そんな世界に転生したら俺は神様にだって……21
「……どうしてだろうね。俺が思うに、神様を信じてないから、だと思ってるけれども」
レオンはテーブルに並んだお菓子を俺に促しながら、「食べながらでも聞いてくれ」と、話を続けた。
「俺はガラン出身で、国王家の生まれなんだ。……あれ? この話、したことあったっけ?」
レオンが一国の王子であることは、初めてヴァーレに来た際、メイが自慢げに教えてくれた覚えがある。この国の人たちにとっては有名な話とも言われたな。
本当に些末なことなのだろうか、レオンはすぐに「まぁそれは良いか」と呟き、あっさりと自己完結した。
「小さい頃は色々なことを教えられたよ。とにかく、全てが教育……指導だったね。他の生き方も知らない子供もだったから、何の疑問も抱かなかったけれど」
「それに、親の愛情もどこかで理解していたかもしれないね。父は俺たち兄弟に生きる術を与えてくれて、母は家族全員に、無償の愛を注いでくれた」
「するとね、こう思えてくるんだ。『今までこなした事は出来る、こなしたことがない事は出来ない』って。……こんな価値観、他人には絶対強要できないけどね。俺は、運良く与えてもらえた人間なのだから」
そこでレオンはひと息置いて、俺の目を見つめる。
レオンの考え方は正直、自分にも他人にも厳しすぎると思った。他人には強要しない、とは言っているが、だとしたら自分にのみ厳しいそんな生き方で、辛くないのだろうか。
まぁ……辛くないんだろうな。結果的に、その若さで大国ヴァーレの兵士長にまで登り詰め、自身を慕う部下や、自身を認めてくれる国王がいるのだから。
「俺は、俺の出来ること、俺の手が届くものしか信じない。それこそ、魔王神だって最初は信じちゃいなかったさ。でも、魔物憑きやロミ平原の森林発生、そしてマルコみたいな存在があって、信じるに至った訳だ」
そしてレオンは、テーブルに肘を置いて頬杖をついた。その顔には、いつもの爽やかな笑顔を浮かべている。
「そう思うと、ティマリール神を信じるようになるのも時間の問題かもね。マルコはティマリール神を信じているんだろ? 君を見てると、本当にいるんじゃないかと思えてきたなぁ」
レオンの目は、俺を見透かすかのようにも見えたし、無垢な子供の真っ直ぐな瞳にも見えた。
初めてロッカ村でレオンと出会った時など、彼は度々こう言っていた。人を見る目には自信がある、と。
俺如きが、レオンを見定めようなんて、なんて無謀なことを考えてしまったのか。
「…………もし、レオンが神信力を使えるようになったのが俺のおかげだとしたら、光栄だね」
彼がどこまで本気で言っているのか、俺に知る術はない。実際、レオンなら使えるようになってもおかしくはない。
それに、もしレオンが神信力を使えるようになったら、まるで俺がレオンをたまりるの沼に落としたみたいじゃないか。新規オタクを増やすことが、俺たちの役目みたいなところもあるし、たまりるファン冥利に尽きるね!
「ふふっ、……いつか神信力を使って、マルコと肩を並べて戦うのを楽しみにしているよ」
…………これは、マジで言ってないよね?
少しばかり冷や汗が流れてきたが、こればかりは怖くて確認することが出来なかった。
「ふぅ……珍しく自分の事をこんなに話したよ。すまない、今日はそんな話をするつもりはなかったんだ」
話を区切ったレオンは、先ほどまでの雰囲気から変わって、少し翳りのある様子を見せる。
「今日話したかったのは、ユウナ姫のこれからの事だ」




