのかは分かりません。きっと、やっと生まれた一人娘が命を落としてしまう悲しみに、耐えられなかったのでしょう。
占い師は様々な知識や力を持った賢者であり、その占いを信じないなど、あり得ないこととされているのに。
それから、ヴァーレはより国力が上がっていきました。生まれたお姫様の力なのか、世に蔓延る魔物たちは、何故かヴァーレに近付くことはなく、経済活動が盛んになっていきました。
また、軍事的な成長も著しいものがありました。
ある時は、親交のあった国から、非常に優秀な人材を迎え入れました。その若き才人は、持ち得る能力を存分に発揮し、ヴァーレ国王軍を指揮する者となりました。
ある時は、自国のお姫様を見て卒倒してしまった才女を迎え入れました。これも真意は分かりませんが、人材の層をとにかく厚くする必要があったのかもしれません。
こうし大国ヴァーレは順調な成長を見せますが、お姫様の容体は一向に変化ありません。
時が経つほどに、お姫様は床に伏せる時間が長くなっていきました。
それは、病気ではありませんでした。ただ、睡眠が長くなるだけ、苦しむ様子もなく、ただ、目を開ける感覚が伸びるだけ。
国王様は、更に色々な方法を考え始めました。その様子を、ご乱心であると謗る声も上がりましたが、国王様の近くにいる者には、その必死さがひしひしと伝わります。
王妃様は、占いを信じていたのでしょうか? 国王様と添い遂げる覚悟あるお方、きっと信じてはいなかったでしょう。
その頃から、更に不思議なことが起こります。それは、常識からは考えられない現象ばかりです。
「────まるで取り憑かれたかのように、凶暴になる人間が出てきたり。あるはずもない場所に、広大な森林が突如として現れたり。そして……」
そこで、俺の目を見据えるレオン。
「君のような人間が現れてたり…………ね?」




