そんな世界に転生したら俺は神様にだって……14
我々二人の周りはとにかく静かで薄暗く、これこそが本当の密会であると言えよう。
言葉を選びながら、国王がポツポツと口を開いた。
「気付いた時には、ワシはこのヴァーレの国王になっていた。まるで元いた誰かに乗り移ったような感覚だったよ」
「あっ、それは自分もそうです。そんな感じでした」
細かい状況も共有するように、お互いに情報を擦り合わせながら話をしていく。
「その時には、妻らしき人物のお腹に娘がいてね。随分と気が動転したよ」
それはまた……、なかなか大変な状況だっただろう。俺の場合はどうだったかな、この世界にマルコとして生まれ変わったけれども。
確か……ティマリール神像を見るまでは、あまり生きてた心地ではなかったな。
「娘が生まれてから、知った顔を見ることがあったのも驚いたよ。君の知るところで言えば……メイちゃん、とかね」
「……っ!?」
ここだ、国王は前世で会ったことのある人間を、この世界で見かけている。
それに、あの国王がメイのことを「メイちゃん」呼びとはどういうことか。国王の元々の性格によるものなのか、近所の女の子みたいな扱いだな。
「でも、このことについては話してないんですよね? どうして……?」
俺の質問に、王は全て答えてくれた。その内容はどれも衝撃的過ぎて、俺は相槌を打つことも忘れるほど呆けてしまった。
「彼女はワシの娘の友達でね。ワシは彼女を知っていたが、当の本人は何も覚えていないようだった。ワシの事は勿論、娘のことすらね。それで言えば今日、君とここに来たライラさんも知っている顔だったよ」
「彼女たちのような優秀な魔術師は、特にその傾向があるんだ。きっとそういう人間ほど、ティマリール神との親和性があるのかな」
「だが、君も分かる通り、前世の記憶を取り戻している様子はない。それを私が確認することは出来なかったし、もし彼女たちが記憶を取り戻していても、私に伝えることは……きっとないだろう」
国王の情報に俺は、本質を理解することも、気の利いた言葉をかけることもできなかった。
ただ、一つだけ気になる点だけ確認させてもらった。
「国王は……神信力を使えないのですか? 僕と同じように、たまりるの記憶があるんですよね?」
その言葉を聞くと、国王は力なく笑みをこぼした。
「彼女は私にとって、ただの女の子だ。それは……今も昔も変わらない……あの子は私にとって宝物であって、神様ではなかったんだな……」
その顔を見て、俺も少しだけ理解をすることができた。
ここに来た国王の、昼に見たそれとは全く違う印象。品位ある荘厳な雰囲気に対して、まるで一般市民が疲れ切ったかのように力なく座っている様子。
「国王は……国木原たまりの…………国木田鞠さんのお父さん……ですね?」
今まで全ての質問に答えてくれた国王は、この質問にだけは何も言う事はなかった。




