そんな世界に転生したら俺は神様にだって……68
互いに空を切って下降する中、マキラは呆れたように腕を組んで俺を見ている。
俺が何をしたいかって、そんなの決まっている。
「俺は……彼女を助けたい」
あまりにも前提的過ぎて、回答になっているのか怪しい。だが、それすらも放棄していた、ということを思い出す。
本当は彼女を助けたい。でも、彼女に何をしてあげたらいいのか、俺に何が出来るのか、今の俺には答えが出せないでいる。
しかし、マキラにはそんな些細なことに興味はないようだ。
「ふっ……、言ったな?」
ニヤリと笑ったマキラは、右腕を伸ばして俺の後頭部に回し、首根っこをがっちりと掴んだ。
「うげぇっ……!」
マキラが方向転換したことにより、勢いよく引っ張り上げられた俺は、情けない呻き声が口から漏れていた。
進行方向を上空へと変えたマキラは、先程と同等のスピードで上昇していく。
「元より連れて行くつもりではあったが、渋々ついて来られても盛り上がらんからのぅ」
一切の減速もしないまま、幾重にも連なる雲に突っ込んでいく。激しい風の抵抗で、簡単に吹き飛ばされてしまいそうだが、俺を掴む手が緩む気配など全くない。
そのまま突き抜けた先には、さっきまで俺とたまりるが立っていた超自然的な空間が広がっていた。
そこには未だに膝をついた姿のたまりるが見え、マキラに掴まれている俺は、それを高くから見下ろす形となった。
「……おお! おるではないか、おるではないか!!」
愉悦が隠しきれない様子で、マキラは高らかに笑いながら降りて行く。いや、隠すつもりなど端からないのだろう。
地に足をつけた辺りで、俺は後方へと放り投げられた。
マキラは最初から、これを狙っていたのだ。
ユウナと会わせて欲しいなどと言い出した時か? いや、もっと遡ればあの魔王城だ。レオンがユウナの呪いについて聞いた時の、不気味なまでのあの笑顔を思い出す。
「突然の来訪に失礼つかまつる! ……貴殿がティマリール神でお間違いなかったかな?」
不遜な魔王神に似つかわしくない丁寧さで、マキラはたまりるに話しかける。
対するたまりるは、再び現れた見知らぬ男と、新顔の人外を見て再び狼狽えていた。
彼女は、人間以外の生物を視認していたのだろうか。この世界の魔物は、俺が思うゲームの世界に現れるようなそれと比べて、グロテスクさ極振りみたいなものも多い。
それを思うと、魔王神マキラはまだ二足歩行の人間チックなデザインで、抵抗は少ないはずではある。マキラを魔物と扱うのか、神様にカテゴライズされるのかは、俺の知るところではないが。
マキラが一歩だけ歩みを進めた瞬間、たまりるは再度怯えた様子を見せ、彼女の神信力が発動する。
「……はっ!!」
それを察したマキラが両手を前にかざすと、紫色に淀んだ魔力が空中に浮かび上がる。
それらがたまりるの神信力に衝突すると、化学的な反応のように、いつくかの爆発が起きた。
「うっ……!」
マキラの後ろ側にいる俺ですら、その爆風に再び体が持っていかれそうになる。
しかし、より近くでその爆風に当たっているマキラは、踏ん張る気配すら見えなかった。
「詠唱も無しに、この神信力……! 間違いない、貴殿がティマリール神なんだな!?」
溌剌としたマキラを目の前にしたたまりるの表情は、俺と対峙した時と比べても、より強い不信感を表していた。




