そんな世界に転生したら俺は神様にだって……17
「マルコ様は……何故、このようなところにいるのでしょうか……?」
ユウナはおずおずと、至極真っ当な質問をしてきた。
これはね、君との婚約を断ったことで、君のお父さんに入れられたんだよ。なんていったら、どんなリアクションをするだろうか。
「…………国王様と二人でお話したくて、お願いをしたらここに案内されたんですよ」
当然、本当のことは言えないので、適当な言い訳で乗り切ることに。
言った直後に後悔したのは、わざわざ国王と話があった、なんて言わなくても良かったということだ。国王がここに来ていたことを、ユウナが見ていたとは限らない。ただ、もし見られていたのなら、こちらから先出しした方が信憑性がある、とも考えられる。
しかし、ユウナはどうにも納得がいっていない様子だ。
「…………? お二人でお話しするのであれば、他の個室でも問題ないように思いますが……? 何故マルコ様のような賓客をこのような……?」
これまた至極真っ当な質問である。適当な言い訳であしらおうとしたことが、透けて見えただろうか。これは反省である。
「いや、その……僕は広い部屋がすごく苦手でねっ! なるべく、とにかく一番小さい部屋をお願いしたんだよねっ!」
「……なるほど! そういった事情がございましたか! 私、知らないことが多くて……」
かなり無茶苦茶な回答だが、こっちは何故か納得してくれた。なんでこっちは通るんだ。御令嬢ゆえの、価値観や常識のズレだと思っていいのだろうか。
つーか、さっきまでの会話、聞かれてないよな?
国王はさっき、誰にも聞かれていないことを前提に話してたはずだ。もしかして、さっきの俺の返事にも、実は納得した振りをしていることも充分あり得る。
「…………ユウナ……様は、どうしてここへ?」
呼び捨てをギリギリ耐えながら聞くと、ユウナはどこか嬉しそうな表情を浮かべる。
「ふふっ……、ユウナ様だなんて……私の事はユウナとお呼びください」
「そ……そう? じゃあ…………ん? でもさっき、マルコ様って言ってなかった? それはどうなんです……かね?」
「あら、そうだったかもしれませんね。……ふふっ」
距離感を未だ掴めずに、たどたどしく喋る俺に対して、悪戯を楽しむかのように話すユウナ。
ロッカ村にいる、ひと回りも年下の女の子とは話すこともあったが、ユウナのようなやや年下くらいの女の子と、こうやってコミュニケーションを取るのは何だか難しく感じる。
「ふふっ、ごめんなさい。こうやって同じくらいの年の男の人と話すことが、今までなかったので……」
今もなお楽しそうに微笑むユウナに、お恥ずかしながら愛想笑いしか返せなかった。お互いに同じような認識を持っていて、ここまで態度が違うもんかね。
「……何故ここにいるのか、でしたね? 実は先ほど目が覚めてしまい、部屋を出ましたら父がどこかに向かうのが見えまして……」
少し笑いを落ち着かせたユウナが話し始める。
「こんな時間にどこへ行くのかと思ったら、まさか城内にこのような部屋があるとは、私知りませんでした……」
おいおいおい国王様っ! 完っ全に跡をつけられてるじゃん!
「あはは…………、じゃあ、さっきの会話も……聞いてたのか……な?」
観念して全て話すことになるのかもしれない。そう思う反面、それでもまだ誤魔化せるかも知れない、という思考が挟まった、暴露ギリギリの会話。
その時の彼女の笑顔は、あどけなさを通り越して、どこか俺を惑わすかのような妖艶さを覚えた。




