表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推しが神様の世界に転生したのならば俺は……  作者: 大坂オレンジ
そんな世界に転生したら俺は神様にだって……

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/144

そんな世界に転生したら俺は神様にだって……59

 ユウナの部屋から解散したところで、俺は考え事をしながら食堂へ向かった。


『これからは、マルコとユウナ姫で打ち合わせることもあるだろう。なるべく俺から手を回しておくけれど、事情を知るものは少ないからね。なるべく誤解されないようにだけ、注意してほしい』


 マキラからの提案に従うのならば、俺はユウナと二人で城の外へ出なくてはならない。せめて、その段取りだけは整えたいが、それを頼むことも、マキラの反感を買うことになるかもしれない。

 そうなると、その手筈を整える打ち合わせもしたいが、ユウナと話せるのはいつになることやら……。


 そんな様子で階段を降り切って、食堂へと足を運んでいると、前からライラが歩いてくるのが見えた。

 向こうも俺に気付いたらしいが、彼女は軽く会釈をするだけだった。


「…………」

 礼節を大切にする彼女が、挨拶の一言も交わさないのは非常に珍しいことであるが、口を開けなかったのは俺も同じである。

 ティマリール教会事件の時にも似たようなことがあったが、今の状況とは流れている気まずさが大きく違う。


 長い通路をお互い視線を合わせることなく、そのまま静かにすれ違う。彼女はきっと、そのまま自室に向かうのだろう。


 ……本当に、これで良いのだろうか?


「────ライラさんっ!」

 そんな思考がよぎった途端、俺は振り返って声を上げていた。

 ライラは足を止めてくれたが、こちらに振り向く様子はない。


「あの、…………えっと……」

 何を話すのかを考える前に話し出してしまったことに、後悔が押し寄せる。

 ライラは変わらず背中を向けたままだが、そのまま足を止めて俺の言葉を待ってくれている。


「……俺は、ライラさんのこと、今でも頼りにしてます。今までも、これからも……頼っていいですか?」


 何を突然、と思われただろうか。ライラはすぐに返事をくれなかった。

 俺が秘密にしていることは数多くある。今日もまた、そんな秘密が増えてしまった。ライラが不審に思うのも当然である。


 それでも、俺が今までライラに助けてもらったことも事実で、彼女がとても頼りになる存在であること、俺がそう思っていることもまた俺にある真実だ。

 それだけでも、改めて伝えたかった。伝わってほしかった。


「……マルコさんのそういうとこは、変わらないんですね……」


 顔は見せずに、やや首の位置を変えた程度の動きで、ライラはぼそっと呟いた。

 何と言ったかは聞き取れなかったが、きっと俺に伝えるつもりじゃない言葉だと思う。


 ライラはゆっくりとこちらを振り返り、しとやかに頭を下げた。

「……先日は失礼いたしました」 

 最敬礼の角度まで、深く頭を下げているライラ。彼女が謝ることではないと思うが、謝罪を受けて一安心している自分もいる。


 そして、顔を上げたライラの表情は、いつも俺が見てきた、聖職者たる慈悲深く、清らかな微笑みであった。

「……今は、その言葉だけで充分です。ありがとうございます」


 今度はお礼を言われたかと思うと、ライラはすぐに踵を返して自室へと戻った。


 これで一件落着、とは思っていない。

 ただ、ライラの笑顔を久しぶりに見たような気がして、晴れやかな気持ちになったのは否定できない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ