そんな世界に転生したら俺は神様にだって……9
「マルコ君、急かすつもりはないが……もう少し詳しく説明させてくれないか?」
国王は近くの椅子に腰をかけた。
「ワシはこの子が生まれ、そのような占いを受けてから、何とかしてその病い……いや、呪いと言わせてもらおう。……呪いから、娘を救う方法を探してきた」
その言葉に、マキラとの会話を思い出す。
『それに、恐らくはティマリール神が原因であろうな……であれば、それは呪いではなく祝福と呼ぶべきであろうな』
今の段階では、祝福と呼ぶに相応しくないと思うのだが、マキラは本当に何も知らなかったのだろうか。……いや、あれは何か知った上での悪い冗談といったところだろうな。
国王は机に両手を置き、そのままゆっくりとした語り口で話を続けた。
「それとは別に、娘が大きくなることで、婚約という方法も検討することとなった。勿論、この子の幸せも考えた上で、だが……」
椅子の背もたれに寄りかかるように体を反らすと、国王は視線をレオンに移す。
「最初は彼に打診したんだが、これがどうにも首を縦に振らなくてなぁ……」
国王のボヤキに、レオンはいつもの爽やかな笑顔で対応する。
「僕はこれでもロッゾ家の人間です。そんな僕がヴァーレのお姫様と婚約だなんて、まさに政略的ではありませんか。それでは、ユウナ様があまりにも可哀想だと思いましてね」
そんなレオンに対して、国王は苦笑といったところだ。
「まったく……出自を抜きに、ワシがどれだけお前を高く評価しているのか、分からん訳ではあるまい? 頑固な男だよ、お前は……」
今にもため息を吐きそうな国王が、その視線を俺に向けた。
「そんなレオンが、ここまで高く評価する人間がいたのは驚きだったよ。正直、君をここに呼んだのは、娘に相応しい人間かどうかも見たかったからだ」
まさか、本当に人間性を試されていたとは。しかも話を聞く限り、レオンの代役じゃないか。あんなスパダリイケメンに代わって出来ることなんてありゃしないよ。
「君の願いは、両親の不自由ない暮らしだったかな? それはここで約束しよう。ただ、この話を受けてくれるならば、家族としての支援……ということになるわけだ」
「僕は元々、マルコを高く評価しているからね。もしヴァーレ国王家に君が来て、国王軍を従えることになれば僕らは君の部下だ。そうなったのなら、……ふふっ、面白いよね」
レオンは相変わらず、本気かどうか分からないジョークで勝手に微笑んでいる。それ、本当に面白いか?
「どうだろうか? 決して悪い話ではないと思うんだが……」
「どうって言われても……、いやぁ…………」
その時の俺の口からは、やはり歯切れの悪い言葉しか出てこなかった。
急にそんな話を振られても、そう簡単に応えられるような規模の内容ではない。
オーケーを出す勇気なんて当然無いし、断ろうものなら、後々尾を引きそうな案件ではないだろうか。
相談でもしようか……誰に? 後ろには体調の悪いライラと、この二人の部下に当たるメイしかいない。
返事を待つ二人の視線から逃げると、目の前に立っているユウナ姫と目が合った。
もしオーケーしたら。この子が俺の嫁になるんだよな? 知り合いも、女友達も、彼女も、全部すっ飛ばして嫁になる。
こんな大きな国のお姫様で、こんな可愛らしい女の子が、俺の嫁になってくれる? そんな嬉しいことがあっていいのか?
色んな思考が頭を過ぎる中、その言葉を口から出したことに、俺はすぐ後悔することになる。




