そんな世界に転生したら俺は神様にだって……11
そこからはすぐに部屋を退室することになった。
ユウナ姫の体調を気遣う国王が彼女を部屋に返すと、そこからレオンも宿泊先変更なりの業務に戻らなくてはならない、とのことだった。
ライラの調子が戻るまでは単独行動を取る訳にもいかず、俺たち二人はそのまま城内に残ることとなった。
そして現在、城内の食堂で豪華な夕食が振舞われているところだ。
「ライラさん、本当にもう大丈夫なんですか?」
俺の横に座るライラは、まるで何事もなかったかのように、テーブルの食事に手を付けていた。
「マルコさん、何度もお伝えしてますが、あの部屋から出てから体調は戻っておりますので……お気遣い、ありがとうございます」
少しうんざりしている風にすら見えるライラ。
彼女の言っている通り、あの部屋を出た辺りから顔色も戻り、一人で歩くことも出来ていた。
本当に、ユウナ姫を前にした事が原因だったのだろう。メイもそれが分かっている様子だった。
それでも、心配にならない訳ではない。ライラもメイも問題ないというが、俺だけが彼女の体調に気を揉んでいた。
「まぁまぁ、マルコさんが気になさるのも無理はありませんよ」
招待している側として正面に座っているメイも、俺の気遣いに肯定的である。
「ですが、あの感覚は実際に受けた者にしか分かりません。私も……いえ、今この話は必要ありませんね……」
話を膨らませようとするも、その先を思い出してすぐに折られてしまった。メイは同じ状況で、泡を吹いて倒れたらしい。それはちょっと見てみたかった気も……いや、これは不謹慎過ぎるか。
「……そうですよ、マルコさんは全く様子が変わりませんでしたね。 ……どうでした? 何も感じませんでした?」
話を変えた先が、俺に繋がってしまった。ライラは「そうなんですか?」といった様子で俺の方を見る。その時のライラはそれどころじゃなかったから、覚えていないのも無理はない。
立ち位置の都合上、メイには気付かれていないようだが、俺があの時どれだけ動揺していたか。
「いやぁ……まぁ……そうですねぇ〜」
こんな腑抜けた返事しか出来ないが、ライラのような支障をきたす程の異常がなかったのも事実だ。
それに、俺の動揺は国木原たまりへのリアクションであって、ここで何か伝えるのも変な話だ。
「それにしてもマルコさんは……スゴいことになってきましたね……」
メイは恐る恐るといった様子で口にした。周りのウェイターさんたちに悟られないように、少しばかり小声になる。
今この場にいるのは俺とライラとメイ、そして給仕をしてくれているウェイター数名だけだ。
国王とレオンが同席していないのは、やはり二人とも相当に位が高いのだろう。そんな人たちと謁見し、あまつさえ親族や上司になるなんて、そうそうある話ではない。
「マルコさん、本当に……あの返事で良かったんですか?」
濁し気味にメイが尋ねてくるが、そんなことを聞かれても、俺にだって分からない。一体何が正解だったのか……。
「私は……マルコさんのことを見直しましたね」
すると、ライラが手に持ったグラスを見つめて口を開いた。グラスには紫がかった赤色の液体が入っている。この人、またお酒飲んでるよ。
「ヴァーレのお姫様に鼻の下を伸ばして、後先考えずに結婚するような人でなくって、私は安心しましたよ?」
「そうですか……それは良かったです。いや、僕にそんなイメージは一切無いと思いますけど……いや、本当にね?」
俺とライラの間で、牽制し合うかのような刺々しい言葉のキャッチボールが始まる。どうにも彼女は心のどこかで、未だに勘違いをされているようだ。
そんな俺たちの会話を、メイは「ははは……」と乾いた笑いで返した。決して喧嘩をしている訳ではないので、そこはご理解の上安心してほしいと思った。




