そんな世界に転生したら俺は神様にだって……4
メイに連れられてしばらくすると、いよいよヴァーレ城の目の前まで到着した。
高層ビルのような高さは無いが、豪邸を超える横幅や、あらゆるところに表れるデザイン性は、生前の俺が創作の世界でしか知ることのないものだった。
普段通りの涼しい微笑みを浮かべているライラを横目に、俺は立派な城門を背中を丸めながら進む。
あまりにも場違い過ぎる自分の様相を恥じながら、国王との謁見にプレッシャーを感じ始めてきた。
入り口まで進むと、大国の城に相応しい大きな扉を、メイが両手で開く。城内も当然煌びやかな作りとなっており、照明の装飾や絨毯の高級感は、外観に相応しいものだった。
「────どうぞ、お待ちしておりました!」
扉が開かれてすぐのところに立っていたのは、スーツのような正装を身に纏ったレオンだ。
「レオン様、お久しぶりです。変わらずお元気そうでなによりです」
俺よりも先に、ライラが丁寧なお辞儀をしながら挨拶をする。
「もちろん! ヴァーレの賑わいはどうだったかな? 後でまた楽しんでほしい!」
嬉しそうに話し出すと、レオンは建物の奥を指差して「それじゃあ行こう」と進み出した。
「それに、僕は今日をとても楽しみにしてたんだ。やっと君たちをヴァーレ城に招待できるってね!」
ニコニコしながら先導してくれるレオン。それに対して俺は、変わらずヴァーレ城の空気に呑まれていた。
「……もしかして、嫌なことでも思い出したかい?」
「えっ? いや、そういう訳じゃ……」
不意にレオンから声をかけられた。あまりにも俺がビクビクしてたから、何らかのトラウマでも心配してくれたのか。
「魔王城も全く同じ構造だったからね。あまり思い出じゃなかっただろうし……だからこそ、この煌びやかなここを見せたかったんだ」
レオンは普段よりも優しい目で辺りを見渡した。
言われてみれば確かにそうだ。魔王城で歩んだ通路と全く同じである。
魔王城の薄暗さとはあまりにもかけ離れた景色だったので、全く気付かなかった。
レオンなりの気遣いもあっただろうが、レオンが持つヴァーレの誇りも大きくあったのだろうか。
すると後ろで、メイが恨み言のように溢した。
「私が魔王城に入った時は、意地の悪さを強く感じましたけどね……。ヴァーレ城を模して待つなんて、本当に……」
確かに、ローブの魔物なんかと相対している時、いや魔王城が見えた辺りから、メイは随分と気力が削がれていたようにも思う。
「でも、だからこそ魔王神まで迷う事なく向かうことができたからね。もしかしたらアレは……魔王神なりのおもてなし、だったかもしれないな」
レオンは手を顎に当てながら、考え込むようなポーズを取った。
うげー、そうだとしたら流石にズレ過ぎてるよな。でもマキラならば……充分にあり得るのが嫌だね
更に進んでいくと、魔王城にあった謁見の間の前まで到着した。あの時、ライラと共に開いたドアと同じ形ではあったが、色合いが違うだけで印象はガラリと変わる。
「……あっ、すまないマルコ、今日は謁見の間ではないんだ。今回の会談も公のものではなくて……」
「あっ、……そうですか……」
謁見の間を見つめていたところを、レオンに声をかけられた。
ここで会うわけではないというのは、正直少し有難い。あんな広間で王様と会うのはなかなかハードルが高いからね。
「この先の部屋だから、もうすぐだよ」
そう言われると、さっき肩の荷が降りたのも束の間、急にドキドキしてきた。
国王に挨拶とかするんだよね? 服装についてもそうだけど、挨拶の流れとか全然教えてくれないけど、本当に大丈夫だよね? 直前になったら教えてくれるのかな?
先導してくれていたレオンが、遂にドアの前に立ち止まり、ノックを二回する。
「レオンです。お伝えしております、二人の主役をお連れいたしました」
レオンの声掛けに、室内から返事のようなものが返ってくる。ドア越しで良く聞こえなかったが、今のが国王様の声なのだろうか。
「既に国王は中で待ってくれてる。……大丈夫、怖い人じゃないよ、安心して」
無邪気に笑うレオンは、そのまま俺たちに断りを入れることなく、扉を開け放った。




