これは何というか、MCみたいなヤツ②
それは、ある日のライブでのことだった。
『体が小さいことって、チャームポイントだと思ってたんですよ、今までの私は』
大規模なステージに反して、とても小さく見えた国木原たまりは、ラスト一曲を残したMCで話す。
『小さくて可愛い女の子、こーゆーのがアイドルになれるってなんとなく思ってて、……そしたら私はなかなか運が良いな、なんて思ってたんですよ』
席運が悪かったのも相まって、後方最上階スタンド席から見下ろす彼女は確かに小さくて、当然のことながら可愛い女の子であった。
『でも、このお仕事をしてるとやっぱ色んなアイドルを見ます。高身長でスタイル抜群のモデルさんみたいな方とかも、いっぱいいるんですよね。……いや、どこがとは言いませんけど、こう……上とか下とかおっきい人がたくさんね!』
天井知らずの美貌を持ってしても、このような思考に陥ってしまうのは、人の悲しき性といったところか。しかし、彼女がここ笑うところだよ感を出したのであれば笑おうじゃないか。他人の事など言えない自分の容姿を忘れて。
『そんなことを家でポロっと話したらお母さんがね、「私に似て小さい体になっちゃったね」って言ったの。うわー私失敗したなーって、謝らせてしまったーってめっちゃ後悔したの!』
『そしたらお父さんがすかさず「母さんには可愛い顔に産んでもらったんだ、感謝しろ」って言ってきて、……確かになぁ〜って感心したね!』
『まぁ何が言いたいかっていうと、両親からもらったこの私で、勝負するしかないんだなって。私には大き過ぎるこの会場を、ステージを、小さい私で輝かせたいと、今の私はそう思っているってことを……伝えたかったです!』
そして彼女は歌った。そこにいた誰もが小さな彼女を応援し、彼女もまたそれに応えるように、この大きなステージを完成させたのだ。




