そんな世界に転生したら俺は神様にだって……66
彼女からの拒絶は、なかなか止むことはなかった。
彼女はこちらを一瞥もせずに、見えない力で俺を押し返すが、こちらも神信力を駆使して持ち堪える。
「まずは話を聞いて欲しい! 俺は、君の敵なんかじゃない!」
彼女からの返事は一向にないが、俺は叫び続けた。
彼女の神信力は勢いをそのままに俺を襲った。俺はとにかくそれを避けつつ、少しでも彼女に近づこうと試みる。
「たまりる、なんだよね!? 君のファンなんだよ、俺!」
夢にまで見た初対面が、まさかこのような形になろうとは想像もしなかった。
オスマンは、この世界のたまりると出会っているらしい。こんな出会い方であったら、ティマリール教になど触れてこなかったであろう。
「『up to UP』! あれ聴いた時は、歌詞にスゴい励まされてさ!」
正直に言えば、悲しさもある。どれだけ気持ちを伝えても、聞いてもらえるどころか突き放されて、味方であることを信じてもらえないなんて。
「ファルコホールまで聴きに行った! ライブのコーレス、最高に盛り上がったよ!」
もしも、君にとって記憶になんか残っていなかったとしても。数多のファンですら、その心から消えてしまっていても。
「全国ツアーもさ! 全部は行けなかったけど、千秋楽は行った! バックサウンドも凄かったよね!」
あの時に叫んだのも、喜んだのも、救われたのも、紛れもない事実で。
君の事が大好きで、心から応援していたから。
「だから……! 俺は君の味方だっ!」
こんな奴だけど、助けを求めてほしい。俺は、君を助けたいと思っているんだ。
「あなた……私のことを知ってるの?」
遂に彼女から、俺への反応が出た。
彼女は頭を抱えるように、両手で耳を塞いでいるようだったが、俺の声が届いていたようだ。
そしてやっと、彼女が国木原たまりであることを肯定する発言が出たのである。
今までは、彼女がたまりるであるという、俺の認知でしかなかった。否定がないのは肯定である、というのは短絡過ぎるだろうか。
そして、憧れのアイドルと対面しているという事実に、自分でも分かるほどに色めき立っていた。
「……うん、そうだよ。だから俺は、君の力に────」
「だったら、もう終わらせてよ」
それは、俺が予想していなかった、ドスの効いた声であった。
彼女は相変わらず、頭を抱え込んだまましゃがんでおり、こちらを見向きもしていない。
「終わらせるって、どういう……?」
「そのままの意味。もう全部……全部……!」
そう言ってたまりるは、今度は頭を掻きむしり始める。
「もう嫌……、もう何も見たくない! 全部全部っ! 全部終わらせてよっ!」
悲痛な叫びを響かせ、そのまま彼女はうな垂れるようにして、地面に両手をついた。
「もう嫌……何もかも終わらせて…………消えたい……!!」
その言葉を聞いてしまった俺は、遂に足が止まってしまった。発動していた神信力も、この時点で消えていたように思う。
再び押し寄せる風は今までのそれよりも強く、俺の体を簡単に掬い上げた。




