そんな世界に転生したら俺は神様にだって……71
五体満足に戻ったマキラは、その場に浮上して両手と両翼を広げた。
翼がはためく様子はなく、ただの飾りになっているが、宙に浮かぶ魔王神の姿は、神の名を冠するに相応しい神々しさである。
「今度は物量で押してみようか」
そう言ってマキラは神信力を練り上げる。マキラの後方、横に数メートル以上にわたって紫色に輝く神信力が広がる。
「黒魔法────炎乱滅!」
空の一部を覆うような神信力の中から、隕石を模したような黒炎が、大量にたまりるへと降り注ぐ。
俺と戦った時と比べて、神信力の規模や威力が大きい。こんなものを魔王城で放たれていたら、あっという間に城も俺も、跡形もなかったであろう。
対するたまりるは、決して狼狽えることなく、マキラを睨みつけている。
彼女は未だに神信力の詠唱をする気配がない。今までの攻撃を避けることが出来ているのが不思議であるが、ティマリール神としての力があるのだと、無理矢理納得する。
「いい加減に……してっ!」
マキラの黒魔法が向かってくる中、たまりるは怒りを露わにしながら、右手を横に振り払う。
彼女が神信力を認識しているかは定かではないが、その振る舞いは間違いなくマキラへの対処である。
発動された黒魔法は、先ほどの黒魔法と比べても足が遅い。しかし、黒炎の大きさは、たまりる一人を包み込むには充分過ぎるほどである。
その黒魔法が、彼女の右手に合わせて次々と爆発していった。その大きさもあってか、黒炎の爆ぜる轟音が響き、遅れて派手な爆風も巻き起こり、塵埃が吹き荒れる。
視界が悪くなっていく中、たまりるの周りにだけは優しい風が吹き続けていた。
マキラの姿は見えないが、宙に浮かび広がっている黒魔法は未だ顕在で、攻撃が終わっていないことが窺える。
「黒魔法────黒曜乃刀」
姿の見えないマキラの詠唱が聞こえたのは、塵埃の中からである。
たまりるの目の前に再び姿を見せたマキラは、自身の体と同じくらいの刀身を持つ得物を、片手で軽々と振り抜く。
「近付かないとは言ってないぞ?」
不敵に笑うマキラにたまりるは、不意を突かれた動揺を見せる。
しかし、そんな中でもたまりるは、切先を掴みにいく姿勢を見せていた。
マキラの攻撃は、再びたまりるに接触する直前、刀身が溶けるように形を崩した。
「当たんないよ、何でか知んないけど!」
たまりるも原理までは理解していないが、マキラの攻撃が自身に無効であることに気付いている。
「お主も神信力の力を自覚したか!? そうでなくては困る!」
刀身を揺らめかせながら、先程の形に形成し直して、再度たまりるに振り切る。当然のことながら彼女には当たらない。
「であれば、当たるまで出力を上げるまでよ」
爆風による砂塵が晴れてきた辺りで、マキラの後ろに未だ暗雲のように漂う黒魔法が顔を覗かせる。
そこから巨大な黒炎が再び、たまりるとマキラ自身に向かって射出されようとしていた。




