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推しが神様の世界に転生したのならば俺は……  作者: 大坂オレンジ
そんな世界に転生したら俺は魔王神にだって……

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そんな世界に転生したら俺は魔王神にだって……⑨

次の日に到着した街でも昨日と同様、出発までの時間は自由行動となっており、その後の旅路の調達をする人間もいれば、俺のように時間を持て余している人間もいるのだ。

 今は様々な店の並んだ通りを、ふらふらと歩いている。昨日との違いと言えば、隣で非常に厳しい監視の目が、俺を見据え続けていることだ。

「メイさん……昨日のことは僕も反省してるんですよ? だからここまで監視する必要はないんじゃないかなーって……」

 愛想笑いで何とか和やかさを演出するものの、彼女の表情筋はぴくりとも動かない。

「いやそもそもね? あれがお酒だって分かってたら、僕も飲んでなかったっていうか……」

「今更そんな言い訳は聞きたくありません!」

 今まで黙っていたメイは、突然の剣幕で俺を睨んだ。

 あの時の食事中に振る舞われた飲み物がお酒であることに気付かなかった俺は、顔を真っ赤にしながら肩を貸してもらい、ヘトヘトで馬車に戻るところをレオンとメイに目撃されてしまった。

 その瞬間のメイは、もう血の気が引いたどころではない、失神一歩手前みたいな青白さだった。

 後に彼女はこう語る。

「本当にあの時は……自害するしかない、本気でそう思いましたね。いっそレオン様になら、楽に殺してもらえるのではないか、とも思ったかもしれません」

 そのレオンはどうであったのか、と言えば、

「ふははっ!! マルコ君……本当に君は……ふふっ、面白い…………面白過ぎるよ……っ!!」

 腹を抱えての大笑いである。兵士長としてどうなのか? とも思うが、それは俺が言える話ではないか。

 涙を流して笑うレオンと、いつ叱責されるかと心ここにあらずのメイを前に、気絶した俺に肩を貸すダリルの居心地たるや、いかにも想像し難い。

 レオンがそんな感じで、結果的に大事にはならなかったが、目を覚ました時にはそれはもう大変なお叱りを受けた。

 誰が悪いかと言われれば……俺かもしれない、いや本当に俺か? 定かではないが、メイには非常に申し訳ないことをした。

 他の二人はどうだったのだろうか。俺ほど顔に出てはなかったと思うが、ダリルは俺と一緒にいるのを見られてるので、もし怒られてたら悪いことをした。ライラは俺と一緒に怒られて然るべきだと思うんだけどなぁ。

「それにライラ様から聞いている限り、マルコさんはモノを知らない節があります! あと数日は大丈夫だとは思いますが……、もし魔物に襲われた時に、あんな状態だったらどーするんですか!」

 自分よりも一回りも小さいメイは随分とご立腹な様子だ。魔術師らしく手に持っている杖は、今にも俺の頭を小突いてきそうな勢いで振り回されている。気付くと様付けからさん付けへ、格付けが下げられているし、扱われ方が変わってきたようにも思う。

「はぁ……、レオン様は優しいお方なので笑って許してくれましたが、完全に私の監督不行き届き……、マルコさんはどこまで私を追い詰めれば気が済むんですか……」

 深いため息をして、露骨に肩を落とすメイ。修行の時といい今回といい、不出来な弟子ですみません。

「それよりも、今『あと数日は大丈夫』って言ってましたよね? この辺はまだ安全な地域ってことですか?」

 少しでも話を反らしたい一心で、メイの言葉を借りながら問いかけると、彼女は少しばかり落ち着いて返事をしてくれた。

「地域といえばそうなのですが、我々はティマリール神の加護を当てた彫刻像……言わば魔除けのお守りを所持しているので、この辺りの魔物でしたら襲われることはありませんよ」

 初出の情報に、俺の心がざわつく。

 ほう、たまりるの加護付き彫刻ですか。恐らく教会に置かれていたティマリール神像のミニサイズ版みたいなものだと想像できる。

「ちなみにそれは……ティマリール神を模っているのでしょうか?」

「ええ、まぁ形にあまり意味は無いんですが、これも神信力ですからね。ティマリール神の形にする方が加護を乗せやすいのでしょう」

 言われてみれば確かにそうだ。なるほどなるほど。

「で、それは市販されるような物なのでしょうか?」

「今回持たされているものは最上品ですので、同じような物はそう簡単には手に入りませんが、小さい物でしたら彫刻師が作ったものを購入することはできるかも……というか、目がぎらついていませんか? ……えっ、怖っ」

 率直にドン引きしているメイは、一度我に返ったように頭を振って調子を戻した。

「……すみません、少し取り乱しました。恐らくこれくらいの街なら彫刻店もあるかと思いますし、一緒に探しましょうか?」

「マジですか! これは熱い展開になってきましたね……あっちぃ〜!!」

「……マルコさんって、やっぱり相当変な人なんだな……」

 盛り上がる俺の横で、メイは変わった色の虫でも見るような苦笑いを浮かべていた。

「あっ、でも良いんですか? メイさんもどこか寄りたいところとかあれば……」

「マルコさんがお酒を飲んで酔いつぶれたりしなければ大丈夫ですので」

 言い捨てるような口調で返したメイは、つかつかと俺の前を歩いていってしまった。

 ぐうの音も出ない俺はその場で「あっ、ウッス」とだけ零して、そそくさと小さな背中を追った。

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