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推しが神様の世界に転生したのならば俺は……  作者: 大坂オレンジ
そんな世界に転生したら俺は魔王神にだって……
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そんな世界に転生したら俺は魔王神にだって……①

「マルコさん……この後、少しよろしいでしょうか?」

 ライラから声を掛けられたのは、あの事件からそれなりに日が流れた、ティマリール教会でのことだった。

 いつも通りすぎて実家のような安心感すらある教会で、心の洗濯をするようにたまりるへ祈りを捧げてると、奥の部屋から彼女が近付いてきた。

「ライラさん! やっと俺に話しかけてくれましたね!」

「……村長からお話があるようです。場所を教えますので、後ほど寄ってください」

 彼女らしさのある優しい声色だが、やや事務的に、そして淡々と返されてしまった。顔はこちらを向いているものの、明らかに目線を反らされている。

「あれ、久しぶりにお話してるというのに、なんか素っ気ないですね? 何故か視線が合わないような気もします」

「いえ、そんなことはないですよ。気のせいってやつです」

 顔を明後日の方向へと投げると、彼女はきっぱりと言い切った。

「ほら! 更に視線が飛んでいった! 絶対意識してるじゃないですか!」

 変わらずそっぽを向く彼女は、そのまま俺の指摘を無視するように席を外そうとした。

「ライラさん、俺は寂しかったんですよ? いつも声を掛けてくれるライラさんが、露骨に無視するようになってから随分と経ちました。何か気に障るようなことを言ったかなぁ、とか思ったりしてたんですよ? ねぇライラさん、聞いてます?」

 すると遂に根負けしたのか、ご立腹になった彼女がこちらを睨みつけた。

「そこまで考えて頂いているならば! 敢えて指摘しないでください! マルコさんにはデリカシーが足りないみたいですね!」

「そんなぁ、無視されてたのはこっちなのに……そんなボロクソに言わなくても……」

 デリカシーがない、なんて言われたら、何も言い返せないじゃないか。

「とにかく! 後でよろしくお願いしますね! ……ちゃんと伝えましたからね!」

 強く念を押されたところで、ライラはずかずかと奥の部屋に戻っていってしまった。

 いやはや、随分と怒らせてしまったようだし、後でしっかり謝っとかないとな。

 ……正直、こっちが悪いとは思ってないけど、喧嘩とはいつだって互いが正しいと思ってるから起きるし、正しさだけで測れないことだってあるもんな。少なくともこんなこと思うあたり、俺にデリカシーがないのは間違いない。

 どうすればデリカシーが生まれるのか、ティマリール神像は何も答えてくれない。それでも、たまりるが俺の心を安らげるということは、異世界に転生したとしても、不変の事実なのである。



 指定された場所は、教会から少し歩いたところにあるオスマンの家だった。

 パッと見ると、随分と大きな家だったが、中にある一部の部屋は、集会に使われる公共施設でもあるらしく、会議室に近い簡素な部屋に案内された。

「うーん……それにしても不思議なんですよ、あの日のマルコさんが使った神信力」

 ライラも呼ばれていたようで、彼女は唸りながら腕を組んだ。一応、最近のわだかまりを解消した(という体になっている)ので、話は先日のティマリール教会事件へと移った。

「俺にも分かんないんですよね……、大きな力だったし、本当に不思議、というか謎ですよ」

 あの日の力は結局のところ何だったのか。もしライラに分からないのであれば、俺に分かるはずもない。彼女が不思議というのならお手上げだ。

「確かに、あれは強大な神信力でしたが、今のマルコさんからは、その強さを感じ取れないんですよね。ダリルさんとは違って、白魔法が根源なのは間違いないんですけど」

「白魔法もそうだが、ティマリール神に関する文献は、宗派によって大きく異なるからのぉ。今の時点では、分からないことが多いのも仕方ないことじゃ」

 オスマンの話を聞いた後も、ライラは納得がいかないのか、ひたすら首を傾げている。

「そうですよねぇ……。でも……何か変だったんですよ、マルコさんの白魔法。澄み渡っていないというか、濁りを感じるというか……不純さを感じる力だったんですよねー」

「不純? えっ、今不純って仰いました? この僕が?」

「あっ、ごめんなさい。今のは例えというか……、はっきりとした白魔法でないというお話でして、決してマルコさん自身のお話では……」

 彼女は、自身の失言を訂正しようと続けたが、俺は思わず天を仰ぐようなオーバーリアクションが出てしまった。

 言っておきますけどね、俺はたまりるを邪な目で見たことなど、一度たりともありませんよ。確かに異世界で神様になってしまうくらいの美しさだし、所謂ガチ恋オタクという層も当然いるだろうさ。それに『国民的アイドルたま〇〇似』のセクシー女優が現れたりした時は、さすがに界隈も異様な盛り上がりをしていたと記憶している。が! 俺は間違っても、たまりるに不純な思いを抱いたことは一切ない。というかあの女優、ちょっと目元が似てただけで、衣装だってちょっと似通った程度のクオリティーめっちゃ低いヤツだったし、我々からしたらタイトル詐欺みたいなところあったもん。マジで金返せって話だよな。この間、わずか1秒弱。

「いやいや……、そんなことアリマセンヨ?」

「あれ? ちょっと口調おかしくないですか?」

 ムキになって否定する程ではないが、ライラさんに今の話を丁寧に伝えるのは難しいからね。これは仕方ない、うん仕方ない。

「マルコさんの信仰心を疑うつもりはありません。ですが……あれほどの力を出す方法があるのであれば、それは知っておくべきかもしれません」

 ライラの言いたいことも分かる。むしろ、あんな強大な力を、意図せず発揮することの方が、後々問題になるんじゃないかと思う。

「そうじゃぞ、あの力は使えるようにすぐにでも訓練が必要じゃな」

 オスマンも髭を撫でながら、ライラの言葉に同意している。彼からすれば、村の脅威に対抗する力なのだ、そのように話を持っていきたい気持ちもあるだろう。

「けどなー、どうすれば良いのか分からないんじゃ、訓練のしようもなくないですか?」

「そういうでない、もしかしたら今日それが……おっと、そろそろ到着したようじゃ」

 窓際で外の様子を窺っていたオスマンは、ゆっくりと立ち上がった。言われてみれば、少し前から外が騒がしかったかもしれない。

 この世界では長距離移動は馬車が主流なのか、停留させる馬の鳴き声などもあって、案外室内にいても分かるものだ。

「馬車……村の外からのお客様ということは、先日の事件の続きでしょうか?」

「ほほっ、まぁそんなところじゃ。とりあえず彼らを紹介するところからじゃの」

 少し間を置いて扉がノックされ、村長が「どうぞ」と促すと、室内に二人組が入ってきた。

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