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推しが神様の世界に転生したのならば俺は……  作者: 大坂オレンジ
そんな世界に転生したら俺は魔王神にだって……
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そんな世界に転生したら俺は魔王神にだって……⑥

 俺とライラは、魔王城への出立までの間、メイによる神信力強化の訓練が行われた。

 メイの言っていた通り、訓練というよりメンタルコントロールが大半を占めており、よくある少年漫画の修行編を彷彿とさせる戦闘トレーニングはほとんどなかった。

「お二人には既に、膨大な神信力が存在しているので、それを出力することだけに専念します」

 とのことで行われた訓練では、ライラはめきめきと上達した。元々白魔法が使えたことが大きかったようだ。

 この時知ったのだが、メイはヴァーレ国王軍の魔術師の中でも、上位魔術師という位置付けらしい。ライラの成長は、そのメイですら舌を巻くほどであったのだ。

 そう、ライラは上達した……のである。

「はぁ…………はぁ~っ…………」

「マルコさん、ここまで来たら考えても仕方ありません。なので、その露骨なため息は極力控えるようお願いします」

 ヴァーレ国王領地の端にある広場に並んだ馬車と、数十名の兵士たちを眺めている俺に、ライラはぴしゃりと言い放つ。

「……ちっくしょー、結局何のヒントも得られずに出発かぁ……」

「本当に……何なんでしょうね、あの日の力は間違いなく神信力だったのですが」

 俺は修行の間、全く神信力を発現させることが出来なかったのだ。マルコ修行編、完。

 師であるメイも、最後まで辛抱強く教えてくれたが、第一段階の体調改善、そこから派生した多少の筋力強化はできるものの、魔物との戦闘が可能となる第二段階はまるっきりダメだった。

 俺自身も落ち込んだが、レオンに俺たちの指導を任されていたメイは「もう私は生きることも許されない咎人です……誰か私を裁いて……」と言いながら城に戻ることもあったし、それはそれで非常に心が痛む絵面だった。

 出立が俺の覚醒を待ってくれるはずもなく、俺たちは用意された馬車に乗り込むことになった。

 今の俺が戦力としてカウントされているのか、甚だ疑問ではあるが、今更引っ込みがつかないのも事実だ。ここまで来たら、何事もないことを祈るしかない。

 今回の魔王神討伐という遠征は、半日おきに中継地点での休息を挟みながら、ロミ平原に向かうようだ。到着までは五日もかからないというが、道中で魔物との戦闘がどれだけあるかで予定が変わるらしい。

 遠征に参加する人間は五十人ほど、とのことだ。多くは今日のレオンのように武装した兵士で、装備のない人間のほとんどはローブを身に着けている。ほぼ全員が戦闘員足りうるのだろう、面構えが違うというやつだ。

 俺たちが乗るであろう馬車に近づくと、ロッカ村などで見かける馬とは違い、そこはかとなく凛々しい顔つきをしている。国王軍の馬ともなると、それとなく気品が高くなるのだろうか。

「これはハルエといって、軍用に使われる馬車馬ですよ。といっても私も初めて見るんですが、なかなか愛らしい顔してますね……」

 ライラはハルエに近づくと、頭を撫でながらまじまじと見つめていた。これ、愛らしいか? どちらかと言えば如何にも騎士が引き連れてそうな厳かさがあるけど。俺に対しては『いつもならお前なんか絶対乗せてやらないけどな』くらいに思ってるだろ。

「マルコさん、もっとしっかりこの子を見てあげてください。普段見ている馬と比べて〜とか、軍用に使われている〜とか、余計な情報を取り除いた純粋な気持ちで見てみると……はい、どうです? 可愛らしく見えてきたでしょう?」

「うーん……、そうかなぁ……? ちょっとよく分かんないっすね」

「はぁ……、そういうところですよマルコさん」

 ハルエから視線を離さないライラを訝しげに眺めていると、遠くからレオンの大声が響いた。

「それじゃあそろそろ出発するから、それぞれ指定された馬車に乗り込んでくれ!」

 周りを見渡すと既に馬車に乗り込んでいる兵士たちも多く、我に返ったライラは少し顔を赤らめながらそそくさと指定の馬車へと向かった。

 彼女と同じ馬車に乗ることになっている俺も、それを追いかけるようについていった。

 今回遠征に参加しないらしい軍の兵士に案内してもらうと、どうやら俺たちの乗る馬車はかなり最前線寄りに配置されていた。

 恐らくレオンが俺たちの戦力を高く評価してくれている、ということだろう。ありがた迷惑にも程があるだろ、最前が嬉しいのはライブの時だけだ。

 どの馬車の窓にもカーテンが付いており、車内の様子が見えなくなっていたが、乗り込むと思ったよりも広い空間が広がっていた。

 すると既に乗り込んでいた人間が奥に座っており、その男を見た瞬間に自然と背筋が伸びてしまった。

「あら……あなたも参加するんですね」

 先に乗り込んでいたライラは、何もなかったかのように物怖じせずに挨拶をした。

「…………あぁ……」

 静かに返事をしたのは、大国ヴァーレの兵士であり、ロッカ村の衛兵であり、あの日のティマリール教会事件の発端となったダリル・ロリンチだった。 

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