そんな世界に転生したら俺は神様にだって……19
彼女から溢れるその健気さに、俺は顔を覆ってしまった。込み上げるものもあったが、ここで俺が泣くのは違うと思うので、気合いで平静を保つ。
「……国王様は、きっとユウナのことを大事にして……愛しているはずだよ。間違いない、俺が保証する」
するとユウナは、ほんの少しだけ笑顔を取り戻した。
「マルコ様はお優しいですね。……お気遣い、ありがとうございます」
今日初めて会った人間に言われて、素直に納得が出来るのであれば、彼女もこんなに悩んでいない。きっと今の返事は、逆に俺への気遣いとも言えるだろう。
それでも、それを言葉にして伝えることが大事なのだと思う。
「国王様に頼まれたんだ、『娘を助けて欲しい』って」
国王様も、もっと言葉で伝えるべきだったんだ。そうすれば、マリが誰なのかを教えずとも、ユウナがこんなにも悩むことはなかったのではないだろうか。
「俺が、君を助けるよ。それに、君が思うような不安も、きっと振り払ってあげる」
正直、俺に何が出来るのかは分かっていないし、こんなに断言できるほどの自信はない。
でも、そう言ってあげなきゃいけないし、誰かがやらなくちゃいけないんだ。
「だから、安心して欲しい。俺も、国王様だって、いつでも君の味方だよ」
しっかりと彼女の目を見てそれを伝えると、ユウナは目を丸くした後に、視線を下に落とした。
辺りは薄暗く、前髪に隠れて目は見えなかったが、口元は何となく笑っているようにも見える。
するとユウナは踵を返して、出口へと歩いて行った。心許ない明かりのせいか、少し進んだだけで、彼女の姿はほとんど見えなくなってしまった。
「…………あの」
暗くて見えないだけで、恐らくまだ近くにはいるのであろうユウナの声だけが聞こえる、
「…………今のは、プロポーズと受け取ってもよろしいのでしょうか?」
「うん…………んっ? ……いやっ、ちょっと待って!? 何でそうなって…………あれっ?」
一瞬流れで肯定しかけちゃったけど、そんな話したっけ!?
えーっと、何て言ったかな……君を助ける、とか。味方だよ、とか。…………そうだよね、一生幸せにする、とかは言ってないよね。
であれば、プロポーズと捉えるのは彼女の曲解ということ? もうお姫様とか分からん。
そのまま何も言えずにもにょもにょしていると、明かりに照らされるところまで、ひょこっと顔を出すように戻ってきた。
「ふふっ、冗談ですよっ! ……マルコ様のご活躍、期待しておりますね……」
楽しそうに目を細めながら、「それでは、おやすみなさい……」と、俺の前を去ったユウナ。
再び一人になった俺は、改めてベッドに倒れ込む。
軋んだような音もしないそのベッドは、さすがヴァーレ城の備品と言ったところか。牢屋に置いてある割に、非常に物が良いと感じた。
きっと、本物の罪人用ではないのだろうな。疲れ切った俺がそのまま眠ってしまうのも、時間の問題だ。
ああ、今日は本当に色んなことがあった。明日からはもうちょっと、刺激のない日常を送りたいな。
そんな希望を胸に、俺は牢獄での一夜を過ごした。




