そんな世界に転生したら俺は神様にだって……60
その時は、想像以上に早く訪れた。
「……ルコ……、……マルコ……」
「……ん……んん〜?」
就寝中の俺を呼ぶ声がした。寝ぼけ眼で辺りを見渡す。
外は早朝、徐々に明るさを取り戻しているが、俺が普段目を覚ますような時間のだいぶ前である。
こんな時間に一体何なんだ……。朝早くから活動する、ロッカ村の両親よりも早起きじゃないか。誰だよ……レオンか? ライラか?
「……マルコ様、起きてください……!」
重い瞼をなんとか持ち上げると、ベッドの横から俺を揺すっているユウナが見えた。
「…………っ!!? ちょっ……えっ!!?」
ぼやけていた思考がマトモに機能し始めたところで、俺は驚愕の声を上げた。
「しーっ! 静かにしてくださいっ!」
狼狽えている俺に、声を抑えながらも強めに注意をするユウナ。
あっぶねー! 俺、誰の名前も口に出してないよね? レオンならまだしも、ライラの名前とか出してたらどんな疑いがかけられることやら……。
「……目を覚ましたら、この時間でした。……二人でお城を出るには、絶好の機会ですよ!」
ユウナは両手をグッと握りしめ、俺たちを奮い立たせるような振る舞いだ。
一応、変な寝言は言っていなかったと考えて良いだろう、きっと。
確かに彼女は部屋着から装いを変えており、近くには靴も用意している。出かける準備は万端といった様子だ。
俺も布団から這い出て、ベッドに腰を下ろす。
「えーっと、……ホントに今から行くの?」
かたや、何の準備もしていない俺は、戸惑いを隠せないまま問いかけた。
「マルコ様はその……神穴? という場所をご存知なのですよね? お城の外までは私が案内しますので……さぁ、行きましょう!」
俺の手を掴んでグイグイと引っ張るユウナは、まるで冒険にでも行こうとしているかのように、その目をいつも以上に輝かせている。
しかし俺は、俺を掴んでいるユウナの腕を見た瞬間、背筋に悪寒が走った。
俺を引っ張る時に、少しだけ彼女の手首から下、前腕辺りが見えたのだ。
この子の腕……こんなに細かったっけ?
俺の腕に比べて半分くらいの、病すら疑ってしまう程の細さに、とっさに体が硬直した。
先日から何度か会っていた際には気付かなかったが、これは活動時間が短くなっていることが原因なのだろうか。
「……分かったから、……せめて、着替えさせて!!」
動こうとしない俺の方を振り返るユウナに悟られないよう、俺は適当な口実をこじつけた。
ユウナもそれに対しては「……それもそうですね」と納得してくれたようだ。
何故このタイミングで、ユウナは目を覚ますことが出来たのか。これもまた、マキラの手のひらの上ということなのか。
そう考えると怪しい点も多い。本当に、今から向かって良いのだろうか……。
いや、考えても分からないことは、ひとまず置いておこう。
ユウナの体や生活に異変が出ている以上、行動は早い方が良いはずだ。
幸い、周りに気付かれなさそうな、且つ闇夜で危険ということもない時間帯は、確かに好都合である。
俺は自分にそう言い聞かせて、外に出る支度を始めた。
「……ところで、部屋の外で待っててもらう訳には……?」
「……あっ、……そ、そうですねっ! ……失礼しました……」
ユウナは顔を赤らめて部屋を出た。
良かった、この辺の常識はズレていないようだ。




