そんな世界に転生したら俺は神様にだって……20
「────はっはっはっ! そうかい、マルコはそんな楽しそうな夜を過ごしていたんだね……! いやー、それは是非見に行きたかったな!」
俺の対面に座るレオンは、珍しく大きな声で笑っている。
「笑い事じゃないよ……。立て続けにあんなことになって、本当に寿命が縮まったかも……」
俺はため息を我慢しつつ、目の前の丸テーブルにへたり込むように座っている。
夜が明けてからは、言われていた通り兵士さんが俺の元に来て、そのまま朝食の場へと案内された。
昨日の夕食と同様に煌びやかなテーブルは、直前まで牢屋にいた俺への振る舞いとは到底思えなかった。おもてなしの寒暖差で、頭が痛くなりそうだ。
「それにしても、ユージオ様もなかなか粋なことをされるなぁ。仕えてからしばらく経つけど、新たな一面が見られたね」
レオンは目の前に置いてあるカップを手に取り、優雅に口をつけた。
朝食後まもなく、俺はレオンに呼び出された。昨日の今日で、一体何が起こるのかとビクビクしていたが、今は中庭に設置された椅子に腰掛けて、二人で歓談している状況だ。
昨日の内容を全て伝えることも出来ないので、要約して「国王に牢屋へ入れられて、ユウナと少しお話しをした」程度の伝え方になった。
「魔王神と対等に戦った男も、娘を大事にする父親には到底及ばないのかな? ……実際どうだい? 魔王神と国王、どっちが強敵かな?」
「ちょっ……ちょっとちょっと! こんな話誰かに…………国王様なんかに聞かれたりしたら!」
思わず周りをキョロキョロと見渡すと、レオンは鼻を鳴らして笑う。
「大丈夫、今は周りに誰もいないし、国王も普段は公務でとても多忙なんだ。偶然通りかかるなんて、なかなか無いよ」
そ、それなら良いんだけどさ……。万が一聞かれたりしたら、またあそこにぶち込まれるかも知れないからね。
しかし、さっきの質問だが、魔王神とは結果的に戦った末に無事生還している。前提として、黒魔法に優位な白魔法ありき、ではあるが。
それに対して、国王の強大な権力に、俺は一切なす術がない。
権力に優位な存在ってなんだ……無法者とか? なるほど、小心者の俺には縁の無い単語である。
俺の回答を待っている風のレオンに、一言だけ、
「ノーコメントで」
「おや、さすがに魔王神と答えるかと思ったけど、意外だな。これは面白いことを聞いてしまったね」
再びカップに手を伸ばし、ひと息つくレオン。こういう状況は、どう答えたところで茶化されるものだ。
そして俺は、密かに昨日の国王との会話を思い出していた。
国王は前世の記憶で、メイとライラを知っていたらしい。あの流れでレオンの名前が出てこなかったのなら、レオンとたまりるの関係はあまりないのだろう。
しかし、レオンには本当に前世の記憶がないのだろうか。
普段の彼から漂う余裕や、まるで全てを見透かしたかのような立ち振る舞い、そして神信力は使えないけれども戦闘は特筆に値する実力。羨ましさも大きいが、それ故に裏があるようにも見える。
「……レオンはさ、どうして神信力が使えないの?」
突然の質問に、レオンは珍しく不意を突かれた顔をした。
怪しまれたか? いや、少しでも情報が欲しい時なのだ。ここは積極的に動くしかない。
「いや、なんていうか……ユウナ姫を見ると、神信力が使える人ほど、ああやって不調になるんだよね? そうならなかった俺も変だけど、レオンはどうだったのかなって」
裏を読まれないように、矢継ぎ早に話を進めてしまった。俺はこういう裏の読み合いみたいなのが、とにかく苦手なのだ。
そんな俺とは対照的に、持っていたカップを静かに置いたレオンは、まるで考えていたかのように、すっと口を開いてくれた。




