そんな世界に転生したら俺は神様にだって……10
「ご……ごめんなさい、すぐにオーケーとは、言えず……」
俺の口から出たのは、こんな美味しい話を断ってしまう言葉だった。
彼女と目が合った瞬間、色んな思考が頭を過った。彼女の可愛らしさや、もし本当にこの誘いをお受けした時の生活とか、断った時に国王やレオンにどう思われるのか、とか。
その中にひとつ。彼女はこの話を、どう思っているのだろうか。
国王も、レオンも、どうぞお願いしますと言った様子ではあるが、彼女はどうだろう?
俺の想像でしかないが、彼女の立場からすればいい迷惑ではないだろうか。レオンほどの素敵な男性ならまだしも、最近名前を知ったその辺の一般人と急に婚約しろと言われて、困惑や憤りがあって当たり前だ。
ユウナはこの話が出てからも、ただひたすらに、すました表情である。怒るでも照れるでもない、そんな義務的な表情。
そんな彼女の顔を見て、国王もレオンも両親も、俺自身の願いも横に置いてしまった。彼女を思うと、どうしてもイエスが出てこなかったのだ。
「……そうか…………」
国王は怒る事などはしないものの、その失意の返事で俺は我に返った。
ユウナ姫の為とはいえ、彼らの希望に沿わない返事となったのは事実だ。二人にどう思われるか、想像しただけで具合が悪い。
それに、俺みたいなアイドルオタクに、こんな可憐なお姫様が嫁になってくれるチャンス、普通だったら一生をかけても巡ってこないだろう。
二度目の人生にまで渡って掴んだチャンスを棒に振ってしまった。そうか、だから前世では彼女ができなかったのかな。……うるせぇよ。
「国王、今回は期待した返事がありませんでしたが……」
レオンが俺と国王の間に割って入るように、口を開いた。
「ユウナ姫の呪いを解くには、彼の力が必要となります。先ずは、そこを協力してもらうのはどうでしょう?」
レオンはそのまま横目で俺をちらりと見る。
「それに、まだ会ったばかりで婚約というのは難しいかと存じます。これからの生活で触れ合う事で、思いが変わることもあるのではないでしょうか……?」
そんな提案に国王も、そこまで厳しい反応はしていない。その辺が妥当だろうな……とでも言いそうな様子である。
俺からすれば、一国の姫をまるでキープさせて下さいみたいな提案、口が裂けても言えないけどな。これアリなのかよ?
いやいや違うな、これはレオンが提案したから通る話だろう。俺が言い出そうものなら、その場でレオンが介錯人になってくれるかもしれない。いや、切腹は誉なんだっけ? それなら介錯ではなくシンプルな斬首だったかもしれない。どちらにしろ、俺の第二の人生が終わるところである。
ところで、呪いを解くのに俺の力が必要って話だが…………これ、初耳なんだけど。
「……マルコ君、しばらくはこの街に滞在してくれるのだろう? 宿の当てはあったのかな?」
唐突に国王が話題を変えてきた。質問の意図も、問いに対する回答も分からず、俺は助けを求めるように視線をレオンへ向ける。
「我々の方で宿泊先を確保しております。ヴァーレ城から少し離れた場所になりますが……如何なさいました?」
レオンの問いに、国王は少し考えた様子で口を開いた。
「マルコ君が良ければだが、この城に宿泊してくれないか? 勿論、ライラ君にも個別に部屋を用意しよう。……どうだろうか?」
その言葉に、レオンも明るい表情を浮かべた。
「それは良いですね! マルコとは明日以降もお願いしたいことがありますので、そのように手配いたします」
ハキハキと答えるレオンだが、俺はまだ何も返事していない。国王は今、マルコ君が良ければって言わなかったっけ?
それでも、国王のお誘いを蹴って狼狽えている俺が、話の流れを切ることはできなかった。




